大地との繋がり
そのまま農村を出てギブスに近付いて行くと交易路付近を竜騎士団が森まで入って来て見張りをしていた。
「このままのんびりしてるとこっちが先に包囲されて殲滅されそうね」
木の陰からその様子を一緒に見ていたルナの言葉に頷く。資金力もあるしナギナミとの協力関係もあるし首都からも離れていて且つ砂漠や荒野が間にあるのでデラウンよりも立地条件は良い。
ただ竜神教も黙って見てはいないだろう。ギブスの町に物資や人を運びルロイを潰すべく動き出すのは間違いない。
向こうはこちらの倍以上戦力がある。ギブスを潰してもまた別のところから兵を送り込んでと繰り返せばこちらが負ける。
かと言って僕が口を出すのも難しい。カイテンでの生活で学んだけど姉悪魔を倒すのとブラヴィシを倒す、そしてラティを取り戻すのが僕の目的なので指揮官とかになってしまうと思うように動けなくなってしまう。
なので極力そうしないよう上手い具合に立ち回らないといけない。難易度が高くなるけどジリ貧になれば首都まで潜入し倒す方法を選ぶしかない。
一人で姉悪魔とブラヴィシを相手に戦うのは厳しいけど皆が皆僕のように不死身ではないのでそうである僕がやるしかないだろう。
「一旦引き上げて再度こっちの方面の報告をギルドにあげよう」
三人に声を掛けて僕らはその場を見つからないように引き上げる。市が具体的な侵攻作戦なりを立案し実行に移すなら協力するけどそうでないなら僕はこのままこういう仕事を今は繰り返す。
単独でギブスに潜入し討ちたいところだけど流石に戦端の口火を自ら切ればシンボルとして前面に立つしかなくなるので出来ない。
「ご苦労様でした。また明日も宜しくお願いしますね」
ギルドへ戻りリンナさんに調査報告書を提出し報酬を受け取って僕らは町へ繰り出す。玉藻にはフルーツの苗を、ルナには簡易織機など編み物の道具を今回は奮発してプレゼントした。
ティアには小さい子供用の可愛い鎧とマントを購入し付けるととても喜んでくれたので良かった。
「良いの? こんなに奮発して」
「良いよ別に。僕のお小遣いの貯まった分があったから出しただけだよ。生憎欲しい物は何も無いし着てるものもルナが仕立ててくれればそれが一番良いし」
皆で畑作業をしつつそう答える。元の世界に居た頃は何か色々ネット通販したりゲームに課金したりしたけど、こっちに来てからそんな衝動には一切駆られない。
暇を持て余していたからこそしてたんだろうなと思う。こうして生きる為に色々する仕事したい仕事があるっていうのは本当に幸せなんだろうなって感じている。
チート能力と鍛えた体の御蔭であまり嫌な目にも遭わないし、この世界に来れて僕は良かったのかもしれない。
「あれ……」
畑仕事をしている間に体に少しずつ違和感を感じて手を止める。地面から足の裏へジワリと何かが伝わり体を覆い始めた。
「ちょ、ちょっと大丈夫?」
「どうしたのじゃ!」
それは僕が聞きたいんだけどね。全然分からんけど目を閉じてそれらを改めて感じ直すととても温かい気持ちに満たされていく。
この感じとても懐かしい、そう感じた瞬間夫婦が赤ん坊を抱いて微笑んで居る光景が浮かんだ。その二人を僕は知っていた。何故これがああなってしまったのか分からないけど幸せの欠片だというのは分かる。
「あれ収まった……体大丈夫?」
「え、ああ特に何もないみたい。何だったんだろうね」
僕らは首を傾げつつ畑仕事を再開した。体を覆っていたものは僕の感覚では全く収まって居なくて夜寝ようとしても冬なのに寝苦しさを感じるくらいだった。
翌朝いつの間にか寝ててルナと玉藻、ティアに起こされて布団から出る。ストレッチをしてから寝間着から着替えて敷地内の畑に向かう。
今日も土を触りながら雑草を取ったり水を撒いたり害虫をチェックしながら取り除いたりといつもの朝を過ごしてから朝食を取りに食堂へ向かった。
「いらっしゃい何時もので良いかい?」
食堂へ入るとマスターが居てお任せしてから空いてる席へと移動した。例の宣言から人が増えているようで食堂も満席だ。
市には居るに際しては必ず何処から来たかとか変装してないか、そして竜神教ではないという紙にサインするようになっている。
見ると冒険者だけでなくサーカスのような大道芸のような方たちも見受けられた。
「随分お客さん増えてますね」
「そうだな。竜神教信者たちが出て行ってもっと人が減るかと思ったんだが他のところからこっちに来ているらしい。竜神教自体の問題よりそれを信仰する者、それを利用して権力を得ている側に問題がある場合があるしな」
高尚な竜神教の妨げになるようなものは認められないと言う様なものもあるらしい。それで大道芸の人たちは止む無くこっちに来たと言う。
サーカスの人たちも最初は竜神教信者だったけどあれがダメこれがダメ不適切だ汚らわしいなどと言われてきたが最近特にそれが酷くなり生きるにも危険を感じた為脱会しここに身を寄せたと言う。
「確実に明確な線引きをし始めたわね」
「竜神教の経典や信仰が大事で最優先であってそれ以外は駄目と言うのは息苦しいものさ。人間がそんな杓子定規に生きられるなら同族同士での戦いも起きないだろうし竜神教の経典がいくら素晴らしくとも竜神教信者同士ですら排除をしてるんだから平和なんて遠すぎるわな」
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