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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
竜の都編

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師匠の準備

「まぁちっと待っとけ」


 そう言うと師匠は地面に座りボウガンに足を掛け弦を両手で思い切り引っ張り、足と太ももでボウガンの位置を調整した後で手を離した。あっという間に矢は見えなくなってしまう。


「これでアイツに少しはお灸をすえてやれたじゃろう」


 師匠はそう言うと立ち上がって最初の体勢に戻った。アイツにお灸をすえるってのは恐らくクロウだろうけど、ここからあそこまで届くんだろうか。てか何でお爺さんのボウガンを持ってるんだ? あれは僕が回収して三鈷剣になっている筈。


「ビッグボウガンは元々ワシがあ奴にやったもので、これは何かあった時用に作っておいた。キーになる五つの武器は、生身の御前をフォローする為に用意しておいた物。可能性に合わせた五つの中から結果武術が一番合うとなって、ワシの篭手以外はお前の中に居た。三鈷剣になったのは呪術を開放したからそのフォローになる形態に変化したのだ」


 師匠は最初に会ったあのお爺さんと僕がこの星に来る少し前に知り合い、その中で色々話を聞いていたという。御爺さんは自分の生い立ちが良く分からず悩んでいて、師匠がその話を聞いて魔法を用いて調べたところブラヴィシの分身だと言うのが分かったらしい。


竜神教(ランシャラ)を設立した頃と違い、師匠を排除しようとし始めたブラヴィシに違和感を覚えていた師匠は、誰かによってブラヴィシの分離が行われたのではないかと思いその原因を知りたくて暫く共に行動したという。


「ミジュの村に迷い込んで村の者たちと行動を共にして生きていたがあ奴は馴染もうと努力してたが受け入れて貰えない様でな。見かねてデラウンに来ないかと誘ったが”もう少ししたら会いたい人に会えると夢で見た。だから離れたくない”と言っての。今度こそ守りたいというんでな。この星にお前が下りると李から連絡があったのを思い出して魔法素材で作ったこのボウガンを渡したんじゃ。だからあ奴もお前もボウガンを上手く仕えた」


 元々ブラヴィシをやる為に超長距離からの一撃必殺を狙う為に開発したボウガンらしく、その試し打ちでミジュの村近くに師匠は来ていたという。僕が来るのを知って急いでいなければ会わなかっただろうと言うので、あの御爺さんは姉による僕に対する復讐の一つだと話すと呆れたような顔をした。


「お前のトラウマを刺激し罪の意識を思い出させる為にブラヴィシを分離し向かわせたのか……全く酷い真似をするな。生前は知らんがあの爺さんは馴染めてなかったが馴染もうと必死に頑張ってたし、短い付き合いだったが他人を恨むような言葉を聞いた覚えがない。恐らくお前の姉の望まぬ方のブラヴィシであったが故に排除したかったのもあるんじゃろう」

「前の世界から酷い目にも沢山遭いましたが、アミや師匠を始め多くの人に助けて頂きました」


「この星に来た頃より大分成長したな……ワシの弟子の行いに巻き込んでしまったが少しはお前の役に立てて何よりだ」

「少しどころではありません。師匠が居なければここまでこれませんでした」


「そう言ってくれると少しは救われる。もう一つ、救っておいた者が居る」


 そう言うと師匠は手を空に掲げ、間があってから何かがこちらに飛んで来て師匠の手に噛みついた。


「ティア!」


 よく見るとそれはティアだった。確かティアは後方でマウロたちと居た筈。


「竜の都で丁度死産になった竜の子がおってな。魂も消えてしまったのであの爺さんから出た魂をこっちに入れておいたのだ」


 師匠は自分の手からティアを離すと僕に放り投げた。あの御爺さんであり、僕が前の世界で飼っていたアミだったのか。その割には僕以外に懐いていたけど。


「あまりお前に早く気付かれると色々不味いから仕方あるまい。そのお陰で來音は殺されて元に戻った筈の分身が返って来ていないのに気付かなかった。この子を追っていたのは、お前に移すまでの短期の代打として目を付けていたようだがあれは焦ったよ」


 ブラヴィシの体は崩壊し新しい体を元々必要としていたが、分離をしたせいで余計早まり僕を強引に引っ張るべく姉自身がラティの体を使って首都から出ざるを得なかったのではないか、と言う。ティアの体に魂が定着して直ぐ僕のところへ飛んで行ってしまったが、師匠も準備が忙しくて追えず気付いたら姉がティアを求めていて卒倒しそうになったらしい。


「姉が出てこなかったら僕はあっさり倒されていたでしょうね」

「それどころか呪術が使えずに一方的にやられてたじゃろうな。ただクロウが再度ここに来たのは誤算じゃったがな」


「良いんですか? 直接クロウとやり合わなくて」

「ワシが近付けばアイツは逃げる。それが分かっていたからこそ、ミレーユに力を貸すだけに留めたりお前の姉が竜に変化した後攻撃を暫く無効化するよう仕掛けておいた。ミレーユがそれに対処せざるを得なくなればクロウは余裕で逃げれると踏んで隙が出来る。それを待っていた」


「どんなお灸をすえたんです?」

「暫く力を使えんようにしてやった。ワシの魔法は元より模倣自体出来んじゃろうから大人しくするほかあるまいて。ミレーユもその間に何か対策を考えるじゃろう。それよりそろそろ戻るが良い。お前の最後の狩猟が残っておるぞ」




読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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