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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
沿岸地域統一編

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開戦の狼煙

イトルスは引いた槍を右手に持ち穂先をガノンさんに向けて振り上げると同時に左手で短刀を抜き放つ。


構わず突っ込んで来たガノンさんの穂先の側面に振り上げていた槍を落として地面に突き刺して当て、左足裏で自分の槍の柄を蹴って態勢を崩させる。


背中を見せる格好になってしまったガノンさんと短刀を左手に持つイトルス。勝負あったかに思えたけどガノンさんも短刀を引き抜き左足を軸足にして最速で体を回転させイトルスの方を向く。


「流石」

「おめぇもな」


 そう言葉を交わしてから改めて距離を取り短刀を仕舞って槍を構え直す。槍の突き合いも凄く互いの穂先がかち合い押し合ったり互いの突きを掻い潜りつつ突きを放ちながら間合いを詰めすれ違ったりと素人が見ても凄さが分かった。


「この辺でやめとこか」


 ガノンさんの言葉でイトルスも槍を止めて石突きを地面につけてから一礼する。周りから拍手と歓声が上がった。


呑気なもので相手側からも拍手と歓声があがっていたのでイトルスとガノンさんは手を上げて答えた後一礼して戻って来た。


「僕の手合わせを」

「おめぇとはやらねぇよ。相性が悪いし何よりおめぇの勇名を鳴り響いてるんだから爺を甚振るんじゃねぇ」


 そう言われてお断りされてしまう。勇名がどの程度鳴り響いているのか知らないけど何か僕も披露したい気持ちだ。


急な増員で焚火用の薪が足りなくなったと言う話が舞い込んで来たので早速ハルバードを呼び出して近くの木を切り倒していく。


そしてくべやすいような大きさにカットし皆に配給しようとするも何故か遠巻きに見ているだけだった。


「おいおいもう少し手加減してやれよ」

「急いで必要かと思って」


「それはそうですがあまりにも衝撃的な光景に皆固まっちゃったじゃないですか」

「自分の実力を見せたいのは分かるが味方まで引かせてどうする」


 そう言われてしょんぼりする他無い。他にアピールする方法も無いしと思っているとガノンさんとイトルスに追い払われてテントの前のテーブルに戻る。


二人は兵士たちに僕が処理した薪を配って行く。薪を供給で来たし良かったとしようと強引に自分を納得させて大人しく相手方を見張る。


僕の仕事を見てざわついているようで良かった。味方を震え上がらせるだけの効果しか無かったら指揮官失格もいいところだ。


「ぬおおおおおお!」


 夜中にデカい声が森に響き渡る。丁度良い眠気覚ましだけどこの声は嫌な予感しかしない。前の方を見ていると砂煙を上げ眠る森の動物たちを叩き起こしながら現れた筋骨隆々の男。


額に血管を浮き上がらせ口角は全開で吊り上がっているが目も吊り上がってて笑いながら怒る男みたいになってる。


金髪で鎧も肩当と腰当、膝当と靴以外はブーメランパンツ一丁と言うどう考えても可笑しな人が腰に手を当ててこちらを見つつ仁王立ちしている帰って欲しい。


「ここで会ったが百年目! 今日こそ貴様の命をブラヴィシ様に捧げてくれるわ!」

「もうやるの? 良いの?」


「はぁ!? 貴様と俺様がこうして顔を突き合わせたからには殺し合いしかなかろう!?」

「前にブリッヂスでも見逃したのに生きてるのは可笑しい」


 そう言うと雄叫びを上げた。何ならルロイに来る途中でも見逃した覚えがあるけど気のせいだったかな。


筋肉雄叫びマンこと竜騎士団(セフィロト )第九騎士団長デュロス君は気が済まないのかずっと雄叫びを上げつつその場に留まりながら天を仰いでいた。


そうすると何か降ってくるのか期待して待っていたけど何も無く、声が枯れたのか出なくなって漸く雄叫びを止めた。


相手の兵士もかなり離れたところまで逃げてしまいこちらとデュロス君で対峙している形になっている。


「貴様を殺す!」


 デュロス君の後ろから飛び出してきて鬼こん棒のようなトゲトゲしたこん棒を両手で引き摺りながらこちらに突進してくるこれまた刺々しい黒い鎧を着たデュマス君。


相変わらず瞳孔かっぴらいてて普段どういう生活をしているのか非常に気になるな、と思いながら突進を捌く。


「そいじゃあ開戦と行くかねぇ」

「伝令! 司令官が相手に襲われたと市長たちに伝えろ。相手によって戦闘の火蓋が切って落とされたと」


 イトルスの言葉を聞いて一人の兵士が馬に乗り町へと戻ったのを確認し僕はデュマスの相手を続行する。


「ルロイ軍は他の兵士に注意しつつ農村へ行かれないよう厚め守備陣を布いてください!」

「ちょっくら血の気の多いもんたちゃこっちゃこ! 爺と一緒に前へ出るべ! ルロイの人間の気合を見せたろうや!」


 二人がフォローして動いてくれるのを確認したので僕もデュロスを上手く誘導して境界線のギブス側へと導いていく。


「うおおおお!」


 両手斧を振り回しながらデュロス君も参戦してきた。彼らも鍛え続けて来ただろうけどそれでも僕にはその動きが良く見える。


「ぬぅっ!?」

「何だと!?」


 青白い炎を拳に纏わせて二人の得物を弾き返し彼らをギブス側へ押し込んだ。それを見ていたギブス側の兵士は後退りし始める。


「どうした? もう戦いの火蓋は切って落とされたんだぞ? お前たちの手で。座して死を待つか立ち向かうか、二つに一つだ」


 僕はここで一つ試してみたいものがあったのでその為に一瞬隙を作るべく挑発して見た。見事デュマスロス兄弟は身を震わせたのでその間に右足を引き両拳を直線状になるよう上下に拳一つ分間を開けるように突き出し


「風神拳!」

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