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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
沿岸地域統一編

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ギブスとの境界線へ

「勿論だ。俺たちの世代であの人を知らない人間なんてもぐり以外居ねぇよ。おめぇが一人で稽古してたのを見てて察したのさ。おらぁ冒険者ギルドの話はサッパリ知らんけどおめぇがショウの弟子ってのだけは分かる」


 師匠と同世代でイトルスすら知る異名を持つ人を断る訳にも行かず、こちらの指示に従ってもらうのを条件に戦列に加わってもらう。


その後借り上げた家に今回境界線側の守備をする隊長たちを呼んでもらい会議をする。五人の隊長が来て其々の人員等名簿を渡してくれてそれに目を通す。


各隊に三十人ずつの合計百五十人。イトルス曰く相手の前線もこれくらいの人数を出してくるだろうと言う。


こちら側は後は砂漠の町とモノイエ市との境界線沿いに見張り台と兵士を配置しており、ルロイ市とルロイ町は今のところ冒険者に警護を頼んでいる。指揮は市長が執っている。


ただ人数は同じでも装備の差が先ずはある。向こうはかなり装飾や材質に凝った鎧を配給されていて武器の手入れも怠らないと言う。


対してこちらはノーマルな鎧や武器を配給されていて耐久的にも向こうとやり合うのに不安がある。武器防具のみならず竜神教(ランシャラ)に対する信仰心から死を恐れないと言う武器もあるからだ。


 僕の勇名を知ってくれているとはいえそれが信仰心に匹敵するとは思えない。改めて僕が隊長たちに本名を名乗ると僕に対して忠誠を誓うとは言ってくれたが……。


「では境界線沿いをがっちり固めつつ僕らも前線に出て様子を窺い変化があればその都度指示を出しますので宜しくお願いします」

「はっ!」


 隊長たちは敬礼した後借り上げた家を出て境界線沿いに向かった。


「作戦はどうします?」

「いつも通りに。というか僕が指揮を取るなんて状況は大抵劣勢だから僕らがすることは変わらない。精々相手を存分にからかってやろうじゃないか」


 僕とイトルスは溜息を一つ吐いてから小さく笑う。


「いつも通りにってのはどうするんだ?」

「あ、失礼しました。イトルスとはカイテンでも一緒に戦った仲でして。いつも通りと言うのは僕が単騎で出て大将や指揮を執っている者と一騎打ちもしくは襲撃して相手の指揮系統を混乱させて劣勢を覆すというもので」


「それしかないんですよね現地調達現地対応が常でしたから。いつか余裕のある戦いをしてみたいものです」

「なるほどなそりゃ分かり易くていい。今回は俺も居るし全力でやらせてもらおう。何せここは俺たちの土地だからな。本来ならうちの息子が指揮を執りゃ良いんだが」


「市長は全体の指揮を執っていますから仕方ありません。人も居ませんので何とか我々で頑張りましょう」


 話している内に市から使者が来て船長やマリアンヌさんたちは町の人の避難が終わった後、五隻の戦艦を使って海側の警戒に当たり戦闘開始後は海側からギブスを攻めるようだ。


「ヘンリーもマリアンヌも弱くはないが竜騎士団(セフィロト )にどの程度敵うかな」

「お二人に海の上と言う条件で敵う団長は居ませんよ。それが敵うなら竜騎士団(セフィロト )はナギナミに上手く侵攻し町の一つも落としているでしょう」


 カイビャクの国内ですら完璧では無いのに海の上で戦闘訓練をするほどの時間は無いと言う。ホクヨウですらまともに統治出来ていないのだから当然と言えば当然か。


こちらとしてはやっと一つ良い条件が出たと少しほっとした。ただ海は抑えられても問題は陸だ。僕らが何とかして抑え込まなければ意味がない。


ガノンさんに野宿セットがあるかと尋ねると大きなテントがあると言われ僕らはそれを荷台に乗せて馬車で運びつつ境界線沿いへ向けて出発する。


もう夜も深くなると言うのに森は松明の灯りで煌々としていた。こちらも相手側も臨戦態勢で睨みあっていていつ何があっても可笑しくないような状況だ。


 僕らは素早く大きめのテントを張り臨時司令部を作る。手際の良さに歓声が上がり手を振って答えつつ中に入りランタンに火を灯す。


玉藻とティアが眠そうにしていたのでルナにも睡眠を取るよう促し寝袋を渡し、大きなテント内の端の方で寝て貰う。パーテーション代わりに荷物や箱を置いてランタンの光を遮っておいたので大丈夫だろう。


僕とイトルス、それにガノンさんはテントの前に出て折り畳みのテーブルを荷台から下ろしテント前に置き、貰った配置図を見て状況を把握する。


其々の場所で警備に当たりつつ焚火をして湯を沸かしコーヒーを飲んで居たりした兵士たちに顔合わせも兼ねて挨拶して回る。


御蔭様で朝まで寝なくても大丈夫なほどの量のコーヒーを頂きテントに戻る。特に今のところ相手にも動きは無くこのまま朝を迎えるような気がする。


「おい兄ちゃん、ちょっとばかし運動しないか? 今度はちょっとばかし本気でよ」

「ええ是非お手合わせ願いたいです」


 暫くする仕事も無いのでのんびりと椅子に座りつつ境界線を見ていると、ガノンさんがイトルスにそう提案しイトルスもそれを受けると言う。


二人は境界線ぎりぎりで槍を構えて向き合い穂先を弾いて手合わせが始まった。イトルスが先手を取りガノンさんに素早い突きを繰り出す。


ガノンさんはそれをしっかり見て構えたまま避けつつ間合いを詰めに出る。一回見ただけでイトルスの突きから引いて突き、の引く動作を見極めたらしくすんなりと入られてしまう。
















読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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