アルタ攻防戦
「康久、第二陣開始だ」
二人でのんびりお茶を楽しんでいると、イザナさんがテントに入って来てそう告げた。投石器による攻撃を仕掛けながら機会を窺い攻め込むと言う開始前の作戦に立ち返ると言う。
「空を飛ぶ奴が居るらしいが、それは康久に任せても良いか?」
「分かりました」
テントを出て第二陣に備えるべくルナは玉藻も呼び、リベリさん迎撃の為に三人で行動する。方向を確認したりしているとマウロが来て参加するとか言い出したので、奥様とミコトに連行して貰い以後も目を光らせておいて欲しいと頼んだ。
生憎僕らでは医療行為を行えないのでこればっかりはどうしようもない。医療班に取ってもマウロとパティアそしてミコトはキーマンであるので、前線に配置すれば後方が維持出来なくなるので選択肢にはない。
元同僚として組織を離れ色々見て触れて育んで来たからこそ、直接伝えたいと言う気持ちは分かるが。
「二時の方向!」
「行くのじゃ!」
リベリさんの遠距離攻撃をルナが感知し、それに合わせて玉藻が鬼火を出現させ放り投げ迎撃する。ただこちらの投石も向こうに着弾する前に粉砕されているようで、砂煙だけが上がっていた。続々投石器は完成して行くので球は増えるが果たして効果はあるだろうか。
リベリさんとカグツチによって粉砕されるのは目に見えているが、球が多ければ捌くのに苦労するだろうとは思う。我慢比べでこちらがジレて出るか向こうが堪えきれずに動くかの勝負になるかもしれない。
投石による攻撃は夜も行われ、兵士たちも玉藻たちも交代で休む。僕は師匠から空を飛ぶ方法を教わっていたがそれは温存しておきたかったので、呪術によるサーチを行い玉藻が寝た後はルナの技での迎撃に代わる。
温かい時期の戦いなので、外で寝ても風邪を引く可能性が低いのが有難い。皆その場に用意された寝袋で眠りに就き、起こされ交代するという状態に移行した。
やがて投石器も六つ目が完成した頃、こちらからみてアルタ右方面から敵の攻撃を受ける。
「康久!」
「ルナと玉藻はこっちで警戒を」
丁度寝ていたところに声が掛かりそのまま右へと移動。振動を起こしながらこちらに近付いて来たのはまたもカグツチ。今度は竜騎士団も引き連れて来た。だが戦い方は変わらないだろう。
「ゴウバ、ゴライ!」
こちらも当然連れてきているので指示を出して竜騎士団を止めさせる。更に一人読んでイザナさんに左と正面を気を付けるよう伝達を頼んだ。さっきの戦い方からしてもカグツチは時間稼ぎ要因だ。
先程は立て直し、今回は再度こちらの投石器の破壊が狙いだろう。リベリさんの狙いは何だろうと考えた時、彼らがこちらに積極的に攻めてこない点が気になった。
元々籠城なんて柄じゃないのに、真の姿を現してもまだ籠城しているとなるとやはりアルタに引き込んでの戦いが御所望なんだろう。だがそう言う訳には行かない。こちらとしては何とか戦力を減らさず、また相手もなるべく減らさずに首都へ下がって貰いたいのだ。
人が死ねば死ぬだけ姉の有利になる。なので投石器の昼夜問わない攻撃に参って大人しく下がって貰う為に、こちらも積極的にアルタには攻め込まないと決めた。
「ぐはっ」
カグツチを先ほどと同じように追い込み、風神拳で吹き飛ばした。それを見て竜騎士団も下がる。ゴウバとゴライを見ると無事でホッとした。味方の兵士たちも頑張って何とか使者を出さずに済む。
急いで怪我人を担いで医療班のテントに連れて行き、その後急いで正面に戻るとやはり投石器を狙って攻撃を仕掛けられていた。
「少し早いな」
「いや遅かったですね」
リベリさんはルナと玉藻、そしてデラックさんとリュクスさんを相手にしていたが余裕な感じで居た。他の竜騎士団はカイテンの将軍たちが兵を連れ対処してくれている。投石器を見ると二機破壊され死者が出てしまう。
「大人しく首都まで下がって貰えませんかね」
ルナと玉藻による攻撃で地上に降りて来たリベリさんを、デラックさんリュクスさんと連携して攻めそう頼むと、声を上げて笑いながら捌かれる。
「早々思い通りにはなってやれんな。こちらにも予定がある」
「姉の準備はまだ終わらないんですか?」
「それは答えられないね」
それで十分だ。どうやらこちらもあちらもこの場の戦いとは別のところに狙いがある、だから本気ではないのだ。リベリさんとカグツチが本気で攻め、竜騎士団も全投入していたら今頃押されていただろう。
こちらとしてもそれが分かっているからこそ押し切れない。僕の狙い以外にもこちらの軍としての差がそれを出来なくしているからだ。
「焔祓風神拳!」
だがカグツチとは少し条件の違うリベリさんなら三鈷剣が出現し力を貸してくれた。チャンスがあるなら狙わない手はない。向こうもリベリさんが健在だからこそ強気で攻めてくる。
「おっと怖い怖い」
デラックさんとリュクスさんを捌き、僕が構えた隙に浮上。ルナと玉藻の追撃を瞬間移動したのかってくらいのスピードで避け、更に焔祓風神拳も避けられてしまう。
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