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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
竜の都編

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是非を問う時期は

「あれも研究に目覚めてね。何でもここ最近の異変について、何処まで影響があるのか知りたいと言っていた」

「異変ですか?」


「君も知っての通り、前まではカイビャクでも獰猛な動物やモンスター、それにヴァンパイアなどがちょくちょく出て居て対処していたんだが、最近はそれがめっきり減った」


 セオリとしては、首都が原因なら弱い動物などはいち早く居なくなると見ていたが、何故か弱い動物程カイビャクに残り、安心しているように感じたのがとても気になるとも言っていたようだ。


リュクスさんはその後、皆と少し放してから練兵の時間になったので去って行った。


「……何か気になるわねそれ」

「ああ。姉の力では断じてないから悪い感じはしないけど……」


 この大地も明らかに変わり始めている。人間も以前より強くなり強力なモンスターなどにも対抗できるようになってきた。だからこそ姉と竜神教(ランシャラ)をここまで追い詰められたんだ。


僕やルナ、ベオウルフさんのような不確定要素のみではここまで行けなかった。運も味方につけたけど、この先には遂に竜神教(ランシャラ)の上層部たちが待ち受けている。運すらも弾き返す……いや凌駕して僕らを潰しに来るだろう。


 次の日から何名か兵を選抜し、僕と共に荒れ地に移動して荒れ地に居るモンスターたちとの実践訓練に挑んだ。兵士たちも一旗揚げる為にこの遠征に同行した者も多い。


カイビャクでは竜神教(ランシャラ)でなければ竜騎士団(セフィロト )でなければ、先は無い。それ以外の道があると示す為に取り入れたであろう冒険者ギルドも、結局は竜神教(ランシャラ)の為でしか無かった。


だからこそ師匠はそれに反抗した。自分の武は一切示さずに。望んでいたのはカイビャクに住む人々の声による改革だからだ。


その為に長年指導して来たが、首都が閉鎖されてもそれは変わらなかった。それほど信仰というものは強く、また嘘でも幼い頃からそれが真実であると教え込まれそのように生きて居れば、そこからは抜け出せない。


実際竜神教(ランシャラ)自体を完全に消滅させるのは無理だと思っている。人々に根付いたものは消えない。だからこそ視点や教義を変えより自由度を増した信仰と言う意味での新竜神教(ネオ・ランシャラ)という受け皿を用意して見た。


表面的には以前の竜神教(ランシャラ)と言っているが、いずれは核を残してもその他は緩くして行く。


イトルス自身ブラヴィシに対する絶対的な忠心などは無く、その偉業のみを讃え教義は生きて行く上で必要であれば変わるべきだし、上の人間が絶対不動でなくてもいいと考えていた。


新竜神教(ネオ・ランシャラ)とは竜神教(ランシャラ)教徒による革命であり、竜神教(ランシャラ)の苗床で生まれた新時代の芽なのだ。


 そして僕としては傭兵団を戦争が終わった後にはしっかり冒険者ギルドのランカーとして入れて、まだ見ぬ開拓地へと果敢に挑んで欲しいと思っている。


兵士たちを見ながらカバーし、自分自身も基礎を磨き一定でない足場の戦場での戦い方を改めて学びながら積み重ねていく。


 今回デラウンに長居しているのは、僕ら側の体制立て直しと再チェックそれに駐屯地作成の為ではあるが、それ以外にもイザナさんには狙いがあった。


「そろそろ日和見を決めている連中にその是非を問わねばならん」


 朝の会議で師匠やリュクスさんも含めて会議の冒頭、イザナさんはそう切り出した。


「カイビャクでのギルドの拠点でもあるデラウンを占拠し、観光地でもあるネルトリゲルを抑えた。我々は貿易の拠点も抑え尚且つ危険な北も抑えている。残りの市に対してどちらに付くか、向こうから言ってくる時間はあったが言ってこない。となれば迫る他あるまい」

「確かにそれはその通りだと私も思う。このまま中央まで攻め上がり、康久たちが勝った後で日和見をしていた連中をはいそうですかとはしないだろう?」


「第二の竜神教(ランシャラ)を防ぐ意味でもその辺りはしっかり抑えておくのが良いわよねぇ」

「師匠、何か思う所がおありで?」


 師匠が黙って腕を組んで俯いているので水を向けて見ると、目を開いて地図を見た後


「書状を送り付けて返答期限を切り、その後その結果を流布してと言うので良いじゃろうな」


 と言って頷いた。それに対してイザナさんは疑問を投げかける。


「ショウ殿、何故その程度の緩い勧告で良いと思われたのかお聞きしたいが」

「簡単じゃよオリババは元よりダルマもカーマが向こう側なんじゃから、それ以外の西がワシらに付いたりは出来ん。付くと言えば即座に潰されても可笑しくない。仮にそこも取りたいのであれば、ダルマとカーマを抑えてからじゃろうな」


 師匠の言うのは尤もだ。イザナさんは進退を伺い白黒はっきりさせ、横やりを防止するのと戦後やり易くしたいが故の行動だ。師匠はそうではなく西側は加わりたくても加われないので時期尚早と言いたいんだと思う。


白黒つけた場合、今の今まで日和見を決めていたのだから、加担したりはしないだろうと見ているイザナさん。ここまで無駄な動きをせず静観していたからこそ兵力も兵量もあり、加わり易い状況までこちらが詰めてその後是非を問い従うならこちらより先に働かせる、そうでないなら滅ぼすという師匠。


かなり難しい問題だ。どちらも確実性が無い。ダルマとカーマは抑えるんだけど、睨みを利かせないと横やりがあった場合、数の上でも不利なのに余計時間が掛かってしまうし、今勢いに乗っているからこそ睨みは効く。











読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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