白き狼との遭遇戦
早速カウンターで依頼を受ける。町からの調査依頼になっていて、評価に応じた報酬と記されている。偶に悪質な場合、簡単な依頼に見えて実は強敵が前にいて達成出来ないとかもありその時はギルドが注意勧告を出し依頼主にペナルティが与えられ、積み重なると出禁になる。なので大抵の場合は報酬の他に注意書きするよう指導されていた。
町の場合税金で依頼を出しており高額な報酬は期待出来ない。なので皆あまりやりたがらない案件だ。戦うにもお金が掛かるし、怪我をしたりすれば足が出てしまう。
「あらいらっしゃい」
「マミさんこんにちは!」
僕らは依頼を受けて直ぐ放牧地帯へと馬車を走らせる。ヴァンパイアの件のご褒美としてヴァンパイアの時に使った馬車をギルド長から頂いたので、移動がとても便利になった。荷物も決まった物だけなので準備も直ぐ出来たしお昼少し過ぎに到着した。
「二人ともいつもありがとうね」
「今回も楽だと良いんですけどね」
綺麗な長い金髪を後ろで結び、黄色のワンピースに白のエプロンと三角巾を付けた四十代位の女性が出迎えてくれる。ラティはマミさんに抱きついて挨拶した。僕たちはヴァンパイア騒動後、町長の依頼で力添えを頼まれて以来、マオルさんとマミさんと交流を持っている。
ここは町にとって外敵からの監視所の一つとなっているので、重要な場所らしい。らしいと懐疑的なのはその割には人員も少ないし賃金も少ない、更に施設らしいものもなく夫婦の家しかないからだ。
「おう相変わらず早いな」
「御呼びとあらば。早速潜って来ます」
「気をつけてね」
「夕暮れまでには帰って来いよ?」
「はーい」
馬車をマオルさん夫婦にお願いし、僕たちは装備を持って山に入る。風は冷たく植物も疎らでどこか生物の侵入を歓迎しない感じがした。
「お兄様」
ラティの声の前に僕はボウガンを地面において弦を引いた。何かが居る。遠くからこちらを見ている気配がする。ラティは僕の背中に自らの背中を預け、後方へ向け弓を構えた。そのまま時間はゆっくりと流れる。互いに息を殺して相手の出方をジッと待つ。個人的にずっと忙しかったので、こういうゆっくりとした時間は悪くない。
「グアッ」
木の陰から何かが出てきたので弦を引いてすぐさまボウガンを担ぐ。その間ラティが前方へ向け矢を放った。その生き物は木の陰から木の陰へ移りながらこちらへ近付いて来る。流石動物だとても早い。あっという間に僕に飛び掛かってきた。視界に映ったそれは白くて大きな狼だった。一旦体当たりをした後距離をとった。一気に仕掛けてこない理由は何だ? 余裕か?
「お兄様、地面」
そう言われてさっと視線を向けて戻す。一瞬映ったのは血痕だった。
「あれが例の毛の奴か」
「怪我をしているのに襲い掛かってくるなんて……」
ラティと顔を見合わせる。どうやら彼らを襲ってる奴が居るようだ。しかもそれは人間。そうだとすればまた襲われると思って僕らに攻撃してきたと考えるのが妥当だと思う。
「あの怪我では何れ捕まってしまうでしょう」
「致命傷ではないんだな? 治す方法は?」
「魔法なんてありませんから、怪我の場所を塞いで薬草を当てて自らの治癒力に任せるしかありませんわ。助けますか?」
僕は頷く。助けると言ってもこの山で何かが起きていて、それを解決するのにあの狼が近くに居てくれると話が早いかもしれないからだ。
「わかりました。先ずは捕らえてこの縄で縛りましょう」
「了解」
ラティは僕の考えに理解を示し同意してくれたようだ。そうなれば話は早い。お昼過ぎているので時間的にも深くまで潜れない。今日は捕獲で一旦引き上げる。
「せりゃっ!」
一旦背負ったボウガンを下ろし、近くの木に向けて弾を放つ。暫くすると再度狼が仕掛けてきた。僕はボウガンを置いたまま迎え撃つべく突っ込む。狼は脇に飛び地面を蹴って飛び掛かってきた。それを読んで左手の甲を開いての左前足に素早く当てそれを掴みながら回り込み羽交い絞めにした。師匠であるギルド長との鍛錬の成果を生かせてちょっと嬉しい。




