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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
沿岸地域統一編

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神魚竜との話し合い

「あっ」


 あまりの寒さに手が悴んで操作が一瞬遅れた隙を突かれてウネウネに噛みつかれてしまう。船の先端にルロイ海老がぶつかりその場でぐるぐると船が回って停止した。


暫くするとまたバシャバシャ暴れ始めたのでほっとする。どうやら先端にぶつかった衝撃で気を失っていたようだ。


「はぁ~やっと見えなくなったのじゃ……」

「ホント一安心ね」


「二人とも畑でミミズ見てるんだから大丈夫じゃないの?」

「それとあれとは話が別なのじゃ」


「畑のミミズは土の為に良いけど巨大化したミミズとか絶対見たく無いわ」


 まぁ確かに大きくなるとグロテスクさが際立つよなぁ。そう言えば最初にこの世界に来た時も巨大ミミズを見た。ルナたちがアレを見たら気絶では済まないかもしれない。


「で、神魚竜はこの辺に居そうか?」

「あーっと……気配は近い感じじゃ」


 僕らは周囲を見回すも大きな波も無く穏やかな海が広がっていて僕らがこの海では一番五月蠅いようだ。


「取り合えずここからは漕いで進もう。三人とも神魚竜を探すのに専念してくれ」


 用意されていたオールを海に出して船の真ん中にある板に足を掛けて漕いでいく。前に遭遇した位置に辿り着いたものの動きが無く更にギブス方面へと進めた。


餌であるルロイ海老がウネウネを食い尽くすのも時間の問題だ。そうなったら慎重に縄で引っ張らないと縄が切れるか体が二等分になるかどっちかだ。


船長は釣り竿もそうだけど頑丈な物を用意しているから縄が切れる心配が無いけどそうなるとルロイ海老が等分されるのは間違いない。


幾ら何でも亡くなったルロイ海老を土産とは流石に言えない。何とか早く出て来てくれないものかと思いつつ漕いでいくと、尖った岩の先が出ている場所に着く。


「ぐああ!」


 船でのんびり寛いだり僕の後頭部にしがみ付いたりしていたティアが声を上げて僕の頭を小さな掌で叩く。


何かあるんだろうと思って素早くオールを上げて速度を落とすと、尖った岩の戦端が出ている辺りが盛り上がり水飛沫を上げながら例の竜の顔が現れた。


―何か用ですか? 人間―


「こ、こんにちわ御久し振りです。お土産どうぞ」


 びっくりしたのとそろそろルロイ海老が限界だったので早口で言うと竜の顔は水の中にもう一度入り暫くするとまた出て来た。


―捧げものとはとても礼儀正しい人間ですね―


 そう聞こえた後で口からこちらに何かを吐き出した。船の上に着地したのは縄だった。無事食べて貰えたようで何より。


「実は今日は御願いがあってきました」


―願い?―


 今ルロイはギブスから宣戦布告を受けて戦争状態となり劣勢であり海から攻められると形成を変えられるかもしれないので協力して貰えないかと伝えると暫く微動だにせず風と波の音だけが流れて行く。


「ど、どうでしょうか」


 堪らず声を掛けると神魚竜はこちらに顔を近づけて来て僕らの周りをぐるっと回る。動くたびに水面が大きく揺らぎ神魚竜はかなり大きいんじゃないかと感じた。


―良いでしょう今回のみ許可します。ルロイは昔から私に対して有効的な民ばかりでしたが、ギブスは何故か全員が私を目の敵にしていて今も執拗に攻撃を仕掛けくるので彼らが無くなるのであれば私としても助かります。通る際は必ずルロイの旗を見せ供物を置いて行くように―


 再度正面で僕らと見合いながらそう告げてあっさり海の中へと戻って行った。僕らがほっと胸を撫で下ろしていると船の下が盛り上がり、ジェットコースターのように上から下へと勢いを付けて滑って行く。


水飛沫に塗れながら波に乗ってあっという間にルロイの海岸に到着。その後暫く高波が続いたようだ。


僕らは船を仕舞いに行きつつ船長に詳細を伝えると、契約書がある訳じゃないから一度少数で試してみると言う。


僕らは後はお任せしますと告げて直ぐに境界線へと戻りガノンさんとイトルスにも報告をした。


「お手柄だよ。ヘンリーの奴は聞こえないだろうが、俺らの世代でこの土地の者なら誰でも神魚竜と少なからず会話した覚えがあるものさ」

「何かの切っ掛けで喋るのを止めてしまったと?」


「まぁな。俺ですらカジノ建設推進した息子ともう碌に会話すらしないんだ。そう言う感じだろうな」


 なるほどね。日本でも神社にお参りしたり除夜の鐘を排除したりして古い習慣が無くなって行けば神秘が欠片も無った感じはする。浪漫とか不思議とかが無くなり現実のみという遊びが無い世界は何処か窮屈に思う。


「しかし今更ですが閣下の仕事には敵いませんよ。これでルロイが海から攻め上がれたら閣下の御蔭以外の何ものでもありませんから」

「いやまぁそれはどうでも良いかな。今回だけだしこの戦い以後も通りたいなら他の人が交渉するしかないんで勘違いしないと良いなとは思うけどね」


「ヘンリーですら半信半疑だからな。まぁおめぇの仕事は完璧にこなしたんだ後は奴らの心がけ次第。そこを気に病む必要は一切無いぞ? おめぇさん自身に欲が無いようだからそれだけは言っておく」


 苦笑いしながら頷く。ガノンさんも何となく嫌な予感はしてるんだろうなと思った。この戦いの後もルロイ側から行けると勘違いして交渉もせず行き来するだけでなく、海を汚すなどして神魚竜の逆鱗に触れる者たちが現れるんじゃないかって言う予感を。










読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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