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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
カイテン防衛編

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オルランドの望み

「さーってとオレもお仕事しようかね」

「良いのか?」


「元々その為に来たんだから当然だろ? 大将首はお前さんにやるよ」


 笑顔でウインクしつつ右手でサムズアップした後、クニウスは堀へ飛び込み光を放つ。姿を変えたクニウスは全体が剣山のようなデザインのフォームから少し剣が減り背中に剣で作られた羽が生えていて、羽ばたかせながら浮遊しつつ海竜を攻撃する。


オルランドはその衝撃に合わせてこちらへ飛んでくる。近くにある物で投擲して打ち落とそうかとも思ったけどまた探すのは面倒なのでそのままにしておいた。着地した後背中に背負っていたバックラーを取り腰の得物を引き抜いて構えてこちらへ近付いてくる。


「何か遺言はあるか?」

「死ね」


 破顔一笑した後目を見開き死ねと言いつつ斬りかかってくるオルランド。コイツも修行したりはしただろうけど、僕はその間数多くの戦闘を経験している。修行も毎日デスクワークの合間にしていたし、ミズオやイトルスそれに蜥蜴族やエルフ族の兵士とも組手をして研究したりもしてきた。


「どうした? どんどん攻めて良いぞ?」


 師匠に一から習い完全な習得までは事情で出来なくなったけど自分なりに体の使い方などの理解を深めた。そしてそれを見ていたかのように師匠は自分で後は学べと伝言してくれたのは嬉しかったし、師匠はやはり師匠だ師事出来たのは幸運だったなと思わずには居られない。


「くっ……であっ!」


 武術会の時も思ったけどオルランドは前線で戦ったり一騎打ちするような星の元には生まれてない。腕は立つけどそれ以上に策を巡らせて人を動かすという真似出来ない物を持って居る。だのに本人はそれを認めずに拘っているのが本当に勿体無い。


剣筋はとても素直、フェイントも綺麗に入れてくるし大きな隙を作らせる為の手順も出来ている。だけどそれが全て読める程丁寧で分かってしまう。元の世界の僕だったらあっさりやられただろうに。


 暫く最小限の動作で避けいなしているとオルランドは距離を取る。師匠の境地には全く辿り着けないけどそれでも何度か見せて貰った気迫というか領域と言うかを間合いに張りながら受けていたので、聞いて居ればプレッシャーでかなり体力も気力も削がれるはずだ。


無のようで一番奥に研ぎ澄ませた刀が見えるような感覚がオルランドにも伝わっているんだと思う。見えている肌の部分に多量の汗が流れている。人間の本能的な部分が恐怖を伝えていて、それをねじ伏せて掛かって来ているんだろうけど本能はどうしようもない。


「オルランド、まさか海竜しか隠し玉が無い訳じゃないだろう?」


 僕の言葉ににやりとするオルランド。当然隠し玉は持って居る筈だ。それを出し渋られるほど低く見られていたのは悲しいなぁ。


「最早どうでも良い自分の命すらもなぁ!」

「全く嬉しいねぇそんなにまでして倒したいと思って貰えるなんて」


 仁王立ちして気張るオルランド。顔中の血管が浮き上がり顔を真っ赤にしている。


「貴様さえ、貴様さえ現れなければ会わなければ戦わなければこんな事態にはならなかったのだ!」

「そうかすまなかったな。こっちも初めてこの国に来たんで良く分からなかったんだよ」


 素直に謝ったのが引っ掛かるのか一瞬血管が減ったが再度踏ん張った。少し待って居ると体中から湯気が立ち上りそれが全身を覆う。禍々しい気がその中で渦巻きやがて煙が風によって消えそこに現れたのはカエルを巨大化して二足歩行にし、更に肌をゴツゴツさせた怪人だった。


その姿に唖然としているとながーい舌を出してゲロゲロしている。何も可笑しくない、いや可笑しいのか。


「いや、すまんけど何でそれになったの?」

「カエルは虫を食う」


 ニヤリとしてそう言った。カエルは虫というかハエを食うんだろうけど……ああ僕の変身した姿がアリっぽいからそうなったのか。アリクイとかにすりゃ良いのに何でカエルなんだ。


「この姿戒め。お前を倒す、その為だけ!」


 何かラップみたいな感じで言われたんだけどこっちもラップで返した方が良いんだろうか……。困るなぁそういう教養無いんだよなぁ。韻を踏んで真似すればいい感じなのかな?


「え、えーとヘンテコな姿、俺のマネ姿、違い過ぎる姿?」


 咄嗟にしては頑張った褒めて欲しい意味分からんけど。つかオルランドカエルが首傾げてるのが腹立つわなんやねんコイツ……!


「それ役不足。変われ今直ぐ。それで解決」

「まだやんのかよラップ。てか気軽に言うな簡単に変身出来るならやってるんだわ」


 気軽に絶命して堪るか。条件としては精神が持つ限り死なないってだけなんだから今だってよく持ってるなと思うレベルなのに。


「ならばお前が死ね」

「元からそう言う話だろうに」


 漸くラップバトルが終わるらしいので安心した。改めてオルランドカエルは片手剣とバックラーを構え僕も腰を落として構える。見た目通り舌を上手く使って牽制してくると思うけどそんな訓練する時間があったのかは疑問だ。警戒しつつ掻い潜り腹に叩き込むと決めて間合いを計る。


堀で海竜と激戦を繰り広げているクニウスが堀の壁に叩きつける度に揺れる。明らかにクニウスが優勢で決着は時間の問題なのは見なくても分かる。流石ルナの力を得ただけある。これもオルランドにとっては誤算だったろうなぁ。


そう思ったけどオルランドカエルは冷静にこちらを見ている。時々視線を掘りに向けたけど、隙にもならない程度だったのでそのままにしておいた。事態はほぼ膠着し相手の主力はしっかりこっちで抑えている。それでも焦らないのはオルランドの願いがかなったからだろう。


「仕方ないなぁ」


 別に神様でも無いから願いを叶えてあげる必要は無いけど全てを掛けてこの一戦に望むいじましさを思えば答えたくなるのが人の情け。成功する確率がほぼ無いのはオルランドが一番よく知っているのだから死と引き換えの対決であるのは分かっている。


「変身!」


 覚悟を決めて丹田に力を入れ己の身を焦がす。強烈な火傷による痛みと酸欠が遅い程無くして意識を失う。毎度長く苦しまないだけまだマシだと思っている。こんな状況を耐えられるだけの精神が僕にあるのは驚きだけど。


「さぁ今度こそオーラスだ!」

「望み!」


 視界も感覚も全て戻り言葉すら思う様に話せないオルランドと相対する。それまで大人しく様子見していたオルランドカエルは二コリと微笑んで僕に向かい飛び込んできた。そして落下の勢いを付けながらバックラーを前にして突っ込みつつ斬り付けてくる。


バックステップでそれを避けたけど着地すると同時に本当にカエルみたいに飛び跳ねて突っ込んでくる。片手剣を潜り抜けて脇を通り過ぎるも直ぐに追い掛けてきた。変身するだけでそれそのものの力を得られるなんて便利だなぁ。チートってああいうもんだと思うんだよなぁ。


――何か?――


 地獄耳は健在らしい。帰って来たからにはなるべく言動には気を付けないとと思いながら抗戦を再開する。それにしてもこの力、やはりルナというか月読命の研究の成果なんだろうな。となるとやはりクロウが噛んでいるのだろうか。


人を別の物へと変化させるなんてまさに神様だなと思う。僕らの外殻装着はクロウがエルフに与えた知識から研究で出来たもので、こっちは完全に別の存在に変えている。この目的は何なんだろう。神様だけど絶対ではないのだろうか。


「グゲェ!」


 捉えきれない僕に苛立ったのかついに舌を伸ばしてきた。避けた後旋回して僕の首に巻き付こうとしたのでしゃがんで避ける。間合いを詰めていたオルランドは態勢が崩れた僕を狙い斬り付けて来た。


転がりながら避けているけどそれを執拗に追い掛けてくる。なるほどこれは厄介だ。オルランドはとても嬉しそうな顔をしていたけど、カエルと相性が良いんだろうか性格的に。人間では手に入れられなかった身体能力と見慣れない動きはオルランドの教科書のような動きというものの短所を消した。


更に的確にしっかりと狙い力の逸れない一撃は喰らえば大きなダメージになる。シルバー上位レベルのオルランドはカエルになることで遂にゴールドランクにまで上がった。

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