表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界狩猟物語  作者: 田島久護
竜の都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

637/675

混乱する戦場

 リベリさんは再度こちらに攻撃を仕掛けるべく動き出したが、それに反応し手首の縄が高速でその動きを捉えんと地を這う。それを手の篭手から伸びる刃で斬り払うもそれを掻い潜り左腕を縛る。僕はそれを見逃さず思い切りこちらへ向けて引っ張った。


「つぇやっ!」


 その勢いに乗り斬り付けて来るが、縄をしならせバランスを崩させて距離を詰めて左拳をリバーに叩き込む。小さく吐いたものの食いしばり切り返してくるが、張っていた縄を緩めバランスを崩させる。


三鈷剣も強力だがこの縄も相当強力な武器だ。相手を捉えて離さない上に逆に利用しようとすると途端にピクリとも動かなくなる。


それに対してイラついていたリベリさんも半ば諦めてこちらに攻撃を仕掛けてくる。普通の縄で縛られたのならやりようがあるだろうけど、こちらにだけ有利な状況は初めてだろう。だが強い相手と戦うのが本望だったと思い直したからなのか、苛立ちも消え最初の頃のように嬉々として攻撃を仕掛け始めた。


リベリさんの予測し辛い動きとフェイントを織り交ぜた攻撃を受け捌きながら思う。これだけ有利な状況にもかかわらず押されている気持ちになる。普段の紳士的な振舞からは真逆の動物的な戦い方見えるが、ただ動物的なだけでなく相手を必ず倒す為に計算された動きで隙が無い。


着地するにもただ体勢を立て直す為でなく確実に次に流れるように繋がり、転がるにも近くにある小石などを手に掴み投げながら転がり、途切れず攻撃を仕掛けてくるその姿は圧巻そのものだ。左手首を縄で抑えているが引いてバランスを崩しても、即対応して攻撃に転じてくる。


「何故第一騎士団長を降りたんですか? 一対一に持ち込みたいならそれが一番確実だったはずなのに」


 防戦一方だが一つ一つを丁寧に捌き、縄でバランスを崩させようと呼吸を合わせて引いたりしながら問いかける。会話から突破口を見出したいが、リベリさんの出自などは全くと言って良いほど分からない。なので謎に思う部分を問うも先ほどのように隙が生まれるのを嫌い、僕の問いに答えないだろうなとは思っていた。だがそれは別の形で答えざるを得なくなった。


「あれが奴らの首魁じゃ! 討て者共!」


 こちらにとって幸運な展開で、てっきり殺されたから竜騎士団(セフィロト )が攻勢に転じたのかと思いきや違ったようだ。聞き覚えのある声が響いた後で僕らの側面に兵士が殺到する。縄で一を入れ替え竜騎士団(セフィロト )と向き合う。


これがリベリさんの望んでいた対決の形ではないだろうが、始めたものをとめられないだろうと僕は考えどう捌いていくかを考えなければならない。


全て丘陵へ向けて行ったかと思ったが伏兵のような形になってしまい、タイミング的にここで後ろに通すとうちの軍が押し込まれると予想できる。多少でも足を止めなければならない。


「焔祓風神拳!」


 直ぐに構え焔祓風神拳を放つ。兵士たちの波に飲まれ立ち尽くすリベリさんを掻き分けるには数も多く難しい。手首の縄はリベリさんを解いてこちらに戻ってくる序に竜騎士団(セフィロト )の兵士たちの足を引っ掛けドミノ状態にして前に居た兵士を潰してくれた。


それにより混乱が生じたのをチャンスと見て焔祓風神拳を打ち込み竜騎士団(セフィロト )の前進を鈍らせる。後ろの戦況が全く分からないので不安ではあるが、カイテン軍もいるので何とか凌いでくれていると信じるしかない。


今は出来る限りここの兵士を潰して分断しておかなければ、こちらの負けになってしまう可能性がある。しんどい相手の連戦だが、そこはチート能力を貰っている以上文句は言えない。ここ最近変身を一回もしないで済んでいるのがとても助かる。


「押せ押せ! 敵はあ奴だけではないぞ! 後ろに抜けて敵の兵士を先に潰すのだ!」


 何とか事態を収拾し焔祓風神拳に対して盾を構え倒れた者はどかしながらジリジリと攻めて来ていたが、一応戦を考えられるようで指示を微妙に変えて来た。それ自体は良いがこれまでの信用があるかどうかで兵士たちの動きは違う。


リベリさんが出した指示なら聞いただろうが、彼らの表立った強大な敵で障害でもあるのは僕だ。反骨心も手伝って彼らは指示に従わない。焔祓風神拳を何とかやり過ごし間合いに入ると一斉に槍を振り上げ叩きつけてくる。


綺麗に左から波打つように降りてくる槍を避けて焔祓風神拳を打ち込むと、槍を下ろした兵士の一部は吹き飛ばされ僕はその隙に大きく斜め後ろに飛び退く。元居た場所を見ると、兵士たちが僕を囲もうと槍を叩きつけた瞬間にある程度飛び退くのも計算に入れて動いてた跡が見える。


指揮官が居なくとも信頼できなくとも状況を考え動ける。それこそが竜騎士団(セフィロト )の強みでありゴールド帯以上とも言われる所以だろう。


 指揮官と兵士がバラバラでも大して隙が無く、一人一人叩き潰して行くしかない。だがそうしておけば、元々劣勢にあったこちらの軍と竜騎士団(セフィロト )の鍛錬の差や装備の差などを数で多少埋められる。


一軍の大将としてもここが堪えどころだ。何とか皆に頑張って貰い出来れば打ち破ってくれればと祈る他無い。









読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ