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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
沿岸地域統一編

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ギブス戦前日

 がははと笑いながら席を立ちお供を連れて引き上げて行くイルヴァーナさん。ここで攻撃を仕掛けるには周りの兵士を巻き込んでしまうので不味い。


確実に僕を挑発しているのは分かるけどここは手を出したら駄目だ。


「ガノンさん大丈夫ですか?」

「問題ねぇよ。あれが俺がどうしても勝たなきゃならん理由さ。育児の失敗の責任を取らにゃならん」


 ガノンさんはイルヴァーナさんの去って行った方向を睨みながら腕を組む。例え刺し違えてでも倒すと言う覚悟を感じる。


市長が来た時に相手の名前を言わなかったのも市長が突っ込んで行く恐れがあったから口にしなかったんだろうか。


「イトルスは第六騎士団長があんな感じで交代したのは知ってた?」

「話には聞いてました。まぁそのお陰もあって僕やナイトル、それにデュマスロス兄弟が代わりに騎士団長になったので恩人なのかもしれませんけどね」


「例の扉の話は?」

「それも同じです。実際ブラヴィシ様には選ばれた者しか会えませんので行き方も分かりませんしもっと言えばあそこに本当に居るのかどうか……」


 それは困った。首都に行って教団本部に乗り込めばブラヴィシを確実に捉えられると思ったのに常時何処かに出歩いてるとしたら竜神教(ランシャラ)を倒しても留守とか有り得るし笑い話にもならない。


「確実に居るって時は無いの?」

「勿論あります。竜神教(ランシャラ)の日がそれに当たりますから閣下をお連れするならその日と決めています」


 まぁイトルスが分かってない筈は無いかとは思うものの扉の話とか初めて聞いたし確認はしておかないと駄目だなとは今回の件で思った。


急いで市役所まで伝令を出し市長の判断を仰ぐ。ガノンさんの意向でイルヴァーナさんの名前は出さずに。


暫くすると船が戻って来て行けるようだと連絡を貰ったのでもう一度伝令をお願いし襲撃の話を伝えて貰う。


 イルヴァーナさんの性格を全て知っている訳では無いけどあの感じからして正面から突っ込んでくるのは間違いない。


僕らとしてはありったけの勢力をここに総動員して耐え忍びつつ海側からの攻撃で揺さぶりイルヴァーナさんたちを倒してギブスを潰したい。


不安要素としてはやはりデュマスロス兄弟と使役しているゴブリンとコボルドだ。どれだけ補充で来たか分からないけどただでさえ強そうなイルヴァーナさんと第六騎士団が来るのにあれの相手もしなきゃならないと思うと中々厳しい。


ブリッヂス戦やエルフの里戦を優に超える厳しさであり今回は正真正銘の劣勢。これを覆すにはやはり久々に変身して一気に出鼻を挫くしかないかもしれない。


僕らの後にはもう誰も居ないからここを抜けられればルロイは御終いだ。そうなればカイビャクでの抵抗の灯が消えてしまう。


「まぁイルヴァーナは俺に任せな。どんな手を使ってでもあの野郎は俺が倒す。そうでなきゃかみさんに顔向け出来ねぇからよ!」


 豪快に笑うガノンさんに対して僕らは小さく微笑む。親子の間に何があるかは僕らでは分からない。ガノンさんは良い人だし出来れば後方で待機して欲しいけど親子の問題では僕らに止める権利は無い。


ここで戦う方針としては変わらないが向こうは明日と言ったので最小限の人数を常時シフト制で交代させつつそれ以外は家族の元に一旦帰らせたり独身は娯楽に興じる許可を出した。


あんな自信満々な人が虚を突いたりするとは思えないしガノンさんもそれは無いと断言してくれたので思い切ってそう言う指示を出した。


最後の別れを済ませる時間は少しでもあった方が良いと思う。生憎家族に恵まれなかったので僕が同じ立場でそう言う許可を貰っても何もせずに過ごすだろう。


そう言う側面もあったので家族の元に帰る指示と娯楽に興じる許可の二つを出し誰でも過ごしやすくなるように気を遣ってみた。


「おめぇらは行かないのか?」

「当然行かないですよ。死ぬつもりもありませんし別れを言う相手も居ませんので」


「親が居るだろ?」

竜神教(ランシャラ)に入る時に済ませてますから。ガノンさんは?」


「おらも必要ねぇな。息子とは方針の違いで話したくも無いし孫も興味が無い」


 ガノンさんはそう言うけどルナや玉藻の面倒を優しい顔で見ていた姿からして孫に興味が無いは嘘だろう。


恐らく可愛い孫の顔を見ると決心が鈍るからそう言って退路を断っているんだろうなと思った。


「何にしても皆には悔いのない一日を過ごして欲しいですね。僕らはただ敵を待ち構えるのみ」

「大将がこんなところに居たら休めないんじゃねぇのか?」


「寧ろ居た方が気軽に休めるかと思いまして。自分たちより強い人があそこにいるからって」


 僕の答えにガノンさんは楽しそうに笑う。相手に対しての効果としては抜群にあると思うんだよな僕がここに居るって言うのは。


それにもうルロイの寂しい町を見るのはキツイから行きたくないというのもある。今度見る時は賑やかな町に戻った時が良い。


「おはよう、何か随分スッキリしてるわね」

「おはようなのじゃ!」


「ぐああ……」


 ルナと朝から元気な玉藻、それに眠たそうなティアがテント前まで来たので改めて事情を説明する。


「いよいよギブスとの直接対決ね」

「うむ! 童も頑張ってサポートするのじゃ!」


「ぐああああ!」


 勇ましい三人と共にのんびりとテント前で過ごしたり散歩したり村の畑で作業したりして過ごし、夕方にはガノンさんとイトルス、夜には僕らが借り上げた民家で就寝する。


皆が目を覚ますのは開戦の少し前。兵士に声を掛けるよう頼み夜勤の兵士はそのまま市へ下がるよう指示を出しておいた。












読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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