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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
沿岸地域統一編

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名も無き戦士との語らう

 右拳を引いた後気合を入れて高速で右拳と右足を突き出ししっかりと右足で大地を踏みしめながら右拳で気を前方に押し出した。


「に、逃げろぉおおお!」


 デュマスロス兄弟は体を張って風神拳を推しとどめようとしたけど叶わず、青白い炎の渦を纏った風は木々を押しのけ後退しかけていた兵士をも巻き込んで上空へ吹き飛ばした。


「あれまぁ……」


 自分でもその光景に驚く。これまで殆ど一対一で使用していたけどここまでの威力は無かったように思う。


自称孫悟空さんと手合わせし基礎からやり直して調子を戻してから初の全力風神拳を今打っておいて良かった。


まだ色々やってみたい形もあるしこの打ち方力の入れ方ならこれくらいの威力が出ると分かれば調整も可能だし場面に応じた使い方も考えられる。


「どうする? 追撃するか?」


 範囲外の下がっていたギブス側の兵士と交戦していたガノンさんが戻って来て僕に訪ねる。どうやらそちらも今の一撃を見て逃げてしまったようだ。


深追いは危険だと判断し兵士を纏めて直ぐに引いて来たのは流石だ。僕もその判断が正しいと思ったのでそれに合わせる。


「よしましょう。こちらが相手より圧倒的に強い若しくは互角なら打って出ますけどそうじゃないですし、市からの伝令を待ちましょう」

「皆も警戒しつつ守りを固めよ! 見ての通り我らにはこんなにも心強い守護神が居るが怠るな! 我ら一人一人の心掛け忠誠心で勝利が決まるぞ!」


 イトルスの檄に兵士たちは歓喜の雄叫びを上げて答える。俄然こちらの士気が上がり相手側は防衛ラインを著しく下げた、と言うか見えるところに誰も居なくなってしまった。


ゆっくりとテント前に戻り座って三人でコーヒーを飲んでいると伝令が戻って来て市からの要望を聞くと市は追撃しないよう求めて来た。


元々戦力が少ないので僕らだけ突出しても補給線もままならず戦支度もまだ万全ではないので時間が欲しいと言う。


「時間なんて幾ら掛けても足らないでしょうに……」

「ちょっと危険だな。元々劣勢なのに時間を掛ければ相手の方が有利になるべな。タイミングを見計らってこっちから仕掛けねぇと勝ち目が無くないか?」


 ガノンさんの意見は最もだ。率いた兵士たちを見た感想としては悪くはないただそれだけだと言う。


そうなると一気呵成に出たとしても返り討ちに遭う可能性が高い。装備にも練度にも精神面でも差がある現状ではやはり今のやり方で撃退を繰り返し兵士の精神面だけでも上げて相手に恐怖を与えて尻込みさせる策が一番マシかもしれない。


二人に話すと今のところそれが一番勝ちに繋がる可能性が高い道への一歩だろうと同意を得た。


「もう少し人材が居ればなぁ」

「それも幾ら居ても足りないべ? 今在る分で何とかやりくりせにゃ」


「お話し中失礼します!」


 用件を尋ねるとどうやらルロイの西、荒野との境方面から松明を持ってこちらに侵攻してくる者たちが居ると言う。


「包囲されているというのは忙しいですね」

「そうだな。ここはガノンさんとイトルスに任せても良いですか?」


「ああ構わねぇよ。娘っ子たちも安心して任せてくれ。命に代えても守るからよ」

「仕方がありませんからここに居て指揮を代行します。ですがくれぐれも無理なさらないよう」


 二人に任せて僕は兵士と一緒に町の西にある丘陵の見張り櫓へと向かう。こっちから来る勢力はもう一つしかないし率いているのはあの人だろう。


到着し現地の兵士に状況を確認するとこちらの見えるところまで来てそれ以上は進んでいないと言う。今はまだ夜だから奇襲をかけるなら待つ必要は無い筈。


となると答えは一つだな、と思い僕は単騎でその場所へと向かう。


「よう。今日は生憎の天気だな」


 まるで朝の挨拶のように気軽な感じで声を掛けて来た名も無き戦士さん。彼の言う様に今日はあまり天気が良くなくて雲で月が見え隠れしている。


「やはりこういう生態系がある星と言うのは何処も変わらないもんだな」

「……貴方もやはり」


「お前と完全に同じかどうかは分からないが似ているのは間違いない。記憶喪失にしていた方がここの情報を得やすいしな。妙な先入観を持つと面倒だし」


 似ているが同じじゃない……クニウスと似たような感じなのだろうか。


「まぁこの際ハッキリ言っておくがお前さんの敵では全くない」

「全くないんですか?」


「そうだ。今の時期は神隠と呼ばれる時期に入って女神との連絡も途絶えている筈だがどうだ?」


 僕は驚きを隠そうと必死に取り繕う。まさか女神様と連絡を取っているのも知っているだけでなく途絶えているのも知っているなんて。


「流石に星の位置だけはどうにも出来ないらしくてな。星を見て居れば分かる。今は恐らくどの世界もその星の神たちは地上に干渉出来ない時期に入った。何が面白くてこんな仕掛けをしたのかは分からんがね」

「貴方は一体……」


 転生諸々より神様たちの話まで知って居るなんて只者じゃない。本気で戦っても勝ち目があるかも怪しくなってきた。


「あまり詳しくは言えないが弟を探している。この星には残念ながら居ない様だが一応最後まで手伝いはするつもりだ。だがあくまでも手伝いのみでそれ以上は干渉するつもりはない」

「じゃあどうしてここに」


「砂漠の町はお前も勘付いていると思うが形成によってはこちらに付こうと画策している。今の状況ではルロイ、というよりお前さんに勝ち目はないのでな。一応前線指揮を任されている俺はそっちと適度な戦闘をしつつドルガの心変わりを待つことにした」














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