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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
竜の都編

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呪術法衣


「もう準備は済んだか?」


 ハオさんが山をバックに腕を組んで立っている。やる気に満ち溢れていて気合十分と言った感じだ。個人的にハオさんと戦う理由が無い。リュクスさんともデラックさんとも仲良くしてるし謂わば友人の父親と戦うなんていまいち納得いかない。


「ちなみに戦う理由は?」


 僕が椅子から立ち上がり、万が一を考えてマオルさんたちから距離を取りつつそう尋ねるとハオさんは真顔で首を傾げた後


「我が竜騎士団(セフィロト )の団長だからだ」


 そう告げた。僕は流石に思考停止する他無い。師匠の息子が竜騎士団(セフィロト )の団長? これは一体何の冗談だ……いやこの人は冗談を言うタイプではない。何か理由があるんだろうけど……。


「驚くのも無理は無いが道理ではないか? 父が国と揉めてるが土地には妻も息子も……そして大事な娘もいる。常時居てやれる訳でも無い。それに竜騎士団(セフィロト )の団長と言う肩書は便利だ。この国に限って言えば移動は元より宿泊も食事も問題が起こっても何も困らない」


 なるほど凄く合理的だ。ハオさんも強い敵を求めてこの世界を飛び回っている人だから留守中心配が無いように、また国内で好き勝手やるには竜騎士団(セフィロト )の団長と言う肩書はとても便利だ。


何より師匠は国に対して他の地域の実情を踏まえて諫言を繰り返していて目を付けられていた。向こうからしてもその息子が竜騎士団(セフィロト )の団長になるのは悪い話ではない。


特に血の気の多そうなハオさんが自分たちの味方に付けば、仮にいつか師匠が蜂起してもぶつければいいだけだと考えるだろう。


……ハオさんなら師匠と戦いそうだよなぁ家族を人質に取られたとか父上が悪いのだ! とか言って。


「お前の考えているのは凡そ正しい」

「え!? 人の考えを勝手に読まないで貰えますか!?」


「父と戦うのも辞さない、と言うよりは少々相手に困り始めて来た。この上は父と戦うより他に無いなとも思っていたところで今回のお前たちの乱。渡りに船とはこの状況を言うのだろう」


 ……全然違うと思いますって言いたいけどややこしくなるので黙っておこう。


「リベリに言われて国内に関する利点を良しとして入ったがいやはや竜騎士団(セフィロト )には敵が多くてやりがいがあった。何より兵は勝手に用意してくれるのでな探索に人手が必要と言えは幾らでも出してくれる。今生き残った我が第五騎士団はお前でも梃子摺るかもしれん」


 何と言うか目に浮かぶようだ……無理難題を言われて団長だから逆らえず屈強な敵たちが潜む未開拓地へと連れて行かれる光景が。


ネルトリゲルに来た人の中には居るのかな。生きて帰ってこれたラッキーな人が居れば良いけど。


「だが敵対して見るとリベリの気持ちが分かる。目に掛けた者がこうして大きな敵となって現れた時の興奮を、そしてそれを叩き潰した時の快感を思うと居てもたってもいられん」


 変態が多いなぁこの国は。カイテンの方が大人しく見えるほどに変な人が多いよカイビャク。ここ宗教が基本の国じゃないのかな。竜神様はこんなの望んでるのかな? 望んでたとしたら可笑しいと思わないのかね……ってまぁ元の世界でもそうだからまともだっていうのは違うのかも知らんけど。


「それに貴様にはもう一つ大罪がある。心当たりがあろう?」

「いや無いっす」


 即答するとハオさんは紅の気を発し目もその色に染まり筋肉が隆起する。ここは止めて欲しいなぁマオルさん家なんだけど。


「忘れたとは言わさんぞ!? 我に挨拶もせず娘を嫁にしその上第二夫人とは貴様性欲の塊か!?」

「それはセオリが言ってるだけで全然違うんですよお父さん!」


 僕はそう言ってハッとなる。ハオさんて言えば良いのにお父さんて火に油を注ぐ様な言葉をスッと出してしまった最悪だ。


「問答無用!」


 紅の気を纏ったハオさんは前屈みになると一気に加速しこちらに飛んで来た。横へ飛びやり過ごしたものの通り過ぎたところで右足で地面を蹴りこっちに吹っ飛んで来る。


これはキリが無いやつだと思いながらもマオルさんたちに被害が及んでは不味いので森の中へと移動するように避ける。


ハオさんもそれに同意したように追ってくる。なら加減してくれと言いたくなるが言ってる暇もない。やがてシュリーと初めて出会った場所で今は開けたところに出るとハオさんの顔に蹴りを入れようとしたものの腕で受けられその反動を利用して距離を取る。


「……流石父が見込んだだけはあるな」

「いえいえ足元にも及びませんよ」


 師匠の息子であるハオさんの方が師匠に一番近いのではないかと思っているのでそう言うと


「お前も父も我らの知らないものを知っているんではないか? お前には父と似た雰囲気を感じている」


 そう言われ少し戸惑う。とは言え他の世界から来ただのこの世界は悪い魔術師によって僕らの世界を模倣したものだのと言っても、笑われるのがオチなので言わないし聞く必要も無いだろうと思って言わないだけだ。


「何より貴様は隠し玉を幾つも持っていると見ているが違うか?」


 師匠の血を引いているだけはある。魔術師、いや魔法使いミシュッドガルドの血は侮れない。ここでどのカードを切るべきか迷ったが、個人的にももっと上達したい呪術を展開する為体勢を取る。


丹田に集中し体の奥底から気を呼び起こし更に地面に魔法陣を布くよう念じた後展開、青白い炎が僕を包みそれを気と合わせて練り上げ法衣に変化させ纏う。これが僕が修行で身に着けた呪術法衣だ。










読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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