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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
ヴァンパイア狂想曲
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町の闇

 ギルド長と共に素早くギルドを出る。その際に携帯食料を一袋と念の為寝袋一つを渡された。


「外までお送りします!」


 直ぐに後ろから馬車が来て、兵士の人たちに送ってもらった。


「申し訳ありません我々もお供出来ず……」

「良いんじゃよ。君らが離れるとあの町長も五月蝿かろうて」


 町の北口で降りた後見送られる。微笑むギルド長に苦笑いの兵士の皆さんを見ていると、この町の町長というのが中々面倒臭そうな人物だと窺い知れた。リュクスさんも大変だろうなぁ。


「隊長から長に御伝言がございまして”山の目がある”と伝えてくれれば分かると」

「ああ了解じゃ。隊長に宜しく伝えてくれい。ではな」


 僕は敢えてこの場では何も聞かずに長の後に黙って付いていく。そのまま北の森へと入り傾斜を上っていく。


「ワシらの町は砂漠と森の間。水源もあり気候も割りとバランスがいい。だからこそ体調を崩したマダムなど首都の人たちが移り住んでくるんじゃ。だがの、その影響で経済的に良くなった反面それ以外の弊害も残念ながら出てきてしまった訳じゃ」

「今まで知らなかった価値観に触れると良い意味でも悪い意味でも変化がある、と」


「そうじゃ。特に都会とは違いワシら田舎者じゃからな。騙すのも容易いし価値も知らないから安く手に入る物もある」


 なるほどね……文明の差って話だよなぁ。文明が発達したところから未開の地に行けば魔法使いみたいな存在にだってなれるし、その差を使ってその地を占領し現地民を奴隷みたいに扱える。マダムが現地の人を多用し色々教えているのもそう言った行為を未然に防ぐ為かもしれない。


未知の知識ばかり並べられて騙されかけても、一つでも自分が知っているものがあってそれを相手が間違っていたとしたら、ちょっと待てよとなる可能性が生まれる。


「そして両方知って漁夫の利を得ようとする輩も居る、と」

「何だお前ら」


 暫く傾斜を登り山道に入り掛けた所で見張りの人間らしきスキンヘッドに会う。


「あ、こいつギルドのお」


 言い切る前に僕たちは二人の鳩尾を叩いて気絶させ近くの繁みに隠し、奥へと進む。どうやらヴァンパイアの仕業じゃなく人間の仕業らしい。人間同士で争ってる場合じゃないだろうに。


「誰だお前たち!」


 何か高そうな鎧を着た集団が武器を手にこちらに向かってきた。定時連絡の時間だったのかな。


「臆するでない。あの程度御主なら問題なかろう?」


 僕はギルド長と共に疾走し、集団に襲い掛かる。向こうの態勢が整ってない今がチャンスだ。集団でもリーダーっぽいのを叩いてから周りを潰す。


「ぐあっ」

「ひぃいい!?」


 ギルド長の拳が鳩尾に先に入り、僕の右拳が体をくの字になったそのリーダーっぽい奴の顔面を捉えて吹っ飛ばした。周りのお供が逃げようとしたものの、一人一人潰して繁みに放り投げてから進む。


「中々の集団の様じゃな」

「組織立った者たちみたいですね。それも資金には困ってなさそうな」


「傭兵かも知らん。じゃが急ぐで皆のしていくぞい」

「はい!」


 ギルド長と集団の中に飛び込み背中合わせで戦いつつ会話をする。一気に相手を処理しようとするから頭が追いつかない。一人一人と対峙し確実に最短で機能停止にする。それに集中して行くと喧しい音も段々聞こえなくなっていく。


「ば、化け物共め……!」


 気付くと後から後から来ていた兵隊も、今や立っている者は誰も居なかった。


「康久」

「はい。この騒ぎを聞きつけて逃げ始めたかしているでしょう。彼らが来た方向へ行って見ますか」


 ギルド長は微笑みながら頷居た後走り出す。僕も置いていかれないよう走り出す。


「ぞ、賊が来たぞ!」

「賊はお前らだろうが!」


 僕はその言葉にカチンと来て加速し馬車の荷台に立っていた兵隊に飛び蹴りを浴びせ、荷台に乗り込む。


「く、糞っ!」

「どうする? お前はこのまま死ぬかそれとも町に戻るか二択じゃ」


「ま、待ってくれ俺は頼まれただけだ! お前たちの」


 そこまで言ったところで首がガクンとなる。見ると首に矢が刺さっていた。この速度の出ている馬車のしかも兵士の首を狙い打てるなんて……。僕はその時例の伝言を思い出す。


「なるほど……まさか上前を撥ねてくるとは」

「嘘こけ。御主全然違うのを頭に思い浮かんでるだろ?」


 素早い突っ込みに苦笑いで答える。全くもって面倒臭い。まさかヴァンパイアよりも面倒な敵が出てくるなんて。


 

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