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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
竜の都編

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復活の妹

それでもクロウはクニウスに対する追撃の手を緩めない。魔法を掻き消すだけでなくこれまで全く使用していなかった魔法を使用し始め、首都を破壊しながら移動して行く。


怒りで我を忘れているのようだが、体を構成していた魂は三鈷剣の力で浄化され出しているし、そう長くは持たない筈だ。一刻も早くその状態にさせるべくクニウスと協力し直接ダメージを与えて削っていく。


「ぐはっ」


 とは言え動きも早く魔法も織り交ぜた攻撃を掻い潜るのは至難の業。直撃を受けて吹き飛ばされる回数も増えて行く。その都度フォローして行くがあっちの魔法はこちらに効くが、こちらの魔法は一切通らないのが厳しい。跳ね返す手段でもあれば効くかなと思い、それを狙うべく物陰に隠れたり鏡を使って見たりしたが全て砕かれてしまう。


「避けろパルヴァ!」


 僕らを見つつ効かなくとも視界を遮るべく魔法を使ってくれてたパルヴァの方へ、クロウ竜は口から炎の球を吐き出し飛んで行ってしまう。クニウスは走り出したが直ぐにクロウ竜に足で押さえつけられてしまった。僕が代わりにと走り出したところへ、クロウ竜の長い舌が飛んで来て足元をすくわれてしまう。


「パルヴァ!」


 クニウスの叫びも虚しく逃げ出したパルヴァの背中に炎の球が直撃。爆発音と共に風が巻き起こり周囲も焼かれ煙が立ち込める。クロウ竜は嬉しいのか咆哮を上げながら翼を広げ仁王立ちした。


「あら、何がそんなに嬉しいんですの?」


 燃え盛る中からとても懐かしい聞き覚えのある声が聞こえる。幻聴か? と思い目を擦りながら前を見ると、その正体がこちらに近付いて来た。ピンクのシャツとスカートの上に革の肩当てや胸当てを付けている少女がパルヴァを抱えてこちらに歩いて来る。


「……何かおっしゃって下さいな」


 寝ている姿や姉に乗っ取られた姿は見てるけど、こうして一緒に旅をしていた頃の感じで会うのは久し振りで、本当に何と言って良いか分からず言葉に詰まる。漸くここまで来れたんだなぁっていう思いを口にするのも変だしおはようも全然違う。


こういう時カッコいい台詞が浮かんで来たら主人公らしいのになぁ、と思うが生憎浮かんでこない。姉に乗っ取られていない彼女がこうして元気に立っていてくれているだけで幸せだ。ならここはもう素直な言葉で迎えよう。


「御帰り」


 ここは飾らず素直に言うのが良いかと思いそう口にして見ると彼女は微笑む。穏やかな笑顔を見るのも本当に久し振りだ。僕自身もやっと始まりの場所へと帰ってこれたって気がする。これまで師匠やリュクスさんにあったりしたけど何か足りない気がずっとしてた。


「もう少し気の利いた台詞は思いつかないの?」

「んなもの思いつくなら俳優にでもなってますよ」


「そりゃそうか」


 パルヴァの答えに何だか可笑しくなって僕らは笑い合う。随分と長い間旅をして来たんだなと不意にそんな気分になる。


「オメーら笑ってる場合か! こっちを手伝えよ!」


 遠くでクロウ竜を抑え込んでいたクニウスのツッコミに僕らは慌てて移動を開始した。


「二人とも、私は遠くから魔法を使って妨害するからフォロー宜しく!」

「了解! ……行こうかラティ!」


「……はい、御兄様!」


 僕はラティに手を差し出し促すと、微笑んで手を取ってくれた。そのまま引き寄せ 横抱きにして建物や瓦礫の上を飛んで接近する。そう言えばラティはどうやって攻撃するんだろうか。


「御兄様、私もこの辺りで。ここから援護します」


 そう言われ、ラティをまだ壊れていない建物の平らな屋上へ置いてからクニウスの援護に向かい、魔法の類はほぼ潰されているので変わらず接近戦を仕掛ける。クロウ竜はダメージを継続的に受けながらもまだ衰えず、パルヴァを狙うのを諦めていない上に今度はラティにも炎の球を吐き攻撃を仕掛けて来た。


一瞬ヒヤッとして駆けだそうとしたが、何とそれをラティは右手で蜘蛛の巣を払うようにして弾いてしまう。それを見てクニウスに視線を送ると首を竦めていたが僕も同じだ。生身であんなものを弾くなんて凄い妹だ。


「くっ……今更あんなものが何故……」


 クロウ竜は忌々し気に呟きながら胸の辺りを抑えていた。いよいよエネルギーが尽きかけているのか、中に居る姉の怨念がそうさせているのか。どちらにしろもうそう長くはなさそうだと感じた。


「遂に年貢の納め時か! 神様よぉ!」

「五月蠅いね君は!」


 焦燥感による攻撃の粗さと三鈷剣による消耗で足元すらおぼつかなくなり始める。


「な、何だと!?」


 クロウ竜の足や手、それに翼に無数の蔓が絡みつき動きを一瞬封じた。直ぐに振り解いたものの僕らにはその隙だけでも有難い。三鈷剣の柄頭目掛けて渾身の一撃を叩き込む。断末魔と同時に柄頭はクロウの体に完全に埋まって見えなくなった。


よろめきながら僕らから距離を取ろうとするクロウ竜。遂に止めを刺す時が来たと確信しクニウスを見ると、僕に行くように手で促した。だが僕一人の手柄じゃないのでクニウスに拳を突き出して一緒に行くよう促す。


すると呆れたようなポーズを取った後で拳を合わせてくれて、僕らはクロウに最後の一撃を見舞うべく走り出す。


「あそこだ! あそこに悪の竜が居るぞ!」






読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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