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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
沿岸地域統一編

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イトルスの帰還

「所詮人間は何処まで行ってもそういう生き物なんです。だからこそ自制して自ら律しないといけない、と経典にも書かれてるはずなんですけどねぇ」

「イトルス、今帰ったのか?」


「申し訳ありません案外手間が掛かって」


 マスターに注文をしてから僕らの席に着いてイトルスはギブスの町に潜入した結果を報告してくれた。


やはりギブスの町には首都からの指示で各町や市から物資の搬入がされていて今は市長も変わり第六騎士団長が務めていると言う。


その他にデュマスデュロス兄弟も兵士を率いて常駐していたらしい。ホント執念が凄いなぁあの兄弟。


「まぁそれでも兵力にしたら半分どころか六分の一程度ですけどね。個人的には首都の情報が全く入って来なかった方が気掛かりです」

「情報封鎖されてる、と?」


「ええ。これだけ粛清が始まっているのに首都の情報を意図的に封鎖する意味が分からない。僕らですら訝しむんですから信者たちはもっと動揺しているでしょうね。こういう時にこそブラヴィシ様が表立って出て来て声明なりを出せばいいんですけどそれも無し。第一騎士団長であるジークフリード・フィクスの指示のみですからね」

「第一騎士団長……リベリさんが第一じゃないんだ」


「今は違いますね。彼は元々騎士団に居着かず放浪癖が凄くて団内から批判も多かったので降格されたんですよ。まぁ取って代わったのが政治屋っていうのが今の騎士団を物語ってますがね」


 ジークフリード・フィクスと言う人物は降臨したブラヴィシに代々仕えて来た一族の末裔で冒険者になったりはせずずっと経典の勉強と社交界でのパイプ作りに熱心だった男のようだ。


リベリさんの糾弾も自らがトップに立つ為に扇動したのでは? という噂もあると言う。


「……それって頭のつるっとして全体的に毛のないオジサン?」

「そうです。ルナさんも見かけた覚えがあるんですか? あの人研究施設とか大嫌いで予算が勿体ない潰そうとか言ってたのに見に来るとは意外だなぁ」


 ルナはそれを聞いて腕を組み天井を見上げて考え始める。何かあったのだろうか。


「その人物は好戦的?」

「通常時は財務管理と政治屋としての活動が忙しいオッサンですが、こと竜神教(ランシャラ)に関しては狂信的です。故にこのやり方はあのオッサンらしいと言えばらしいですね」


「政治屋ってなると他の市や町も苦しくなるだろうし援軍は望み薄か」

「近い所ですと砂漠の町が最初に毒牙に掛かった感じですね。元々弱みを握られてたのもあって受け入れざるを得なくなった。こちらからしたら一番可能性のある援軍として砂漠の町を上げていたのにっていう衝撃は効果的ですよ」


 他もそう見ていただろうからかなり効果は高い。国内の援軍はこれで望みを断たれたと見て間違いないだろう。


「やはりここは整わない内にこちらから攻めるのが上策か」

「ですがそれをやるとまた貴方はシンボルになってしまう」


 中々難しい問題だ。だがこのまま無為に時を過ごす訳にも行かない。姉悪魔がもしかするとダメージを受けすぎて回復が追い付かないとすれば攻めるなら今がチャンスだ。


時間が過ぎれば過ぎるほどあっちに有利になるのを手を拱いて見て居られない。やはりここは単独で動いて首都まで行くのが良いか。


「康久殿は居られますか?」


 食堂の入口から声がするので視線を向けるといつも迎えに来てくれる兵士の人たちが立っていた。僕が手を上げると敬礼した後こちらに近付いて来る。


「お食事中申し訳ございません。市長から康久殿に直接お願いしたいので来て欲しいと」


 そう耳打ちされたので頷き立ち上がる。皆にはゆっくりしてて構わないと告げたけどルナと玉藻にティアも立ち上がった。


イトルスは食事を済ませてから後を追うと言うので僕らは兵士の人たちと共に市役所へと赴く。


「早速で悪いがこの書状をここから西南の方角にあるモノイエ市の市長に届けて欲しい。かなり危険を伴うが」

「分かりましたお引き受けいたしましょう」


 市長室に入ると他にも背広を着た人や鎧を着た人たちが集まってテーブルを囲んでいて、僕が即答すると歓喜の声が上がり皆さん立ち上がって僕に駆け寄り握手を求めて来たので困惑して苦笑いしながら応じた。


地図と書状を渡されなるべく危険が少ないルートの説明を受ける。普通の森に見えるが他よりも色んな生き物が生息しているようだ。それだけに竜騎士団(セフィロト )と鉢合わせする可能性もないらしい。


「では行って来ます」

「食料や野宿の道具も全てこちらで出すから受付で待っていてくれ」


 市長は上着を脱いで袖も捲りアクセサリー類も一切付けていない。少し顔がほっそりしたように見えるけど研ぎ澄まされた感じがした。冒険者をしていた頃の心持に戻ったのだろうか。


受付で食料などの準備が出来るのを待っている間にイトルスが到着して事情を説明し地図を一緒に見て確認する。


「なるほど確かにこのルートなら竜騎士団(セフィロト )と鉢合わせするという危険は無いですけどそれ以外の危険がありますね」

「そっちの方がマシなんだろうね書状を持っているのがバレたりすれば一大事だし」


「しかし相変わらず損な役回りを引き受けますな」

「今回のは仕方ないさ。僕らが竜神教(ランシャラ)本部に辿り着く為には残念ながら人でが幾らあっても足りないし」


「我々が向かっている間に少しでも進展してくれれば良いですが、最悪ここを囮にして動くのもご検討ください。閣下の目的を果たすのに竜騎士団(セフィロト )を全員倒す必要は御座いません」









読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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