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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
沿岸地域統一編

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イザナさんとルロイの嫌な話

「まさか心当たりがないとでも言いたいのか? ブリッヂス東からナギナミまでの航路整備の為の原住民族との交渉や費用など事務作業をほぼ放り投げてこっちに来たのを忘れた訳ではあるまいな? その上一身上の都合とだけ書いた紙を首都に送り付けた。あの後俺様とシブイがどれだけ対応に追われたか分からないはずは無いと思うが」


 皆の視線がイトルスに向く。それに対して苦笑いして誤魔化そうとするもマリアンヌさんに襟首を掴まれて出て行ってしまった。


「まったくどうしようもないな最近の若い奴は」

「いやイトルスは元々僕が強引に引き入れたので……」


「だとしても、だ。受け入れて配下になったのなら全うすべきだと思うぞ? まぁお前が生きているだろうとは思ったがああも大々的に知らせられると居ても立っても居られないのは分かるが」


 イザナさん曰くルロイが蜂起する前どころか僕がルロイに来た当たりから市長や船長によってギルドを通して情報がもたらされそれがドンドン広まって行き蜂起する頃には僕を材料にソウビ王の元に交渉の使者が訪れていたらしい。


それを聞いて頭痛がした。まさかそんな動きをしていたとは……想像以上に酷いなぁ僕を餌に戦力をねだるなんて。


「まぁそんな輩とソウビ王が交渉のテーブルに着くはずもなくルロイの使者が粘っている内に開戦しルロイとギブスは分かれお前はこちらに所属するとなり使者は逃げ帰った訳だ」

「ソウビ王は聡明な方ですからね僕を餌としてぶら下げるような交渉の始め方をするような相手では良い条件で兵を借りるなんて無理でしょう……それにしても何も知らないところで利用されるのは気分が良いものじゃないですね」


 利用するだろうなと思った頃より前から利用されてたのは流石に不快でしかない。これまでルロイ市長たちには多少申し訳ない気持ちもあったが全部吹き飛んだ気分だ。


それにソウビ王に合わせる顔が無い。元々無いが更になくなってしまった。イトルスの行動を厳しく注意できる立場じゃないな。


「兎にも角にもお前の名前は広く知られた訳だ。恐らくカイビャクの全域にも知れ渡っているだろう。新竜神教(ネオ・ランシャラ)という受け皿も作ったのに勢いに乗って攻めないのは何故だ?」


 イザナさんの問いにこれまでのいきさつを話すと顎に手を当てて少し俯いた後で


「なるほど俺様が来たのは丁度良いタイミングだったと言う訳だな」


 と納得したようだ。どういう意味なのかと問うと当然ながらカイテンもカイビャクに対して例の乱のお返しをしたいとずっと思っていてその機会を窺っていたからだと言う。


僕が生きていてカイビャクに入り東側を抑えたとなるとカイテンとしてもお返しをする為具体的に具置く時期を検討したい。


但し動くとなれば確実にお返しが出来るというある程度保障みたいなものが欲しい。そこでイサナさんを派遣しようとなったようだ。


でこちらとしては指揮官が不足しているのでタイミングとしては良かったと言う。


「俺様はイトルスと違ってしっかり仕事はこなして来たし面倒ではあるがちゃんと退職願いを出して来たのだ」


 フフンと鼻で笑うイザナさん。これはソウビ王たちに了承をしっかり得ずに出て来たなと思った。イトルスとの違いは仕事をこなした点と一応対面で退職願を渡した点かな。


僕としてはもうこれ以上潰れる顔も無いので有難くイザナさんに協力してもらう。エルフの里もブリッヂスも安定していてテグーさんやミズオそれにミズリュウたち若手の蜥蜴族とアルミたちエルフの里の若手が力を合わせて発展させているので心置きなく出て来たと言う。


「まぁあちらの心配よりこちらが今は重要。先ずはあるだけの資料を俺様に見せて貰おうか」


 クラバさんたちにも協力してもらい鬼童丸や美影も交えて今のギブスの現状を知ってもらう。戦力的には多少回復してはいるものの当然数は少ない。


ただ新竜神教(ネオ・ランシャラ)と言う信者たちが望んでいた形での受け皿である為統率は取れている。


今のところ指揮官がイトルス含めて四人。ルナと玉藻には僕のバックアップをしてもらいたいので僕の隊に入って貰っている。


経済の面ではガノンさんや農村の人たちの協力もあり自給自足の面が強化し始め、交易の面ではギブス名産の野菜や海で獲れる魚に工芸品で交易し収入を得ていた。


戦術面では北ルートを調査しここが通れば意図的に竜騎士団(セフィロト )を引き込んでなるべく多く叩いておきたいと考えている。


「ふぅむ」


 イザナさんは椅子に座り地図や資料に視線を落としながら人差し指でトントンと突いていた。その地点は隣のルロイだった。


確かにそこは皆が問題があるなと思っている場所ではある。後ろから刺してくる可能性も否定出来ないが僕らがお世話になった町でもある為攻め辛い。


「お前がそういうのをすんなり飲み込めるような男ならこんなに遅い訳が無いのは分かっている話だ。だがな、一度振り上げた拳は下ろさねばならぬのが道理。何より市民が困る」


 分かっているだろうという視線を向けられて頷く他無い。現在ルロイとギブスは緊張状態にあるのは間違いない。


向こうには向こうの言い分があるだろうけどこちらにはこちらの言い分がある。このまま留まるならそれも良いけど僕らが振り上げた拳を下ろす先は決まっていた。










読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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