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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
竜の都編

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再会……?

 中に入ると、こないだネルトリゲルであった時とは違い豪華な衣装に身を包んだパルヴァに肩を抱きかかえられ、ベッドでラティは上半身を起こしていた。姉に体を乗っ取られていた時の表情と違い、穏やかな寝顔で精気も失って居ない様でホッと胸を撫で下ろす。


「クニウス、ご苦労様」

「別に大した仕事はしてないよ、少しグールが多かったけど。それより本番はこっからだし」


「うぅ……」


 パルヴァに抱えられていたラティが眉間に皺を寄せ呻いた。そして少し間があった後で少しずつ瞼を開き始める。


「や、康久さん……」

「ラティ……!」


 一瞬吹き出しそうになったのを堪え急いで右手を腰の辺りに持って行き思い切り抓り、涙目になりながら微笑んだ。ラティらしいと言えばらしい。乗っ取られてもそう言う所は教えないか分からないように偽装したのだろう。そして姉も姉らしい。そんんところには頓着しないからそれで良いかと思ったのか御兄様と死んでも呼びたくなかったからなのか、よりにもよって康久さんとは。


さてここからどうすべきか。


―我は共に在り―


 三鈷剣も空気を呼んで出現するのを抑えてくれたようだ。姉側からすればもう星の意思を乗っ取り星そのものを器として使うと決めたんだから、僕を取り込むのに固執する必要は無い。となれば確実に命を取りに来るだろう。


姉は僕が不死に近いのをある程度把握していると考えて間違いない筈だ。とすると呪術をこちらに直接流し込んで苦しめる手段に出てくる。だが今見た限り武器のようなものはない。


「じゃあ私たちは一旦外へ出てましょうかね」

「そうだな」


「クニウス……」


 感極まった振りをしてクニウスにハグをし離れる際に口だけ動かし”ラティじゃない”と伝えた。それに対して頷きクニウスは親指を見えないように後ろのパルヴァを指す。


「パルヴァも有難う」

「いえいえどう致しまして」


「パルヴァ……」


 一応パルヴァにもハグして伝えようとしたがクニウスに首根っこを掴まれ妨害されてしまう。こんな終盤にコイツの弱点を知れたのかと思うと残念でならない。もっと早く知っていればやり返せたのに。


パルヴァはウィンクして僕の腹に手を置いてから離れて行く。


「康久さん、こちらに来て顔を見せて」

「あ、ああ」


 何某かの加護を貰えたと考え涙ぐみながらゆっくり近づいて行く。そして目の前に立ったがここまでは何もない。パルヴァを警戒して何の仕掛けも施してないようだ。いつ仕掛けてくるか違う意味でドキドキしてる。


ラティを相変わらず乗っ取っている姉は両手を広げて僕に抱きしめるよう促す。こう言う所からしてラティらしくない動きなのが分からないんだからなぁ。興味が欠片も無いのが分かる。


まぁそれはさておき取り合えず抱き合うか。中身は姉でも外見はラティだから我慢しよう。


「フフ……フフフ」


 抱き合う寸前で急に薄気味悪く笑いだす姉。ここに来て初めて僕にとっても良い行動を取ってくれたと微生物レベルの感謝をしたくなる。


「ラ、ラティ……?」

「誰がラティだバーーーカ!」


 邪悪な顔をして笑う姉は僕を突き飛ばし両手を突き出すと指先に紫の炎を宿し、空に魔法陣を描く。僕は即呪術法衣を纏い防壁を張る呪術を出すべく陣を描いた。


「遅ぇ! 閻魔八陣!」


 魔法陣から飛び出して来た小さな五人の鬼が僕を取り囲むと、僕を囲み中心になるよう黒い五芒星を描いた。


「これからジワジワ嬲り殺してやんよ……お前の魂が死による救済を望むまでなぁ!」

「僕を殺した人間がよく言う。死んでもここに来てこんな目に遭わされてんだから救済も何も無いだろ?」


「お前が大人しく首都に来てりゃこんな回りくどい真似をする必要も被害を広げる必要も無かったんだ。それをあの女が何を血迷ったのかお前を月読命に直接ぶつけやがって……。まぁ御蔭でグールの研究や変身の失敗などクロウに借りを返す資料が手に入って良かったがな」

「まさかアミを蘇らせる為にこんな真似をするなんて常軌を逸してるぞ?」


 前に夢の中で見た時に小さい頃の姉がちもにと言っていたが、元はアミと言う名前でフランス語の友達って意味が込められている。飼うのを許してくれた両親に感謝し、せめて名前だけでもと付けてもらったものだ。姉はそれが気に入らないらしく、ちもにと呼んでた。後でちもにがキーボードのかな入力でamiだったのを知りへそ曲がり具合に呆れたが。


「お前があの子の名前を口にするな! お前があんな連中に絡まれなければあの子は死なずに済んだのに……」

「いやあの子を飼うのを頼んだのは僕だし、面倒を見てたのも僕だが。お前は餌を与えたり気が向いた時だけ構ってただけだろ? どう改変したらそこまで悲劇のヒロインになれるんだ?」


 あの頃は家族も幸せで仲が良かったが、姉は思春期に差し掛かると距離を置いた。僕はアミと遊んだり散歩もしっかり連れて行っていたので姉の執着心が良く分からない。いつも偉そうで暴力的で独善的な人間だったが、そこに狂気も加わると始末に負えないなと改めて思う。


「悲劇のヒロインになれるか? ですって? 私は正真正銘悲劇のヒロインよ? 学校では飛び級が許されず私より成績も頭も器量も悪い連中に付き合わされ、野上の家の話を聞かされて後を継ぐ為に覚え鍛えとしていたところにいきなり離婚。野上でも無くなりどうでも良い名字にある日突然された私の気持ちが分かる?」


 知らんがな、と言いたいのを堪えて話を聞いてやろうと思う。何しろこっちからしたら何で殺されて異世界に飛ばされなきゃならないかある程度知っておきたいし。





読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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