連行されるヴァンパイア
「お前もワザと悪役を演じているのは分かる。その理由は何だ?」
「お前の目的を教えてくれたら話してやっても良い」
「僕の目的はこの星の心に会う事だ」
めっちゃ脇腹を抓られているけど我慢する。こんな話を他の人にしても信じないだろうし、何を隠してるのか聞かないと気持ちが悪い。
「会ってどうする」
「その前にそっちも話せ」
そう言うとドラヴは俯き押し黙る。
「ほーら見なさいお兄様。彼らは私たちを見下しているのですよ? 素直に話す訳」
「種の存続の可能性を探る為だ」
僕の目を真っ直ぐ見て言うドラヴ。その目がはじめて見るレベルで澄んでいた。
「お二人とも与太話が好きなようで」
「何とでも言え。このままでは我らも死滅する。この星のバランスは各種族ギリギリで保たれている」
「それは良いではありませんか。今まで散々やりたい放題やって来た訳ですし」
「人間も滅ぶかも知れんのだぞ?」
「どういう意味です?」
「お前は喋れるかも知れんが他の竜や恐竜、獰猛な獣たちは喋れまい? 環境の変化によって人間も今まで通りでは居られない」
「ラティ、砂漠はどれだけ広がっているの?」
僕の問いにラティは口を噤む。この町は砂漠と森の間にあるし、近くには砂漠化が進んでいる荒野もあった。この原因は何なんだろう。
「無論竜とて同じではあるだろう。が、お前たちは圧倒的に強い。体の強さで言えば誰にも敵うまい。また恐竜も同じ。下から徐々に死滅して行き最後は全部死滅する」
「で、ヴァンパイアだけ助かる為に人間を管理しよう、と?」
「お前たちの国……ではないな。彼らの国のリーダーがしているのと同じだよ。但し私たちは人間の権利など守る必要はない。死ぬ気で開発をさせる。死ぬまでやらせる。人間のリーダーがこれをやれば反発され反乱が起こる。分かるか?」
……持ちつ持たれつの関係がある、という話をしてるんだろうな。理に適っているけどそのまま信じる訳にはいかないなぁ。
「なるほどね。この星が不味いってのは分かる。僕は何故だか引き篭もった星の心に会わないといけなくて呼ばれた人間だから」
「ちょ、ちょっとお兄様!?」
「となると会って説得しないといけないってのはそれなのかな」
「それとは?」
「環境が可笑しくなっているって話」
何で会わなきゃならないのか、ひょっとするとその問題なのかもしれない。環境が著しく変わり始め、ヒエラルキーの下から変化し互いに相食み消えていく。それを食い止められるかどうかも含め、僕がこの星で生きるなら会わないといけなくなったな。
「ひょっとすると黒鎧たちもこの辺りに居るかもしれないな」
「お兄様、ちょっとこちらへ」
「嫌だ」
にこやかに呼んでいるけどあれは折檻する顔をしているぞ……。断固拒否せねばなるまい。
「何故私に正直に話した」
「別に言いふらされても誰も信じないからだよ」
こんな話を信じるのはピントがズレてる人間だけだ。大抵は可笑しい奴でおしまい。聞かれたら知らないと答えればいいだけだし。
「……なるほど良く分かった」
それきりドラヴは話さず、博士が来るまでダンマリ。そのまま連行されて行き当然のように僕はしこたま怒られた。
「ダメじゃありませんかあんな話をして!」
「あんな話誰も信じやしないよ」
「信じられても困ります!」
「ごめんて。兎に角これからはギルドの依頼を受けてお金貯めていかないとね」
「やる気になったのは結構ですが、今後あのような話はしないように!」
「はーい」
何とか素直に頭を下げて竜神様の怒りを静めてもらった。これからは依頼をこなして貯金して情報を集めていかないと。今のままだと空に向かって適当に打って当たるのを待つみたいな気の遠くなる状態だ。知らなければならないこの世界と星と話せる場所を。




