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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
新領域を目指して~放牧地区域~

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放牧地の朝

「貴様見えているのか」

「お陰様で」


 じいさんが時代劇好きで、特に柳生武芸帳を見せられていたしごっこ遊びもしていた。チート能力もあって実現する新陰流の徒手技術、無刀取り。目の前の男は目を開けずに動かずに居たけど、刀っぽいものは僕の手から逃れようと気を増している。


「させるか」


 ラティが背後に回ろうとするのを遮る為体をずらした一瞬、力もずれたのでそこを逃さず一旦ずらそうとした方向へ大きく振り直ぐに振り戻した。


「ラティ足を!」


 体を泳がせ地面に叩き付けられた相手の足を縛るようラティに頼む。


「己っ!」


 刀っぽいものから手を離し入ってきた穴から逃げる男。


「ラティ、マオルさんとマミさんを頼む」


 僕はその後を追って直ぐに出る。暗闇の中でも音とあの気配は目立つ。


「何の心算だ?」

「つもりも何も。逃がす訳無いだろ? どうせこっちは獲物を持ってるんだ。後からまた襲われるのはダルいからケリを付ける」


「餓鬼が舐めた真似を」

「そう思うならいつでもどうぞ」


 会話しつつも山道を駆け上がる。木を避け岩に飛び乗り崖を駆け上がる。この偽侍言う割には全く襲い掛かってこない。こっちは幾ら煽られても効かない。ただただ追い詰めるのみだ。


「なっ……」


 暫くずっと追いかけっこをすると、そこはマオルさん家。要するにぐるっと一周して戻ってきたって訳だ。


「お兄様お帰りなさい」

「どうする? まだやるなら何時まででも付き合うけど」


 向こうは肩で息をして薄ら額に汗しているけどこっちは全く無い。それに今度はラティも居る。


「捕らえてはどうかな?」

「完全に弱るまで手は出さない主義なんだ」


 あからさまに挑発だと分かるように鼻で笑ってそう言ってみる。それから再度鬼ごっこはスタート。と言っても一定の間隔を空けて僕たちの知る範囲外に出ないようにこちらでコントロールして走り続けた。やがて夜は開けマオルさんたちは洗濯物を干したり、動物たちを外に出し始めた。


偽侍はそれで逆に火が付いたのか冷静な仮面を捨て去り何をしてでも逃げようと懸命に走った。でも時すでに遅し。元々体力に差があるのに消耗後にそれをやれば長い時間持たないのは自明の理だ。


「さてどうかな」

「もう息を吸う以外出来ませんわね」


 何回目かのスタート地点来訪と共に前のめりに崩れる偽侍。僕とラティは二人で偽侍を縛る。弓反り状態にして両手両足を縛り、更に親指同士を縛った。


「……お兄様って案外残酷何ですね」

「なんでよ」


「まぁこいつはこの男自体に興味ねぇからな。逃げられるのも面倒だから確実に叩き潰す。それが出来るって踏んだから鬼ごっこしてやったわけだしな?」

「知ってる場所なんで。知らない場所でこんなのしませんよ負けるから」


 そう言うとマオルさんはガハハと笑いながら偽侍を引き摺って小屋に戻った。それから四人で食事をし、馬車で皆でギルドまで移動する。


「あらお帰りなさい」

「おう戻ったか」


 ギルドに入るとミレーユさんとギルド長が居た。昨日の話を二人にする。


「そうか。ならその男は町に引き渡そう。この白いのはうちで預かる」

「良いんですか?」


「一応ギルドは自然保護もやってるのよ。必要以上に森や山を荒らさないように。自然環境も大事だからね」


 それを聞いて僕は安心して白い狼を預けマオルさんたちは町から警備の兵を数名貰って帰宅した。獲物は僕が持っていて良いらしい。ギルド員が町の役場に連絡し、リュクスさんが引き取りに来て精査に入る。大よそ事件を把握したら報酬が出る。ギルド査定は当然プラス。内容によってはランクも上がりそうだ。今はブロンズ五という初級レベル。一の時は雑用で、ヴァンパイアの件を解決して一気に上がった。


「やぁおはよう」


 次の日。リュクスさんがギルドで待っていた。精査が終わったのかな。


「おはようございますどうでした?」

「駄目だね。あれは口を割りそうも無い」


「となると不明のまま終わりですか」

「そうならざるを得ない。隣町なのか右斜め北方向の町なのか分からないが、境を越える可能性があるしそっち側で起きた問題の可能性もあるから突っ込めない」


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