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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
竜の都編

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稽古、稽古で日が暮れて

 華卞さんとの別れを惜しむ間もなく僕らは準備を開始する。ひと月なんてあっという間だ。ソウコウ様とも久し振りに会い、短時間会話をしたがカイテン側はかなり盛り上がっていて準備万端らしい。


「康久は生きていると我々だけが思っていたらしい。民は君が生きてカイビャクで竜神教(ランシャラ)打倒の為に挙兵したと知って大分高揚している。今すぐにでも駆けつけるべし、なんて声もあるほどにね」


 王の指示を受けるまでも無く、カイビャクの冒険者は我先にとデラウンに来てくれてたらしい。その後はあまりにも多いので規制を掛けるていると言う。


僕も忙しいは忙しいけどずっと執務室に居る訳じゃないし、毎日女性陣一人を伴って町中でお茶をしたり気晴らしを促していたけど、その時に町の人たちとも雑談をしていたりする。


その時に誰もカイテンから僕の為に来ましたと聞いた覚えが無い。気を遣わせてしまっているなら申し訳ないな。なるべく声を皆に掛ける様にはしてるが更に気を付けよう。今現在他国からの募兵は行っていないから居ないと思うがそちらも気を付けて見ようと思った。


「母上は可愛い娘の身を案じて勝手にこちらに来たが、援助は決まっていた話だ。君の件を知って援助しないなどとなれば国が危うくなる。まぁ兎に角ひと月後、楽しみにしているぞ」


 華卞さんが一番案じていたのはソウコウ様なのは黙っていたが、最早僕は伝説の生き物なんじゃないかと思うほど皆が支持してくれていて怖くなってくる。そんな大したもんじゃないんだけどなぁと思っている僕を置いてソウコウ様は去って行った。


カイビャクの人たちだけじゃなく、カイテンの人たちにもカッコ悪いところは見せたくないし、兵士の皆も練兵で頑張っているので負けられない。


「お互い今は忙しくてそんなに時間掛けられんからな。最初から全力で来るが良い」


 短い合間を縫って師匠に稽古を付けて貰う。今までは優しく丁寧に稽古を付けて貰っていたが、最初から全力しかも魔法や魔術(ミシュッドガルド )ありだ。


「でやっ!」


 呪術法衣を纏いベースを底上げした状態だけど、師匠を完全には捉えきれない。呪術を使用しようにも、本家本元の魔法や魔術(ミシュッドガルド )の前ではあっさり搔き消されてしまう。


「それそれっ!」


 姉との戦いでは呪術戦になる可能性が高いと師匠は見ているので、森の中で精霊を呼び出しけしかけてくる。更に木々の蔓を伸ばしたり花粉に呪力を込めて飛ばし爆発させるなど、短時間で地獄のようなフルコースをお見舞いされた。


「また明日な」

「はい……」


 凄い人だとは分かってはいたつもりだが、想像を遥かに超えた凄さだ。そりゃあ魔法そのものと言われるような人だと考えればこれくらい当たり前なんだろう。僕の考えが甘すぎた。


呪術法衣の御蔭で軽症で済んだというのが余計恐ろしさを増す。数日稽古を付けて貰っていると


「呪術の専門家じゃあないし怨念などとは今は無縁。故に最悪を想定した力で御前を鍛えている。ひょっとするとあの娘の怨念によってこれより凄いかもしれんと覚悟した方が良い」


 そう僕に行った。師匠すらも超える力を怨念によって得ているかもしれないのか。こっちが憎むならまだしも悪行に悪行を重ねた人間から憎まれる覚えは無いんだけどなぁ。


「だが覚えておくと言い。怨念に怨念をぶつけても良くて相打ち。お前も死なんかもしれんがあっちも体を消滅させる程度で済んでしまう。それでは目的は果たせまい?」


 あくまでも冷静に姉を討つ。それだけを考えて戦わなければならない。人質にラティや仲間たちが居るとしても最後まで冷静に戦い、確実に姉を消滅させる機会を狙わなければ。


「お疲れ」


 執務室に戻ると上層部が揃っていた。見ると皆包帯なり絆創膏なりをしていて決戦に向けて修行しているのが分かる。ただ中でも玉藻が一番酷くてティアが心配そうに抱っこされていた。


ルナによると玉藻は力のコントロールがいまいち上手く行かずに悩んでいると言う。この時期になると師匠は隅から隅まで見回りながら僕らに稽古を付けてくれていて、玉藻も師匠に見て貰っているが慣れるしかないと言われたようだ。


「祖父が懸命なのは分かるよ。あくまでもデラウン人……いやカイビャクの人間が前に出て戦わなければならない問題だからね。だからこそ私も全力で修業しているがそれにしても我が祖父とは思えないくらい強い」

「本当にショウ殿の底が見えない」


「底なんてなさそうよね。康久とやってる時の感じからしてヤバいのは分かるけど」

「そうなのじゃ……康久はよく生きているのじゃ」


 軍師二人を除き上層部はそう言った後溜息を吐き書類を処理して行く。ちなみにイトルス君は口を利く気力もなく突っ伏し、ベオウルフさんは元気に練兵に行きイルヴァーナさんは診療所送り。


「敵がそれほど強いというんだろうが、このままだと診療所を更に拡大せねばならんぞ? まぁ医者側にとっては戦地での治療の鍛錬にはなるが……」


 かくいうマウロもボロボロで、珍しく執務室に居るのは診療所の薬品を注文する書類を出しに来たからだ。マウロにこそっと聞いたが変身してもまるで歯が立たなかったと言う。


「今日はこの後ショウ殿から稽古は休みと言われております」


 おぉーと声が上がり拍手が起こる。イトルスは無言でむくりと起き上がるとガッツポーズを取った。何故休みかと言うと、ネルトリゲルのサクラダ一族の稽古だかららしい。










読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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