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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
カイビャク海岸沿い編

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農村での一日と謎の生き物

「犯人の正体は不明、か」


 何でも気付いた時には畑を荒らされていて時間帯は昼も夜も関係無くやられたらしく、これは集団だろうという話になったのでそれで依頼したという。


「手間もあるからこその報酬とランクって訳か」

「うーん」


 実際に荒らされる頻度が高いという森と畑の境に来て見ると、畑全体を荒らされてはいないけど少し離れたところから見ても荒らされたのが分かるくらいの範囲なので確かに集団かもって思うのも分かる。


その跡を見ると丁寧に持ち去っている訳では無いんだろうけど食べたにしてはとても丁寧に食べられているので、僕が農家の人でも奇妙に感じ早めに解決してもらいたいと思う。


「どうしたの? 玉藻」

「これ変なのじゃ。動物ならかじったのが分かるし人間なら刃物を使って綺麗に取るじゃろうし……じゃけどどれでもあるような無いような」


 しゃがんで取られた作物の残っている部分を見ると玉藻の言う様に変ではある。かじったにしては綺麗な切り口だけどかといって刃物で切ったのかと言われるとそれも違う気がする。


「おう、おめぇら冒険者か!」


 僕たちが荒らされた場所に他に痕跡は無いか探していると声を掛けられた。視線をそちらに向けると麦わら帽子を被り白いシャツにベージュのスラックスと黒の長靴を履いたお爺さんが鍬を持って立っていた。


「こんにちわ。依頼を受けて来ました」

「お邪魔してますー」


「どうもなのじゃ!」

「よく来たな! あまり気を張り過ぎずやってくんな! とは言え畑仕事しながら見てるオラたちも中々見られねぇから大変だとは思うが」


 お爺さんはこの畑の持ち主で息子さんも隣で畑を耕しているんだけど、二人とも策を立てたり罠を仕掛けたりそれこそ仕事中も注意して見ているにも拘らず気が付いたらやられていたとその時の状況を教えてくれた。


「森の中も見たけんどもよぉそれっぽいもなぁねぇし。ほれ、あっこらにも冒険者居るから何かあってもおめぇらの所為じゃねぇからのんびりやりな」


 僕らに笑顔でそう告げてがははと笑いながら畑の手入れをする為しゃがんだ。これだけ警戒していればそうおいそれとは近付いてこないだろう。下調べも兼ねて付近の森を散策する。ルロイの町から段々と緩やかな上り坂になった位置にある農村は水捌けも良く植物も生い茂っていた。


森の中でも村の人たちに会ったのでこれからお世話になるので挨拶をすると驚かれてしまった。何でも依頼を受けた冒険者の中でちゃんと挨拶したのは僕らが初めてだという。山菜取りをしていた村の人たちからこの辺りの木の実だったりも多くは無いけど食べられているなど色々情報を頂く。


「巣みたいなものは無いですか?」

「洞窟もここから離れたところにあるくらいで近くには無いねぇ」


「植物も多いから動物たちも餌には困らないと思うんだけどよっぽど腹を空かせた集団が居るのかしら」


 山菜取りを手伝いつつ気になる点などを聞き、作業を終えて帰る皆さんと一緒に戻る。別れ際に山菜をおっそわけしてもらい、僕らはさっきのところへ戻る。


「おめぇら今日は帰るのか?」

「いえここで久し振りに野宿しようかと思って。構いませんか?」


「へぇ、こりゃまた珍しい。おらぁ問題ねぇよここらは好きに使ってくれこっちの手入れや収穫がおわらねぇと荒らされたところを取り除いて次の作物植えるってのも出来ねぇから」


 持ち主の許可も頂いて僕らは一旦野宿の準備をする為町に戻る。宿屋の御主人やマスターにもその旨を伝え商店でテントやはんごう、鍋や網などを仕入れてから畑へ戻った。丁度空も夕焼け色に染まって来て僕らはそのままテントを張る。


これから使う機会もあるだろうからと良いテントを買った。寝る場所に虫が入らないようにしつつ風は通る様に工夫された窓もあり、必要ない時は布で覆って固定出来るようボタンもつている。入口に小さなひさしもあり雨が降っても焚火を起こせる。


「何だかとてもワクワクするのじゃ!」


 ペグを打ち込みながら玉藻は体を揺らしつつそう叫ぶ。元九尾で現在獣族っぽくなった彼女は今まで知っていた野宿とは一味違う雰囲気に好奇心がくすぐられて次は何をするのか待ち遠しいようだ。近くから大きめの岩を集めて円を描くように置き、その中に落ちていた枝などを集め葉を上に乗せた後で円の両端と上下に鉄の棒をしっかり立てる。


次に棒を横にし引っ掛けられる場所に引っ掛けてはんごうを三つつるす。火打石を取り出して葉の近くで鳴らし火を付ける。近くに湧水がありそこでお米は事前にルナにといて貰った。今度は玉藻にも練習させるようだ。


もう一つ同じように石を設置し枝などを置いた後今度は網を設置し油を塗った。今日は初日なので豪華に焼肉をしようと思って生肉を買ってきた。おっそわけの野菜もあるし、山菜は明日の朝の味噌汁にとルナから提案があったのでそうする。


「綺麗なのじゃ……」


 他に何もない開けた場所で見上げる夜空は一面星の海になっていて眩しく感じるほどだ。恐らく今の状態になる前に空をこうして眺める機会なんて無かっただろうなと思いながら、今どう思っているのか聞きたい気持ちを抑えて黙って玉藻とルナと共に折り畳みの椅子に腰かけながら夜空を見上げる。


「ぬ!?」


 急に玉藻が視線を落とし立ち上がると散歩の時から持ち歩いていた小さな棒を手に取り暗闇に向けてそれを振り下ろした。


「何か出た!?」

「何かがこちらに向かって来そうな気配を感じたのじゃ。故に棒を振り下ろしたものの上手く行かないのぅ」


 しょんぼりしつつ玉藻は再度腰を下ろす。そんな玉藻の背中を優しく擦るルナを見ながら周辺の気を探るも特にこれと言った気配は感じられない。一体何か玉藻の野性の勘に引っ掛かったのか……気にしても今は分からないので気分を切り替えて夕食の準備に入る。


生肉を少し醤油で浸した後で網の上に一枚ずつ置いて行き敷き詰める。焼きあがる前に僕ら其々の手に茶碗にたっぷり乗せた御飯を持って待機する。じゅうじゅうと肉が焼ける音と香ばしい匂いに食欲が掻き立てられたのか、誰かの御腹の音が鳴る。


ただこれは皆心当たりがあるので笑いあいながら流し今は星より肉を見つめる。


「そろそろ行けるんじゃないのこれ!?」

「まだなのじゃ……ちょこっとカリッとするくらいを食べたいのじゃ」


「も、もう良いんじゃないのかな。第二段もあるし」

「ぐあっ」


 僕らが湯気を立てるちょっとカリッとした肉を持ち上げると、何かがこちらを向いて口を開けている。まじまじとそれを見るとトカゲのように見えるけど前足を上げて二足立ちしているし目も丸く愛らしい外見をしていた。


試しに少し肉を冷ましてからその開いた口に放り込むと、もぐもぐした後何故か地面にコロコロしだした。暫くして落ち着いたのか立ち上がりまた催促するように口を開ける。今度は御飯を巻いた状態で口に落とすともしゃもしゃした後でぴょんぴょん飛び跳ね始めた。


「何この生き物……」

「分からんのじゃ……トカゲとも違うしかといって竜とも違うような気がするし」


 僕らも食べつつその謎の生き物にも食べさせているとついにお肉も御飯も無くなり、次は頂いた野菜を醤油を掛けて焼き始めるとその匂いが気に入ったのか謎の生き物は離れて行かない。スライスした芋が丁度良い感じに焼けたので少し冷ましてから与えて見ると、よく噛んだ後パァッと表情が喜びに溢れた。


他にも葉物があったので与えて見たけどこれはいまいちらしく、芋が兎に角良いそれを寄越せと言わんばかりにねだる。ある程度食べ終えると満足したのか僕の足に寄りかかりながら眠り始める。何だこの自由な生き物は。僕らは聖人じゃないのに呑気だなぁ。


丁度余っていた布があったのでそれにくるんで胸で抱えるように背中で結んで洗い物や片付けをする。一応夜も襲撃があるらしいのでルナたちには先に寝て貰って僕は夜通しこの謎の生き物を抱えながら監視した。


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