ダルマ攻略を終えて
結局師匠にそれ以上教えて貰う暇もなく会議は始まる。イザナさんから冒頭各隊長への労いの言葉があった後、カイテン軍は怪我人を残して一旦退却し、師匠による調査隊を派遣しダルマの安全性を確かめたという報告を受けた。
ダルマは建物が壊れた以外は大地の汚染などはなく骸骨兵たちの再出現は無いだろうと言う。自分でも後で確かめてみようと思っているが、デラウン周辺と同じように汚染と逆の状況になっている気がしてならない。
「それとダルマは暫く放置しておく。カイテンとの協議をこれから再度行うのでな。このままの状態でダルマを占拠しても負担が大きすぎていざという時対処出来ん」
「我々は足りない時間を得られたと考え練兵や再調整を。その間にダルマをどう運営していくかも考えますので」
軍師二人にその辺りの話は任せて欲しいと言われたので、僕は決済の判を押すだけだ。今後向こうに出向くかどうかも交渉次第で流動的だ。イザナさんもジュンインさんもカイテンが出して来たショウウン殿に関して憤慨とまではいかないまでもかなり憤っているようだった。
二人ともショウウン殿を知っていて、前はあんな話も分からず思慮の浅い人間では無かったと言う。何が彼をそうさせたのか気にはなるがこの首都攻略に向けたスタートを立て直す方が急務である。二人としては至急別の人間を立てて増援を出す様に促すようだ。
「まぁ何にしてもあれは無いわよね。一歩間違えれば全滅しても可笑しくなかった訳だし」
「ですね。後方に居ましたが、結局閣下頼みであるのはカイテン軍が来ても変わらないのか、とうちの兵士たちの間でも落胆の声が聞こえてますからね」
イトルスの話を聞いて、それはそれで申し訳ないなと思う。ただ今回は僕のお客さんでもあったので対応させてもらったに過ぎない。今後は毎度毎度そうしてはいられないだろう敵が多すぎて。
皆の目と感覚を慣らす第一歩としては的確だったと思う。これからああいうのが山ほど出てくるのだから。
「ほいじゃま、また稽古を付けてその時を待つかの。誰から行く?」
師匠が席を立ちそう告げながら周りを見る。そして何故か僕に視線が集中する。皆汚い。
「ではお前からだ。その後はいつも通りの順番で……いやリュクスとデラックは最後な」
この場に居ないデラックさんの分も含めて壮大な溜息を吐いて頷き外へ出て行くリュクスさん。守備隊も今は周辺のモンスターも居らず比較的時間があるから断れない。リュクスさんとデラックさんは兵の指揮や練兵も習っており、二人とも開戦にホッとしていたのを思い出す。
今回は放牧地近くの場所で稽古を開始した。師匠に対して三鈷剣は出ないので呪術法衣のみで稽古に臨む。師匠の攻撃は呪術法衣を着ていても軽減されずにダメージを受ける。曰く一番最後の敵はこのくらいはするじゃろ、と言う。
なるべく木が無い場所で稽古をし、地面が壊れたりひび割れたりした場所を締めに近い時間になると更に砕いたりして整地をして稽古を終えた。
「あの後俺がやるのか嫌だなぁ」
ベオウルフさんのゲンナリした顔を見るのはこの時だけなので少し面白い。なるべく真顔で居たつもりだけどすれ違いざま肩で突かれてしまう。町に戻る途中でイルヴァーナさんにも会い、同じような感じだった為同じような顔をしてしまったらしく、軽く肩を押された。
「大体閣下のあの稽古の様子を見て喜んで後に続く者はいないんすよ」
「そーじゃそーじゃ」
イトルスや玉藻は恨めしげな眼をして僕を見る。執務室で事務処理やらなんやらしながら二人は待っているが、離れていても若干聞こえる音と振動で凄さが伝わると言う。
「ま、まぁまぁ。僕より酷い目になんて合わないでしょ?」
「分かんないっすよ? 師匠は閣下に合わせてから下げてる気がするんすよね。今回はこないだの戦いを見ても大分上から少し下げる感じになるんじゃないかって玉藻とも話してて……非常に行き辛いてか行きたくない」
「そうなのじゃ辛いのじゃ」
二人はお通夜のような顔をして俯く。でもまぁ確実に生き残ってもらう為にはこの稽古は大事だよと言うと、壮大な溜息を吐かれた上に咳払いまでされる始末。二人のご機嫌を取ろうと急いでギルドまで出向きフルーツジュースを自分の分も買って戻ると、ルナまで増えて居て献上する羽目になった。
取り合えずご機嫌を回復された二人と便乗した一人を其々稽古に出る時見送った後で執務室に戻ると、イザナさんが入って来た。
カイテン軍から早速使者が来たので応接室に待たせてあると言うので向かう。使者は非常に申し訳なさそうにショウウン殿の失策を詫びてくれた。そして補填をする為に詳しい報告が欲しいと言われジュンインさんがそれについての報告書を取りに行って戻り渡すと、さっと目を通してから病人について直接見て確認をしたいと言うので向かう。
流石ソウビ王の使者だけあって報告書を見ながら病状を確認し、しっかりと当時の様子について話を聞いてから帰って行った。また暫く間が空くかなと思いきや翌日には次の使者が来た。
「それは構わんが……良いのか?」
「はい。ソウビ王としては挽回の機会は直ぐにでも欲しいとの仰せで御座います。是非我が王の気持ちを汲んで頂ければ……」
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