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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
カイビャク海岸沿い編

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姉悪魔との対峙

師匠に頂いた小手が無ければ腕は砕かれていただろうなってくらいの衝撃が小手越しにも伝わってくる。拳は握れるけど何かを掴むのは難しいかもしれない。


それでも体は師匠や兄弟子たちに鍛えて頂いた御蔭で綺麗に捌き致命傷は避けれている。姉悪魔は徐々に目をひん剥いて歯を見せて明らかに我を失っている状態になるのを見て僕は反対に冷静になって来た。


姉にも昔に一分くらいは良い所があったと思うけど最早この目の前に居るのは姉でも何でもない良く分からないものに取りつかれた女性だ。


頭を切り替え体もしっかり動くのを確認すると反撃に移る。ルナが攻撃した時に見せたあの妙な避けを今回もして来た。これが厄介なのは確実にこちらの攻撃が当たっている筈なのにそれを何かでズラされている感じがする。


イライラを通り越したのか姉悪魔は徐々に無表情になって行き攻撃も避けるのと同様良く分からない軌道を描き始めた。ただ唯一救いなのはそこに気があるという点だ。それさえあれば僕も何とか避け続けられる。


「何なんだお前は……何故そんな補正を受けている?」

「補正とは何の話か分からないけど」


「嘘を吐け。私の攻撃は確実にお前を捉えられるはずだ。なのにさっきから当たらなくなった」

「知らん」


 補正が何なのか知らんし答えようも無いのでその通り言っただけなのに呪いでも掛けて来そうな顔をして攻撃を続ける姉悪魔。正直に答えただけなのになぁ……。


「くっ!?」


 攻防を繰り返しているうちに癖が読めて来た。攻撃されて受ければダメージを受けるのは最初の時に確認済みだ。こちらの攻撃は当たっている筈なのにすり抜けたみたいに当たらない。


なら攻撃をこちらにしてきた時と当たる時は必ずそこに居る、そう考えて僕は敢えて一撃受けつつそのままカウンターを叩き込んでみた。


「当たった!」


 見事脇腹を捉え膝を着く姉悪魔。全力では無く確かめる為の攻撃だったのでダメージが弱かったのか姉悪魔は目を丸くして地面を見つめているだけだった。


距離を取って足を止めその様子を窺う。大人しく帰ってくれれば良いんだけどなぁと祈るような気持ちで待っていると、何やらブツブツ言い始めた。


「……いけないのよ……」

「は?」


「何で……何で私がぶたれなきゃいけないのよ! 野上家始まって以来の呪術秀才とまで言われた私が何でアンタみたいな引き籠りに殴られなきゃならないのよ!」


 良く分からん呪術とか。そう言う研究施設で働いてたのか? というか元の世界に呪術とかそういうのが存在してるようには思えないんだけどあったのかな。


第一姉悪魔と母が研究施設で働き家に寄り付かなくなって暫くしてから両親は離婚し、姉悪魔は名字も変わってるはずだから野上との関係も薄くなった、と爺ちゃんがボソッと言ったのを思い出す。


「訳が分からないけど取り合えず帰ってくんない? 夜も遅いしさ」

「良いからあの竜の子を渡しなさいよ!」


「嫌だね」


 駄々をこねたにも拘らず拒否された子供のような顔をしてこちらを見た後再度戦闘が開始される。ただコツを掴んでしまえば何とかなると思っていたのでさっきの手を繰り返し打つ。


当然あちらも警戒はするものの攻撃しなければ倒せないのは同じ。そして当たり前だけど魔法を使う隙なんて与えるはずもない。構えた瞬間に飛び込むも直ぐに反応して距離を取られた。


「……許せない」

「元々許すつもりもない癖に適当な言葉を使うな」


「良いわ。こんな手は使いたくなかったけど仕方ないわね」


 どうやらしっかりと追い詰めて奥の手を出させるのに成功したようだ。目が笑ってない姉悪魔は手をかざすとその前の空間が歪み現れたのは本物のラティと思しき人だった。


こうして二人を見比べると青い髪とピンクの髪と中身の違いはあれどとても似ていた。ただ短くはあっても濃密な時間を過ごした僕にはわかる。あれはラティじゃない。


とても良く似せて作られた人形だろう。上手く誤魔化していても生気が感じられない。こういう時気を感じれるのはとても便利で師匠と出会えて弟子にしてもらって鍛えて貰い感謝しかない。


「中々面白いジョークだ」

「あらそう? 私にとってはもう必要ないからどうでも良いんだけどアンタには効果ありそうじゃない?」


 僕が強がっていると思って姉悪魔はラティの人形を抱きしめ頬を寄せる。これで確定だ。あの姉が人間に触るなんて有り得ない。


昔から潔癖症に近いものがあって母親にすら髪に触れられるのも居やがったし、喧嘩というか一方的に僕に殴りかかって来た癖に汚いと手を洗うくらいの奴だ。


「それがラティだとしたらラティと似た容姿に何故なる必要がある? まぁラティの方が美人で意地悪そうには感じないから羨むのも分かるけど!? っと」


 大分それを気にしているのか小さな炎の弾が即座に僕の頭目掛けて飛んで来た。


「そんな話は最早どうでも良いのよ。さっさとあの竜の子を渡しなさいな。そしたらこの子をアンタにあげる」

「それが本当にラティで無事かどうか分からないから取引出来ません」


「……っせぇなぁ……ホントうるっせぇんだよ糞餓鬼がぁっ! 何なんださっきから、え!? 一々一々無能な引き籠り男の癖に完璧な姉である私に無駄に立てつきやがってよぉ!?」


 唾を巻き散らしながら瞳孔をかっぴらきつつ叫びラティの腹を殴り続ける姉悪魔。あれだけ殴られても反応一つしないとなるとやはりあのラティは人形とか作りものっぽいな。


それにしても何故竜の子に拘る? 最初僕を殺すのは後回しでって言ってたしあの子が姉悪魔に渡ると何某かの計画が進む。あの子がこちらにいれば計画は頓挫する可能性があるのか?


「兎に角帰りなよオバさん。そしてちゃんとした交渉の仕方を教わってきな? ガキの使いじゃないんだろ?」


 それを聞いて姉悪魔は発狂する。声にならない声を上げ続けラティっぽいものをボコボコにする。昔僕もああされたなぁと思いつつ黙ってそれを見下ろすように見続けた。


「良いよ分かったよ……面倒だからこのまま消し飛ばしてやるよぉ! もう知らねぇからな!? お前みたいな引き籠りの所為で何の罪もない人たちが死ぬんだぞ!? ええ!?」


 ラティっぽいものは血も出ず最終的にボロッと崩れそれが作りものだと証明された。それにしても良く出来てるなぁと思い見ていると姉悪魔はそれを放り投げ火を付ける。そして僕に向かって杖を突き出して言った言葉が面白すぎて爆笑してしまった。


支離滅裂にも程がある。引き籠りで人と関わりを絶っていた居た僕にその脅しが効果があると思っているのか問いただしたいくらいだ。この姉悪魔なら僕に関する詳細な報告が上がって来ても適当に聞き流し書類は机の上に放り投げているか破って捨てているのが関の山だろう。


いや、これは助けて欲しい折れてよって話なのかな。自分の手を汚したくないから打ってしまったらお前が全部悪いと責任転嫁したいんだろう。どんだけ子供なんだこの女。


まぁラティの体を使ってるところからして自分が一番大事でここで何しようが本来の自分は何一つ傷つかないってのが丸わかりだ……となるとラティの体を乗っ取ってる可能性が高い。


自分大好きな姉悪魔が自分の体を捨ててまでこの世界に来たとは考え辛い……仮にそうしたんだとすると何がそこまでそうさせたのかは気になるところだ。


女神様もこの世界を作った男、クロウを追っていると言っていたし呪術がどうのと言っていたけどクロウに騙されてるんじゃないのか? 呪術とか欠片もそんな話聞いた覚えが……無いと思う。

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