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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
ヴァンパイア狂想曲
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雲行きの怪しい帰還

「だが良い。私には長い年月を待てる命があるし、貴様ら人間の技術が発達するのは私にも利がある。管理しながら増やして行けば私の願いも叶う」


 自分がやられる可能性というのを一切無視した願いだ。いつまでも下の者が管理されて大人しくしている訳がない。情報が発達すれば封じられていたものの紐が解け、それまで溜まっていた物が一気に吹き出す。そうなれば抑えが効かなくなる。


「私たちヴァンパイアこそがこの世界の支配者となるのだ」

「私たち?」


 つい引っ掛かってしまい喰い気味に突っ込んでしまった。博士みたいなヴァンパイアもいるけど、それ以外は固まっていると思うと不思議で仕方ない。プライドが高く拘りも強い個人主義なのかと思ったからだ。


「ふむ。あまり余計な話は止そう。お前のような奴は危険だし私も借りを返さなくては面目が保てないのでな」

「そりゃ良かったのぅ」


 ギルド長の声に反応し前を見ると、森を抜け僕たちを乗せた馬車は荒野に出た。


「どうやら話に集中しすぎだようだな……」

「どうやら御主ただのヴァンパイアではないようだな」


 そうギルド長が言うとドラヴは手を広げ空に向かい笑う。太陽は真上に来ているのに全く問題ないように見える。


「……なるほど人間の技術の発達の賜物って訳だ」

「勘が良いな。私たちの能力にかかれば人を誘拐するなど容易い。それにやはり家族を人質に取れば簡単だ」


 言葉が終わる前に僕の体は動いていた。ドラヴは錐揉みしながら空を飛び落下した。


「あ、すいませんつい」

「良い良い。足場が悪いから力が分散してしもうたのが怪我の功名。奴をとっちめて吐かせねばならん」


 ギルド長の後に付いてドラヴが落下した地点へと向かう。べちゃっと荒野の地面に突っ伏しているドラヴ面白い。


「さってとっ……と」


 ドラヴを仰向けにして起きるまで両頬を叩くギルド長。めっちゃ痛そう。


「ぐあ……」

「起きたかヴァンパイア。貴様には聞きたい話が幾つもある。大人しく来てもらおうか」


「馬鹿な」


 抵抗しようとしたものの、体さえ起こせないドラヴ。僕の一撃結構凄いんじゃない?


「そりゃそうじゃろこんな炎天下の昼間に例え薬剤を塗りたくっても本来の力からは程遠い。そこへ来てうちの小僧の一撃をまともに貰ったんじゃ。明日までこのままじゃろ」

「あぶない!」


 風切り音が耳に入ってきたのでとっさにギルド長を突き飛ばして僕も飛び退く。そしてその方向へ背負っていたボウガンを下ろし、足を掛け弦を引いて離す。弾は崖を砕いて飛んで行った。流石最新式のボウガン。おじいさんの形見凄い。


「やるのぅ。今は先ず馬車に戻り直ぐ町へ引き返すぞい」

「はい……」


 ただ気になって仕方が無い。山の目は明らかにドラヴだけでなくギルド長も狙ってた。となると隊長の伝言とやらも信用出来ないし、町長も信用出来なくなる。やっとこさギルドに所属して狩りに出ようと思ったのに妙な話に巻き込まれてしまった。


「行くぞ」


 ロープでグルグル巻きにしたドラヴを引き摺りつつ僕は荷台でボウガンを構えながら荒野を町へ向けて進む。暫く進むとまた草木が生え始め、森に入る。ひょっとすると兵士たちが待ち構えているかもとも思ったけど、すんなり町に着いた。


「お帰りなさいませ!」

「うむ」


 言葉少なに門兵に挨拶するギルド長。町の門を潜り真っ直ぐギルドへと向かう。だけど気を抜けない。どこから狙撃されるか分からない。ギルド長共々狙ってきた奴ならどこだろうと構わず仕掛けてくる可能性もある。


「ただいまぁ」


 ギルド長と共にギルドに入ると、そこには博士とパフィー、ミレーユさんとラティそしてリュクスさんが居た。前に出ようとする僕に対し手で遮り


「ヴァンパイアとお嬢さん方を中に」


 と言われたので頷き言われた通りにする。ラティとパフィーそれに博士も手伝ってくれた。何か話しかけてくれてたけど完全に上の空だ。

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