カイテン軍とダルマ駐屯地で合流す
翌日、僕ら傭兵団はデラウンを出立しダルマへ赴き駐屯。カイテン軍を待ってからカーマへと進むべく準備を開始した。イザナさんとジュンインさんの指示でカーマに偵察隊を先行させ、僕らは地形の最終確認と各部隊の侵攻経路の確認を行う。
更に物資の確認と急病人などの確認も行い、食事班の仕込みを手伝ったりと大忙しだ。千人の兵士を各部隊に分けて編成しているのでそこから更に役割を分担して進めていく。
各中隊長小隊長から続々司令部のテントに報告が来て処理して行く中で、カイテン軍到着の報告があり出迎えに出た。
「康久殿、お出迎え忝い!」
青い鎧に身を包んだ人物が素早く馬を降り、左掌で右拳を隠し礼をしたのでこちらも同じようにして返す。更に二人、緑の鎧に身を包んだ人物がこちらへ来て同じように礼をしたので同じように返す。
「相変わらず後手後手で申し訳無い。今回も飛ばして来たのですが」
「お気になさらず。我が国の問題にお力添え頂きソウビ王の慈悲深さに感謝しかありません」
僕がそう返すと、青い鎧を着た人物は一瞬止まった後頷き握手を求めて来たので応じる。するとこちらに近付いて来て
「御立場も御座いましょうが、我々康久殿が王族であるのを存じておりますのであまり遜らぬ様に願います」
「いや、まぁ事実はそうなんでしょうけど」
「王位継承権二位なのです康久殿は。それに今回の出兵は、貴方が生存なさっておられただけでなくカイビャクで憎き竜神教を打倒せんと竜騎士団を次々と打ち破っておられたと聞き、国内では皆盛り上がっております。ショウウンは無礼が過ぎたと伺いましたが、我らカイテン軍三千は殿下の為に戦う所存ですのでお忘れなきよう」
凄い圧の強い顔をこちらに近付けながら低い声で言われたじろいでしまう。確かにカイテンでの立身出世振りや立身出世に加え、死んだ振りをしてカイビャクへ向かいその中で打倒竜神教の為単身戦っていたと言う知らせを聞くと英雄物語っぽく聞けなくはない。
「エンカ殿、そろそろ我々も御挨拶をしたいのですが宜しいか?」
「あ、ああすまないつい」
顔と手を離して下がると今度は先ほどの緑の鎧の人物が兜を脱いでこちらに来ると傅いた。
「傅かなくても大丈夫ですよ。遠路はるばるよく来て下さった」
「いえ、滅相も御座いません。私はコウジンと申します。華卞皇后の縁者で御座いますれば、殿下とは縁戚に当たります。これまでお力添えできず殿下お一人苦しい思いをさせて申し訳ございません。これからは我が一族上げて殿下の覇業をお支えすべくこの中の誰より功を上げて見せます」
また重いのが来たな。困って後ろを向くと華さんが頷いて居たので親戚の人には違いないらしい。しかし覇業って……。まぁ将軍で親戚なら華卞さんがあの話をしてるのは間違いないよな。大丈夫かな。ソウコウ様が聞いて喜ばないと思うんだけどなぁ。
「殿下、初めてお目に掛かります。私はショウインと申します。先日は倅が大変失礼いたしました。陛下に直訴し殿下にお詫びと償いをすべくこうして馳せ参じました。どうかお気の済むようにお使いください」
今回は全員重い人が来たな。多少は砕けてくれても良いんだけどな。それにどう見ても三人とも僕より年上だし。コウジン将軍は華卞さんに似た切れ目をしていて口髭を蓄えた渋い二枚目、ショウイン将軍は辮髪という天辺以外は剃って残った部分を三つ編みにして後ろへ垂らした厳つい顔の人だった。
エンカ将軍は少しほっそりとした顔で鋭い目をしており口髭も無いクールな感じの人物だ。髪もオールバックにしている。
迫力ある小父様方に傅かれるととても困るので立ち上がって貰う様促すとやっと立ち上がってくれてホッとした。三人を司令部テントに案内し、地図を渡して侵攻経路の説明を行う。
それが終わると三人の将軍は自分の部下を地理把握の為に出したいと言って来たので了承した。こちらの話だけでは完全では無いだろうし、自分たちの身内で調べたいと言う気持ちは理解出来る。
何しろ死ぬかもしれないのだから少しでも信じられる状況で戦いたい。
「華、久し振りだな」
一旦解散になった後、僕と華さんが司令部テントを出るとコウジン将軍が部下と共に待っていて、笑顔で手を振った。華さんは僕を見た後でコウジン将軍のところへ掛けて行き頭を下げた。
「御久し振りですコウジン叔父様」
「すまないなこちらには早く来たかったのだが色々面倒な話が重なり過ぎてな」
コウジン将軍は親戚として一番にこちらに来たかったが、最近戦乱も無く周辺も大人しいその上例の話で国内が湧いているので我も我もと言う状態で揉めていたらしい。
更には華卞皇后もその話に加わり更にはソウコウ様も加わりと収拾がつかなくなったと言う。そこでソウビ王から武芸で決着をつけようとなったようだ。
「え、華卞さんは強いは強いでしょうが……」
「君が知らないのも無理はない。最近は大人しかったが昔は王と共に野を駆ける女ソウビとすら呼ばれる戦士だったのだ。幼少期から男など足元にも及ばん。縁戚だから取り立てるような優しい人でも無いのでな。我々も取り立てられるには相当の手柄を求められた」
で、直接斬り合うのは駄目なので弓での勝負となり、今回の順番に決まったと言う。驚いたのは弓のみで言えばジュンイン殿が一番でその次が華卞さん、次はショウウン殿だと言う。
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