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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
ヴァンパイア狂想曲

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ヴァンパイア講義の続きと書類整理

「そう、人を凌駕する能力を持ちながらトップにもなれず、また人を支配するに至らないのは何故か。簡単な話だけど自分の力を持て余してるんだ。それをフルで活用する体も無ければエネルギーもない。だからこそコソコソ泥棒染みた真似をしているのさ」

「泥棒よりも悪い強盗じゃな。実際に被害に会っている人間は多い。ヴァンパイアでもヨーハンのような派閥とそうでない派閥がある。今回のは別の派閥」


 知性があり言葉を発すればより多くの争いが生まれる可能性が高くなるのかな……。


「ま、何にしても人を凌駕している事実は変わらない。特に夜になればスタミナも増え陽によって抑え付けられているものが全て解き放たれる。彼のような若めのヴァンパイアなら特にね」


 ドラヴと言う頭がツンツンバサバサした人のあのスピードが更に夜交戦すると上がるって中々厳しいよなぁ。こないだのも捉えられたとは言えないし、修行した今どれだけ夜のバージョンでも渡り合えるか不安だ。


「なーに若いだけなら隙もあろう。ご丁寧にお主達に挑戦状を叩き付けて来るような奴じゃからな。兎に角会議で決まった配置で今夜から警備を強めていく。向こうは攻めこちらは守備。向こうが来るのに神経を尖らせ過ぎては持たんからな」

「あれもう配置決まったんですか? 僕は?」


「御主はここ」

「え、ギルドでのんびりしてて良いんですか?」


 僕がそう言うと皆がニヤリとして席を立った。その後外へ出て行ってしまい、僕だけが取り残されてしまう。所在なくうろついた後、外へ出ようとすると、槍が交差して目の前に現れた。


「え!?」

「外出禁止だ」


 今はまだ夜じゃないのになんで?


「御主は今日からそこに居てもらう。要するに餌じゃよ。ドラヴとかいう若いヴァンパイアは遊びつつ繁殖する相手を襲おうとした。しかし御主に想定外の一撃を加えられて退散せざるを得なくなった。プライドの高い彼がそのままお前を避けてこの狩りを続行するとは思えんじゃろ?」


 あーなるほどねってなるけど、その間僕は暇になってしまう……。


「良い子で御留守番してるんじゃよ? ワシは用事を済ませて帰ってきたら修行の続きをしてやるでな」

「お兄様、私たちも出稼ぎに行ってまいります」


「お仕事ありがたいですね博士!」

「かったるい……」


 好き勝手言って去っていく人々。僕はそれをただ見送るしかなく、折に入れられた動物みたいになっていた。


「はい、じゃあ暇そうだからこれお願いね」


 ミレーユさんがやってきて僕に書類の山を渡すと足早に去って行く。パラパラみているとギルドの議事録の整理と首都のギルドとのやり取り、それに依頼に関する書類や予算などが書かれたものもあった。そしてその山の上に紐があり、穴を開けるパンチもある。雑用しろって話か……。


「まぁいっか暇だし」


 書類を見つつ紐で纏めて結びを繰り返す。この町は最近大きな発展を始めたようだ。そのきっかけがマダムカトリーヌが移住してきたのが切っ掛けだったと記載がある。彼女の家は首都の名家で家族は国の研究チームに所属し難病などの研究に携わっている。中には政治家になった親戚も居るらしく、だから町での扱いは丁寧にするよう指示を出していた。


マダムはそれをやんわりと断りつつ雇用を生み出し資材を使って整備をし町に貢献した。それから首都から移住してくる人も増え、別荘を建てたりと経済も潤ってきて豊かになって来た矢先の今回の事件。どこか戸惑い以上にヴァンパイアを下に見ている感じが議事録から伝わってきてとても危うい気がした。それに僕を生け贄にしようと言い出したのはこの町の議員のようだ。


「嫌だねぇ人の命に重い軽いは無いはずなのに」


 とても難しい問題だ。皆が皆それを気をつけて互いを尊重し合えればいいけど、主義主張が違う相手を罵り蔑んでいる人たちを見てきただけに、それが解消される時が来るのかとても疑問に思ってしまう。爺ちゃんもよく非難されていたっけなぁ……研究していた文献がでっちあげだとかなんだとか。


「止め止め」


 頭を振って仕切り直す。自分の中に湧き上がる黒い感情を振り払うように書類の整理に没頭した。

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