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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
沿岸地域統一編

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夜戦一回目の終わり

「己許さんぞ野上康久! 今度こそその首を」

「お前も鍛錬を怠って信仰を取った口だろ? と言うかお前は元々信仰によって第十騎士団長に取り立てられたんだったな。なら当然か」


「行くぞ者ども! 連中を殺し尽くせ!」


 僕の言葉に青筋を立てつつも冷静に指示を出しコボルドを差し向けてくる。その間にデュロスとゴブリンは下がってしまう。


こちらは連戦になるものの士気高揚しているのでまだ大丈夫だろう。僕はトゲこん棒を持つデュマスを相手にすべく前に出る。


「コボルドども! あの男に集中せよ!」


 僕の身長の腰より少し高いくらいの小さな狼の顔をした二足歩行の生き物が剣や斧を手にこちらに襲い掛かってくる。


デュマスは自分は兄たちよりも劣っているのを自覚しコボルドをけしかけて来たのは凄いなと思う。残念ながら強制的に従わせているからなのか若干コボルドの能力は落ちており、僕は青白い炎を纏いながらそれらを高速で拳を突き出して迎撃し燃やし尽くしていく。


元々狼に近く炎が得意では無いというのと初めて見る青白い炎で燃える仲間を見たコボルドは足が竦んでしまい全体の動きが鈍くなる。


少しの間睨みあっていると僕らの後方から美味しそうな肉の焼ける匂いが風に乗ってやって来た。竜神教(ランシャラ)の信者からして下っ端はツケでご飯を食べるレベルなのに使役されているコボルドが裕福な食環境にある筈は無いと踏んでガノンさんたちにお願いして見た。


暫くの内はそうでも無い顔をしていたものの次第に唾を飲む音が周囲に響くほどになり最終的には我を忘れて飛び込んでくるまでになる。


僕はそれを拳を叩き込んで燃やし更には青白い炎自体を投げ放ち燃やしていく。味方の兵士たちも僕に続いて攻撃をしていき昨日と同じ位置までラインを押し上げて行く。


「糞ぉ!」

「君ら兄弟は糞が好きだなぁ。分かってると思うけど君ら兄弟が鍛えて新しい技を繰り出して来た方が何倍も怖かったよ。援護感謝」


 ついにデュマスが剥き出しになったところであっさり間合いを詰める。トゲこん棒で薙ぐもそれもあっさり掻い潜り右拳を大きめに引いてから思い切り鳩尾目掛けて右足を出すと同時に突き出した。


木の一つに激突して止まり前のめりに倒れるデュマス。彼が率いて来たコボルドたちは指揮官を失ったにも拘らず飢えを満たす為突っ込んで来たので兵士たちと共に撃退していく。


何とか終えた頃にはデュマスの姿は無かった。残っていたゴブリンたちと共にデュロスが弟を連れて引いたのだろう。


「食事班、悪いけど西の見張り櫓の様子を見て来てくれるか?」


 指示を出して余力のある食事班に偵察を依頼し現場では兵士たちの治療を開始。症状が重い者は町まで運び病院に収容した。


「流石に被害ゼロって訳にゃいかねぇなぁ」

「確かに……ただ被害は思っていたより少なくてほっとしてます。ガノンさんとイトルスの御蔭です」


「ですが問題は何も解決していないどころか大きくなったと思います」


 イトルスの言葉に僕もガノンさんも頷く。今回の結果を受けて勝つという経験と実践そのものの経験を増やし士気も高揚はしたものの被害も出ている。


問題は口にはしたくなかったので言わなかったけど、デュマスロス兄弟とゴブリンとコボルドは竜神教(ランシャラ)にとっては所詮捨て駒だという事実だ。


ハッキリ言って兄弟は連敗続きで竜神教(ランシャラ)からの信用があるようには思えないし実験的にあの首輪を人間に付けてゴブリンやコボルドとリンクさせたとしか思えない。


あれらを無理やり従わせる為にリンクさせるなんてリスクが無い訳が無い。推測の域を出ないけどあの二人の強烈な信仰心によってそれらを封じ込めている気がする。


「今後あの手を使って更に本体まで押し込んでくるとしたら中々厳しいなぁ」

「ですね。ゴブリンは意図的に量産できますし変異体をも拘束出来るとしたら本体より厄介かもしれません」


 元々人数が居る上に省エネまでしてくるなんてホント凄い組織だよ竜神教(ランシャラ)は。仮に弱点的なものがあるとすれば距離と実戦経験の少なさくらいか。


「こうなるとやっぱ海からの攻撃をかなり当てにしたいぜ」

「確かに。それと出来れば他にも援軍が欲しいですね。閣下の活躍で二度竜騎士団(セフィロト )を退けたという情報をあちこちに流せば効果あると思うんですが」


「あちこちに流すのはちょっとなぁ……」

「もう今更隠したところで意味無いですよ。それこそ奇跡の生還! とか銘打って堂々と売り込みましょう! 目的を果たす為ですから腹を決めて下さい」


 ばつが悪いんだよなぁ死んだふりして全て投げうって出て来たのになぁ。


「取り合えず流すにしてもその奇跡の生還って感じの路線で触れ込んで行きましょう。記憶喪失で流れ着いたーとかそんなんで」

「確かに記憶喪失だったって方が奇跡の生還ってタイトルには合ってるんじゃねぇかな」


 ……何やら皆さん編集会議でも始めたかのような感じになって困る。出来れば主人公の居ないところでやって頂きたいなぁ。


「それにしてもこのままだとここが拠点になりそうですね……家でも建てちゃいましょうか村に戻るのも面倒だし」

「この状況がいつまで続くかだな。あっちも宣戦布告してきたくらいだこの次は本気で来るだろうし無駄になるだろう」


「テントと寝具を増やす方向で考えましょうか。何だか町も避難に時間が掛かっているようですし」













読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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