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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
竜の都編

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悪夢の残骸

 暫く町の中を見て回ると、前に近付いただけで鐘を鳴らされた場所に辿り着く。そこにあった鉄の扉は破壊されており、階段があったので降りてみる。途中から凄まじい腐敗臭と血の匂いが混じり出した。


気を広げたが上に人は居ないようなので風神拳を斜め上に向けて全力で放つ。大分天井を吹き飛ばし削ったので外の空気が吸えてマシになった。と思った直後、下に流れた風が返って来てその凄まじい匂いに気が余計滅入る。


とは言えどうにかしなきゃこのままだと怨念が町の下に残り続け、永遠に住めなくなりそうなので覚悟を決めて進む。所々風神拳を放って穴を開けたが、下に行くにつれそれも難しくって来た。


灯りは青白い炎を身に纏う方法で解決したが空気に関してはどうにもならない。手で口と鼻を覆いながら進んで行くと暫くしてやっと着いた。


「いやぁ無理無理」


 人間として限界だったので一旦戻る。ルナや玉藻が先行して様子を見に来てくれたので合流し、一部始終を話した。


「何て言うかホント人間性があるのか疑いたくなるわね」

「行きたくないのじゃこの下は……この者たちはこのままにしておけば必ず妖怪か悪魔になるのじゃ」


「なら何とかしなきゃな。具体的にはどうしたら良い?」

「面倒でも掘り起こした方が良いわね。取り合えず康久の話からして別の入口は無い様だし」


 僕らは一旦ダルマ方面に戻り、他の面々とも合流。カーマであった話をした後でカーマへと皆で向かい、兵士の皆にも協力してもらい穴掘りをした。


「戦でお役に立てず申し訳ござらん。穴掘り如きでお返し出来るとは思っては居りませんが、必ずや少しでもお返しします」


 三将軍はそう言って兵士たちに指示を出し穴掘りを進める。うちの軍も穴掘りを始めた御蔭で割と早くその姿を露にさせられた。


正直、人間がこんな真似をしたとは思いたくないような光景が繰り広げられており、兵士の奥は嘔吐して距離を取り、全体に対して近付かないよう指示を出して大きな布で周りを覆い見えないようにした。


使いを出して師匠を呼びその光景を見て貰うと、手を合わせた後共にその処理場へと下りる。


「酷いもんじゃな……だが懐かしい」


 師匠は寂しそうに笑いながらそう言う。そう言えば師匠も魔法使いとしてある国の戦闘に参加し、その中で非道な行いをしたと聞いた。


「魔術を追及しているとな、自分だけでは足りなくなるし限界も来る。ワシのように途方もない目標を持てば持つほど非道の深みにはまる。それはこれと変わりない環境を生み出した」

「魂の定着ですか?」


「始まりは不老不死。それに至る最初の道を生成に求め、詳細の分からないあらゆる物質を調合し魔術を重ね合わせ人に投与した。だが結果はこの傷跡と似たような物。当時は罪人に対して行っていたので罪悪感は無かった……が、後でその罪人の詳細を知った時、可笑しくなりそうだったよ」


 師匠は元人であった残骸を手で避けて道を進む。もう乾いているからなのか、血とか色々な臭いが混じっていて上に空が見えなければ歩いて居られないだろう。


「ここに居たのも恐らく信者。適当な理由を付けて罪人に仕立てられたか何も聞かされぬまま来たか」


 一番奥に当たる場所の扉を開けると、そこはここを管理していた人間の部屋らしく他と違い綺麗だった。薬品が並んだ棚に机、高そうな絨毯に絵画とここだけ別世界のようになっている。


「……まぁ凡そお前の予想通りだ。器の開発」


 師匠が机の引き出しを探して、一冊の本を取り出し読んだ後僕に渡す。それを読むと教団本部から不老不死ないしは人間より強度のある者の製作を支持されていたようだ。


結局月読命たちとの協力関係が結ばれると同時に首都で施設が作られ研究もそちらがメインになる。ここを管理していた男は当然焦る。失敗を多めに見て貰っていたのもレポートによる詳細な結果を報告していたからだと書いていたが、僕が思うに姉はその結果よりもこの地獄の風景を楽しんでいただけだと思う。


強引な実験を続け男も可笑しくなり始め、研究員たちも逃げ出して行く。そして最後に任されたのがクアッドベルと協力しアイノさんを誘拐、人質に取り斬久郎さんを首都の施設へ送った後、姉から渡された種をアイノさんに飲ませた。


男は強烈な弛緩剤をクアッドベルには健康剤だと言って注射をし、クアッドベル自身は姉から別に渡されていた本に書かれていた魔法陣を、ここから少し離れた部屋で書いて起動させた。


自らを生贄にしてアイノさんに飲ませた種を発芽させる起動スイッチとなり花に飲み込まれたようだ。殴り書きで騙されたと最後に書かれて本は終わる。


「もう良いじゃろう。こんなものは存在してはならない」

「はい」


 もう一度来た道を戻り、本に書かれていたクアッドベルが魔法陣を書いた部屋に入ると、そこには恐らくクアッドベルであったものが横たわっていた。


師匠は手に炎を呼び出し放り投げてそれを消滅させる。三鈷剣が再度僕の中から出現し目の前に握るよう促すので手に取り、目を閉じ全ての冥福を祈りながら思い切り魔法陣の中心に突き立てた。


その後師匠と共に町中を回ったが他に施設は無く、皆に協力してもらいこの施設を焼き尽くしダルマに一旦戻る。そして会議を開き翌日はアルタへそのまま進軍しようと決定した。







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