新生ルロイへ向けて
他の兵士は暴動や反乱に対して警戒していたようだし町も緊張していたものの、僕らの忙しない動きに反旗を翻そうとした者たちもやる気をなくしたのか記憶の中にあるルロイ市とルロイの町に戻っているように見える。
勿論騒動に関して動揺はあるだろうけど落ち着いているのは間違いない。ガノンさんがルロイのトップに戻ると言う知らせを出した効果もあるだろう。
今の成人以上の者たちはガノンさんが勇退した時を覚えているようだし市役所にはお年寄りが激励に来たり感激のあまり涙さえ流す人も居た。
表の部分はガノンさんに任せて僕らは裏の部分のお掃除に取り掛かる。手始めに市長が黒幕だったので崩壊させられなかった麻薬組織の壊滅だ。
ルロイ市長が終われば自分たちも御終いだと分かっているので組織も先の戦いに加担しており下っ端は特にこの戦いの前線に駆り出され生き残りは少ないが上の方は残っていた。
根倉に関してはルロイの兵士たちが調査していてそれを元にしらみつぶしに当たり五つ目の隠れ家であるモノイエ方面の洞窟に行くと丁度逃げるところに出くわし鬼童丸とベオウルフさんと共に一網打尽にする。
ルロイ市のモノイエ側にある刑務所で彼らを隔離して監禁した。今後経済面も落ち着いてきたら今回の騒動の詳しい経緯を市民に伝え、彼らの処罰も決める。
ギブス市とは同盟を結び統合はしないとも直ぐに発表し両陣営の不安を解消した。向こうに行くまで知らなかったけどギブスは交易品なんかを見ると職人さんを増やしてそれを元に色々開発した方が良いんじゃないかと思いそれも提案。
「カジノの運営についてはどうする?」
「これまで通り市の運営で良いでしょう。ただ不正が無いように皆で監視していかないといけませんね。ディーラーなどにはこれまで以上に厳格な決まりを護るように伝えそれに従えないもしくは違反で永久にカジノには近付けない様にするとか」
「人間が人間に完璧を求めるのは土台無理な話でがあるが……ここは俺様に任せて貰おう」
イザナさんは不敵に笑うと部屋を出て行ってしまう。どんな手を思いついたのかは知らないけど楽しそうで何より。
「カジノは残さんとダメか」
「そうですねもう根付いて久しいですから無くすのは難しいでしょう。ただイザナさんなら何か良い手を思いついてくれますよ」
ガノンさんは肩落として書類にサインをし続けた。ガノンさんがカジノを嫌がるのも分かる。ルロイ市の犯罪を見ればそうなるのも無理はない。
何しろほぼほぼカジノに入れあげて素寒貧になったので強盗を働いたとか腹いせにとかそんなんばっかりだ。
残念な話ルロイには今カジノ以外に魅力的なコンテンツは無く他から訪れる人から稼ぐにはカジノが一番良い。
これを民間に任せると妙な人間たちの溜まり場になりかねないので市が運営していた。個人的にはカジノをする内容とかを少し変えられないかなとも考えている。
賭け事の景品を変えるとか一応幾つかの案は持っているのでイザナさんに後で提案して見よう。
財務整理をしながら可笑しな点があれば経理に戻し問題無ければ予算委員会へ回すと言う作業をしつつ新たな事業計画に関しても目を通し良しあしを判断する。
未処理の量の多さから見ても市長が追い詰められていたのが分かった。ギブスが落とされる以前のものはしっかり処理されていたからだ。
とは言え今後それ以前に許可したものも調べて確認する作業が待っている。一体いつ寝れるのやら。
「おーし俺と鬼童丸は兵士たちの面談に行くぞー」
ベオウルフさんがゆっくりと椅子から立ち上がり鬼童丸に手招きする。それに対して恨めしそうな眼をしながらも付いて行く鬼童丸。
「アタシらはなんとかなるからそろそろ男性陣は寝たら?」
「そうだねぇそうしようかなぁ」
もう力なく返事をしてしまうくらい実はボロボロである。この部屋に缶詰めになり動かなくなったのでマシかと思いきや睡魔が大群で押し寄せてきて堪らない。
「ほら、そこの絨毯のところで寝転がると良いのじゃ。何か用があれば起こすのじゃ」
「ああ……」
大理石の上に敷かれた厚みのある絨毯がふかふかのベッドに見えるくらい厳しい状況だけど僕が率先して寝る訳にも行かず何とか堪えているとガノンさんが何も言わずにツカツカと歩いて行ってそのままごろんとし、数秒で寝息を立てた。
ああ羨ましい気持ち良さそうあれで七時間くらい寝たら今までで一番気持ち良く目覚められそうだと考えるも頭を振り仕事に戻る。
それから一日後、ガノンさんが生きて来て一番気持ち良く寝れたし起きれたと言う羨ましい感想を聞いた後で睡眠の話になり、イトルスやルロイの兵士たちからも寝て貰わないと逆にこっちも寝辛いと抗議が来てしまった為ローテーションで睡眠を取り始めた。
僕は一番最後に皆に後は任せて眠りに就くべく近くに用意して貰った宿へと向かった。観光客用の宿なので値段も高く内装などもかなり豪華だ。何よりベッドが気持ち良さそう。
その気持ちの良さそうなベッドに飛び込むと自然と目を閉じてしまった。枕とか掛ける物とか見ようとしたけど自分の力では開かないくらいにくっついてしまう。
そして良い弾力の布団へ沈みながら底なし沼に落ちる様に眠りに就いた。
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