首都の話と美味い話
ギルドのお酒と宴会芸の祭りが終わって夜も過ぎ眠りから覚め朝、ラティに髪を梳かしてもらいながらギルドの一階へ降りるとそこにはリュクスさんが来ていた。
「おはようございますー」
「おはよう昨日も大活躍だったと聞いているよ」
カウンター席に座ろうとしたものの、ミレーユさんとリュクスさんにカウンターから見て右奥のテーブルへ行くよう手で促される。どうやら僕に用があるらしい。よろよろとリュクスさんに付いてラティと共にテーブルに着く。
「例のヴァンパイアの件を報告しておこうと思ってね」
「どうなりましたか?」
色々なものを内包したまま首都へと旅立ったドラヴ。僕にはそれを確かめる術が無く、やり取りだけが頭に残っていた。
「彼は国家反逆罪で処理された」
「そうですか」
結局のところ臭いものに蓋をしただけに過ぎない。首都の中を見たわけじゃないけど、表裏一体だと思う。彼のような汚れ仕事をする者と表で綺麗な顔をして正義を語る者は同じ組織だと考えている。
「綺麗な理念理想じゃ現実は救えないって訳か」
「何か?」
「いいえ。ありがとうございます教えて下さって」
「とんでもない。あまり詳しい話も分からず結果だけだからどうしたものかと思ったが、博士の伝言もあったんでね」
「博士の伝言ですか」
「そう。機会があったら首都に来るようにって。博士の名前を出せば取り次いでくれるようになっているらしい」
「首都って入るの大変なんですか?」
「そりゃ勿論。誰でも入れるもんじゃない。身分が明らかじゃなきゃ当然入れないし、滞在ともなればかなり厳しい条件が付く」
普通そうだよなぁ首都なんだしそれ位厳しくしないと治安が悪くなる。国の心臓なんだから犯罪を犯せば誰であろうと二度と入れないくらいにしないと、真面目に生きてる国民は安心出来ないだろうし。
「首都で生まれるとアドバンテージが凄そうですね」
「そうだね。だがそれに対する義務などもあるから楽ではないだろうがね。君ももし首都に住みたいと思うなら、ギルドレベルを上げるか大物の娘と結婚すると良い」
「ギルドレベルを上げると首都で暮らせるんですか?」
「そうだね。ギルドはうちの国だけじゃなくこの星の至る所にある。この国で功績を立てるより、ギルドに貢献した方が良いなんて冗談もある位さ」
ギルドって凄いんだなぁ……成り行きで所属したけど所属しておいて良かった。ミレーユさんの御蔭で小さいところから積み上げて行って新しいエリアにも入れたし。今後も積み重ねていこう。
「そうなるとやはり競争になってくるからね。昨日みたいに大物を取ってくると変な奴が群がってくる訳さ」
「困ったものですね」
僕がそう答えるとリュクスさんはポケットからバッジみたいなものを取り出してテーブルに置いた。
「これは?」
「デラウンで認められた者にのみ渡されるバッジで、これがあると正規の業者でもレベルの高い業者と取引出来るようになる」
「御用達みたいな感じですか?」
「御用達と言っても縛るものではないよ。簡単に言うと町がこの間みたいに非常事態になった時、優先して協力してもらう代わりの優遇措置だ。町を離れている時には効力を発しないけどね。ただこれを持ってるってなると、遠くでも同郷でレベルの高い人物だと直ぐに分かるっていう便利な面もある」
そりゃかなり便利だけどなぁ……一概に良い面だけじゃなさそうに思えて仕方ない。こないだの一件での狙撃手も分からないままだし。
「お兄様は記憶喪失ですから。機会がありましたら」
「そうだね。是非。依頼はギルドに預けておくから」
リュクスさんはそのままギルドを出て行った。ラティのインターセプトは助かる。
「何にでも美味い話には裏がありますからね」
「だよねぇ」
「お兄様は抜けていると言うかお人よしと言うか。私が一緒にずっと居ますが、居ない時は特に気をつけてくださいましね?」




