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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
ヴァンパイア狂想曲

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退屈を抜けて

――こんな文字は見た覚えがない!――


 それは遠い日の記憶。書斎から祖父の声が居間で祖母と寛いでいると飛び込んできた。暫くして興奮した顔をした祖父が一枚の古びた、今にもボロボロと崩れそうな黄ばんだ紙を掲げながら現れた。そして僕たちにそれを見せた後、満面の笑みと胸を張り腰に手を当てて自慢げなポーズをして見せた。僕と祖母にはそれが何なのか分からず首を傾げていると、祖父は段々がっかりした顔になり最後には俯き肩を落とした。そして言う。


――これはひょっとすると最古の神代文字かもしれないんだ!――


 僕と祖母は改めて祖父の持っていた紙を見る。何やら文字とも付かないものが書かれていた。


「康久」


 その声に飛び起きる。横でミレーユさんが耳に髪を掛けながらこちらを覗き込んでいた。


「あ、すいません」

「違うのよ。寝る時までテーブルじゃなくて良いからね? 部屋の奥に布団もあるし」


「ありがとうございます、つい」

「ちょっとまってね目が覚める飲み物をあげるわ」


 ミレーユさんはそう僕に告げて奥に下がって行った。僕は椅子から立ち上がり両手を挙げながら背伸びをする。そういや久し振りにあんな夢を見たなぁ。あれは小学校の三年生くらいの時だったか。久し振りに来た父に祖父がそれを見せたら、父が苦い顔をしていたのを思い出す。あれはなんだったんだろうか。


「どうぞ」


 目の前に水に少し黄緑がかった感じの飲み物が現れた。少しだけ口に含んで見ると、すっぱしょっぱい味がして完全に目が覚めた。そして声にならない声を出しながら口の中のしょっぱすっぱさを何とかしたくて何度も唾を飲み込む。


「凄いでしょ? ムエイリアっていう木の実を水と塩に混ぜて漬けて置いて出来た飲み物よ」


 少ししてやっと普通の水が出てきたので一気に飲み干す。それでも完全には無くならい凄い。


「さ、今日ものんびり待ちましょ。焦れば相手の思う壺だわ」

「そ、そうですね」


「さ、そうとなれば始めようぞ」


 ギルド長が降りてきたので一礼し挨拶をした。始めるってなんだろう。


「何を始めるのかって顔しちょるな」

「あ、はい」


「朝だでな、体を本格的に動かす前に軽く動くぞい」


 そう言われたので一緒にやったけど、どこが軽いのか。腕立てや互いの手を全力で押し合ったり基礎鍛錬だけでなく、拳や蹴りを出した時の姿勢のチェックに手首と手首を付けて相手を倒すまでの鍛錬とたっぷり過ぎる内容だった。


「さ、また昼にな」


 朝食を三人で食べた後置いていかれる。二日目とはいえいい加減飽きてきた。引き篭もりだった頃はずっとでも飽きなかったのになぁ。やっぱりパソコンとかが無いのが大きいんだろうなと思う。この鍛錬食事書類仕事鍛錬食事のサイクルはこの後三日ほど続いた。


「康久おるか?」


 それは待機六日目のお昼前。ギルド長が昼食の時間より早く戻ってきたのでこれはと思い席を立ち入り口まで行く。


「ミレーユ、康久に軽鎧を着けてやってくれ。ワシも仕度して来る」

「篭手は厚めのを?」


「そうじゃの……いや今回はボウガンも持っていくで普通ので良い」


 今回はボウガンもいるのか。


「じゃあ康久、ちょっと待ってて」


 駆け足でミレーユさんが奥へ行き戻ってくると、茶色い見た感じ皮で出来た胸当て肩当てそして腰当を携えていた。そのまま僕に付けてくれる。


「これで多少はダメージを軽減できるはずよ。はいこれは脛当てと膝当て。靴はそのおしゃれな靴のままで良いわね?」


 僕はお礼を言って膝当てと脛当てを付ける。格好だけだけど何だか冒険者みたいでワクワクしてきた!


「よしよし、大分様になったの。じゃあ行こうか」

「どこへ行くんですか?」


「気になる知らせを受けてな。女性が数人行方不明らしい」

「誘拐とかではなく?」


「ありえない話じゃないな。人を物のように扱う連中も居る。この時期に間が悪い。じゃがな、そこを逆手にとって釣られた振りをしようと思っての。もういい加減飽きたじゃろ?」


 僕は大きく頷いてしまい、間があって初めて正直すぎたのに気付き謝罪した。


「よいよい。誰も確たるものは無い訳だしな。これで発案者の顔も立てたし頃合じゃよ」

「町に連絡は」


「リュクスにして貰っている。我らだけで動くんだから上には何の問題もなかろうて」

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