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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
竜の都編

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強大な力の代償

 怒りを押し殺してネルトリゲルを出て北ルートへと入る。何か襲って来た気がしたが苛立っていた僕が問答無用でぶっ飛ばしたのが効いたのか、それから何も無く木漏れ日の中を散歩しながらギブスを通過しルロイの市役所へ赴き市長と面会する。


その日はガノンさんだけが市長室に居たので事の顛末を伝えて判断を仰ぐ。


「うーんなるほどねぇ」


 ガノンさんは頬杖を付きながら机の上の書類を開いている手に握っていたペンでリズミカルに突いたまま沈黙した。


「申し訳ありませんネルトリゲルを取れず」

「うん? いやぁそんなのはどうでも良いんだよ……とか言うと怒られるか。おめぇも分かってるだろうが基本他の市は当てにはならねぇ。ネルトリゲルの動きも予想の範囲内だ。正直取るか取らないかは状況を見てから決める」


「では他に何が」

「……そうだなぁ……おーい誰か鬼童丸を呼んでくれ」


 ガノンさんはそう言うと外に居た兵士が扉を開けて敬礼しまた去って行った。暫くして鬼童丸が部屋に来たので僕はもう一度報告をする。


鬼童丸は僕の目を見ながら話を聞いていたけど途中でどうでも良くなったのか視線をガノンさんに向けてしまった。


「なるほど」

「そう言う訳だからよ、お前の心当たりのある人物に来て頂きたいんだがどうか」


「良いと思う。これの師匠が来れないのではあの方以外にどうしようもないだろう」

「え、何の話?」


 鬼童丸は何も言わず視線も合わせずそのまま市長室を出て行ってしまった。二人の間で何の意思の疎通があったのか分からないが分かり合ったらしい。


「取り合えず暫くは療養しとくように」

「いえ別に何処も悪くないですが」


「良いから良いから恐らく色々忙しかったしあてられもしたんだろうさ。少し土いじりでもしておけ。こっちはこっちで準備を進めておくからよぉ」


 僕は食い下がろうとしたもののガノンさんは目を閉じ首を横に振った後、犬を追い払うように手を振った。取り付く島もないので仕方なく僕は部屋を出る。


「お帰り!」

「お帰りなのじゃ!」


 何だか腑に落ちないまま市役所を出て空を見上げながら溜息を吐くとタイミング良く声が聞こえる。視線を戻すとルナと玉藻が居て頭にしがみ付きながら寝ていたティアはその声に反応し二人の方へと飛んで行く。


「ただいま」


 僕はぎこちなく笑いながら二人の元へと移動しそのまま僕らはルロイ町の自宅へと帰る。二人に暫く市長から療養を言い渡されたと言うと、色々お願いがあるから助かると言われた。


リスト化してありよく見ると家の修繕とか畑の調整とか納屋の整理など沢山雑用が書かれていて療養とはと聞きたくなったけどジッとしているよりはマシだと思い早速取り掛かる。


夕暮れまで三人と一匹でワイワイしながら修繕したりして疲れたので屋根で寝そべり夕暮れを眺めているととても心が安らいだ。


「そろそろ寒いから降りるのじゃ」

「そうね」


 空は黒くなり星が輝き始め玉藻の言葉で皆下に降りる。厚着しているとはいえまだ冬は超えていない。澄んだ空に怒りの感情が吸い込まれていくような気分になり偶にはこうして皆で空を見るのも悪くは無いなと思った。


そこから暫くは三人で畑をやったりとルロイ町に初めて来たときのような日々を過ごす。それまでの慌ただしい日々から解放されたからなのか連日夜早く寝て朝も遅くまで寝ていてルナに叩き起こされ予想以上に疲労が溜まってたと実感する。


「久しいの」


 畑仕事をしていると畑の入口に団体さんが居て野菜を買いに来たのかと近寄ってみたら珍しい人が部下を引き連れて立っていた。


「酒井様御久し振りです! お元気そうで何よりです!」


 まさかカイビャクで酒井様と会うなんて驚きを隠せない。大和の最重要人物と言っても過言ではない人がこんな少人数でカイビャクにくるなんて。


「……御前こそ思った以上に元気そうで何よりじゃな。ワシ来なくても良かったんじゃないのか? 鬼童丸よぃ」


 酒井様は三度笠をくいっと上にあげて僕を見た後小さく笑い後ろに居た鬼童丸にそう問いかける。鬼童丸は鬼童丸で首を傾げた後


「いや酒井様じゃなきゃダメだと思うぞ」


 と言う。何がダメなのか良く分からないんだけど……。皆暫く鬼童丸に視線が集中する。


「ちょっと何してんのよ畑前で。他の家の人が不安がるじゃないの」

「そうじゃぞただでさえ留守がちで迷惑を掛けておるのに!」


「おお、お主らも元気そうじゃの」


 一緒に畑仕事をしていたルナと玉藻にティアが駆けてくると酒井様が声を掛け二人も挨拶した後家の中に入るよう促した。


ただお付きの人たちは市役所に届けを出さないと不味いとなり市役所へ向かうと言って去って行く。


「で、酒井様はどのような御用件でこちらに?」

「うん? ああ、鬼童丸が”康久が力に振り回されて自分を見失っていて手の付けようがない”と言うのでな。ワシとしては気掛かりで急いできたのだが……」


 皆の視線がまた鬼童丸に向く。すると鬼童丸は視線を逸らして押し黙る。こないだの市長室での話はこれかと気付いた。


僕は酒井様になるべく簡潔にこないだまでの話をすると


「なるほどお前さんもとうとうそこまで恐れられる存在になったか!」


 と口を大きく開けて爆笑されてしまった。僕はそんなに恐れられる存在なのかなと思ってルナと玉藻を見ると首を傾げてる。










読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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