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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
カイテン防衛編

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オルランドの手口

「この場合どうするべきかな」

「まぁお前さんの客が多いから潰し方は任せるよ。オレなら東に屯してる蜥蜴族と交渉して手柄を立てさせて自分のところに吸収し易くすべく依頼を出してその間にオルランドを探すかな」


 これ以外に無い提案をして来るクニウス。首都を抜ければオルランドの思う壺でテロは確実に表沙汰になり竜神教(ランシャラ)は老若男女問わず一人残らずこの国から消える。彼ら全体の蜂起であるなら仕方ないがそうでないならただの虐殺だ。そんな真似をソウビ王にさせる訳にはいかない。


僕は早速僕の兵にだけ分かる合図を家の屋根の上に出しミコトとクニウスと御茶をのんびりしつつ待つ。暫くして蜥蜴兵が一人ローブを纏って現れ僕は先程の件を手紙に認めイザナさんへ渡すようお願いした。


「取り合えずここで舌を噛み切ったところで意味は無い。お前さんたちの子供はこっちで確保してる。理解したか? なら喋れ」


 その後地下のミリーの元へ行く。見張りの兵に囲まれた彼女は僕らの姿を見つけ睨んで来たがクニウスの言葉に目を丸くし項垂れる。初めて聞く話に驚き視線を向けると


「人質って訳じゃない。何しろ竜神教(ランシャラ)だからな同胞だよ。オルランドは狡賢い奴だコイツラを引き込んで上手く使えたのには理由があったんだ。オレも仕事してるんだぜ?」


 そう言ってウインクしたので溜息で返しミリーの口の物を兵士の人たちに外してもらう。母親にとって子は大事である、というのがせめて他人であっても悪人であっても見れたのはほっとした。ミリーは抵抗する素振りも見せず大人しく諦めたように笑った後口を開く。


「アンタも竜神教(ランシャラ)だったのね」

「そうだよお前さんたちは知らないくらい上の者なんでね」


「私たちの子」

「ヨリコは良い子にしてる。テロが起こっても手出し出来ないところに逃がした。南部地域っていう安全なところにな」


 ……閉口する他無い。人の土地に重要人物を連れ込んで黙ってるなんて。一歩間違えば竜神教(ランシャラ)と最初から繋がって居たとみられかねないのに。


「最早私には何も出来ないわね」

「オルランドはアンタたちが上手くやってテロ部隊を首都に引き込んだ後滅茶苦茶にして上手く行こうが行くまいが全部殺すつもりだったんだ。あんたらの子はあんたらに隙を作る為の餌。ちなみにそれを提案したのはお前さんたちの妹を弄んだ没落貴族様だ」


 最後の言葉にミリーは激しく反応し括りつけられた柱からこちらへ向かって飛び掛かろうとしてきたので兵士が慌てて抑え込む。ホントオルランドって奴は陰湿で嫌な奴という他無い。彼女たちに恨みを思い起こさせ目を晦ませ、更には妹の件で没落した貴族に資産を投資させるよう持ちかける際に彼女たちを餌にした。


そして子供を直接人質という形には取らず首都に紛れ込ませてテロの際に始末し更にはミリーたちにそれを伝えて狼狽した隙を突いて彼女たちも始末。恐らく主犯を彼女たちに仕立て上げ竜神教(ランシャラ)はカイテン王族の恨み辛みに巻き込まれただけ、復讐の蜂起をと呼びかける算段だったんだろう。


「没落貴族共の恨みは相当粘着質らしいなここまで執拗だと流石のオレも呆れる」

「僕に対する手は何かないの?」


「オルランドの可笑しなところはそれだ。お前さんとの戦いに関しては一切そう言った真似はしてない。まぁソウビ王とかその娘関連を入れるとそうでもないのかもしれんが、お前さんが思い悩み鈍るような手は見当たらなかった」


 相変わらず掴みかねる奴だオルランド。策士としてそれなりの手を打って来てるのに狙いである僕には敢えて何もしてこないのか。


「ただまぁアイツの望みはお前さんも分かってるだろうからそれをする為に必要な手は幾らでも打ってくるだろうから気を付けるこったな」


 まぁそれは願ったり叶ったりなので構わない。つくづく惜しいなぁ仲間になる気は無いんだろうけど惜しい。好ましくは全く無いけど能力は認めざるを得ない。手段を問わず目的を達成する為に必要な手を打ち保険も掛ける。


その上どの依頼者の要求にも応えているから本人たちは満足だろう保険に関して知らなければ。恐らく没落貴族も当たり前のように保険にされているのは間違いない。


「取り合えず悪いがアンタの身柄はこのままだ」

「私が動かなければギャラックたちの動きも分からないでしょ」


「んなこたぁないんだなこれが。あまり竜神教(ランシャラ)を舐めない方が良い」


 今回は没落貴族や暗闇ギルド、竜神教(ランシャラ)の命に反したデュマスデュロス兄弟が行動を起こそうとしているだけで、首都の竜神教(ランシャラ)教徒たちは別に乱を起こそうとは思っていない。その証拠に南に移住する計画に納得してイトルスと調整までしていたんだから。


それ以外にもここは首都で日々テロなどの不審な行動には目を光らせている。ソウビ王は抜け目のない人だから簡単に苦はずもないジョウさんも首都に居るし。


ただソウビ王としては今回の件はどちらでも良くこちらが失敗した場合はそれをネタに戦端を開くから警備もガッチリと言った感じではない。だからこそオルランドもギャラックたちも余裕で入れたわけだし。

 

直接襲撃を仕掛けミリーも始末しようとしたオルランドはどう動くか。首都での計画が漏れたと思って速めてくる可能性は十分ある。こちらとしてはズルズルと伸ばされても困るので知っている風を装って動くか。


「まぁ暗闇ギルドの連中は所詮流れ者。反王活動としても恨みは深かろうが日は浅いし結束も無い。金と権力に目がくらんで王の処罰を受けた貴族連中も加わって混沌としている。」

「理屈では動いてこないか」


「家畜の檻を解き放つだけ」


 解き放たれた家畜は目的に向かって暴走する他無い。例え何十もの防衛線があろうと無視して突っ込んでくる。賽は投げられているんだな最早。


「奴らの居所は?」

「それこそ各町各場所に居る。オルランドの合図で結集し一気に来る算段だ。没落貴族のみでも中々数は居る。王の兵隊を動かせるなら潰せるが」


 それは望むべくもない。形としては僕の交渉が失敗して蜂起したってなってるからな。イトルスの所為じゃ無いと言いたいところだけどもうそれもどうでも良い話になってしまっている。


「まったく割を食うよなぁ南も現地調達、良かれと思ってやったものにまでケチが付く」

「康久さんだけが頼りです、頑張りましょう! 私も付いてます」


 ミコトが腕を立て両拳を握り気合の入った顔をしながら励ましてくれたので少し気は楽になった。


「そう言えばミコトをもう狙わないのか?」

「何の話だっけ……ああ前にそう言えばそんな言葉を口にした気がするなそう言えば。今や月読命ももう竜神教(ランシャラ)には居ないし狙う理由も無いし現神はブラヴィシ様だけだから認めんだろう?」


 そう言われて納得する。同盟を結んだ月読命に言われて狙ったのだろうし、現神をブラヴィシ以外に認めては教義が可笑しくもなるんだろう。そんなものは存在する筈が無いって片付けられて良かった。ミコト自身に神様として出来るものは今何も無いんだから放っておいてくれるのは有難い。


「結構。取り合えず僕らは釣り糸を垂らすくらいしか無いかな今のところ」

「そうなるな。派手に糸を垂らしてオルランドを釣る他無い。奴らの進入路に付いてはほぼ下水で確定だ。司祭を説得するのは難しいが今回の件に納得していない移住賛成派でほぼお前さんの信徒みたいな竜神教(ランシャラ)教徒に見回りをさせて強化している。不足分はそっちでもやってくれると助かるよ」


 一々引っ掛かる言葉を入れないと気が済まない人間が僕の近くには多いなぁと思いつつ嫌な顔をしながら頷く。クニウスは竜神教(ランシャラ)の教会で寝泊まりし、事態が動くまで日中は時々同行しそれ以外は自由行動だと言う。


ミリーに関しては自殺の可能性は無いけど国に引き渡す訳にはいかないからここで過ごしてもらう。国に引き渡せば今回の事件が明るみに出ざるを得ないので仕方ない。

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