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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
ヴァンパイア狂想曲

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悪い出来事は重なり

 これはどうしたものか。やはりあの黒鎧の連中がこの辺りに居たってのはこういう仕事を警護したりする為に居たんだろうな。ギルド長は短い付き合いだけどそんな曲がった行為を許す人には見えない。だけど人間は分からない。血の繋がった相手でさえ全くひとかけらも分かり合えず理解も出来ない場合もある。


「いえいえ。恐らくこの人は何も知らないんでしょう。知っていても正直に言うどころか生き延びる為にこちらを混乱させるような話をしてくると思います。だからあの狙撃手の行為はびっくりしましたけど正解かと」

「悪人は信用ならん、と」


「この御時勢に人をさらうなんてピントがずれた……視点がずれてる人間なんて信用出来ませんしね。聞かない方がマシまでありますよ」


 そう言いながらギルド長に嘘を吐いた自分もまた信用ならないなぁと思う。皆生き延びる為に相手を見て組している。この場で可笑しな考えを抱けば殺される可能性も無くは無い。だから慎重にしなきゃ。出る杭になるにはまだ早い。


「良かろう。これらの遺体はどうする?」

「リュクスさんに連絡して処理して貰いましょう。僕たちは荷台の女性たちを医務院へ連れて行かないと」


 僕は荷台で身を寄せ合い眠る女性たちを見て言う。


「そうじゃの。今は帰ろう。ヴァンパイアの件も気になる」

「それは遅いかもネ?」


 嫌な出来事は重なるもの。まるで今までの幸運を剥ぎ取るような連鎖だ。ドラヴは僕の目の前に現れ右の伸びた爪を突き出した。それを避けて更に左も避け体を入れ替える。


「機を見るに敏て奴かな」

「チャンスが来たのでな。楽に目的を果たすよりは、より困難な方を目指すタイプなのでネ」


 相変わらず独特な髪の毛ツンツンヘアーでスーツを着た体をゆらりと揺らしながら構えるドラヴ。


「それは結構。だけどここは互いに足場が悪くないか?」

「関係ないなぁ? 私が人間に気を使う必要は無いんでネ。ほらこの通り」


 近くの女性の足をグリグリと踏みつけるドラヴ。女性は苦痛で顔を歪めるも起きない。どうやら薬剤で眠らされているようだ。良いのか悪いのか。


「どうだい? 私と君ら人間どちらが酷いのかねぇ? 変わらないだろ? 永遠に続く苦しみか一刻の苦しみか……いや私の方がマシだよねぇ!?」


 顔に手を当てて大笑いするドラヴ。まぁどっちもどっちだけど、生憎僕は組しないのでどうでもいい。それよりどうやってこの難所を乗り切るかの方が大事だ。足場は悪くギルド長も馬車を運転してる。それに山の目は当てになるどころか妨害してくる恐れすらある。四面楚歌ってところだ。


「おやおや悔しくて何も言い返せないのかい?」

「そうだな」


 なるべく悔しそうに返して見た。時間を多少なり稼ぐ必要がある。今は山道で足場は最悪。移動をし続ければ平坦なところに出る。そこまで粘らないと。


「素直に認めるような人間……だよな君は。私と違って自己肯定感が低いだろう?」

「よく分かるな。流石長生きのヴァンパイアだ」


「そうとも数多くの生き物を見てきた。どれもこれも愚かではあったが多少楽しませてくれた。それこそが我らの退屈な生に潤いを与えてくれるんだがね」

「個人的には人間の方がこういうのもある訳だし見てて飽きないでしょ? 醜悪で」


 そう僕が言うと実に嬉しそうに微笑む。


「そうだよとても楽しい。食料としてだけでなく楽しみまで与えてくれる。君たちが食料としている家畜たちも、食べられる側から人間側に付いた時の従順さは堪らないものがあるだろう? 生きる為の選択肢とはいえどんな気分なのかねぇ目の前で同じ生き物が食べられる様を見るのはさ。食べた者達への感謝の気持ちなど偽善も良い所だ。草木も虫も動物も、言葉こそ喋らないが意思はあるだろうし」

「そう言うのを読み取ったりは出来ないのか?」


 問いに少し寂しい顔をして俯く。ヴァンパイアはそういう能力は無いからこそ分かりやすい行動をするんだろうな。相手の苦痛や恐怖を味わいながら食事を取る。それは自らの体に耐え切れない能力を持ち行動を制限された者の憎しみや恨みの八つ当たりかもしれない。

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