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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
南部地方編

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マギ・イザナ

「す、凄いですねこの部屋」

「暇を持て余しててな。そこへ掛けるがいい」


 そう言われて高そうなテーブルに備え付けてあった椅子に座る。隠者さんは薪ストーブの上の平たい場所にヤカンを置き、近くの急須を手に取り水が沸くのを待った後注いでコップに二つ注いで向かい合うように座りながら僕に渡してくれた。


「良くぞ来た康久。だが遅すぎると言っておくぞ」


 ツンデレかな? 


「い、いやぁ遅いも何も先日蜥蜴族の女王から聞いたばかりでして……」


 圧に押されて引きながらそう答えると机に突っ伏した。


「クソッ……エルフの連中まで俺を忘れるとはどうなってるんだ? あんなにもエルフに尽くしてやったのに何という不義理!」

「ま、まぁまぁ。マウロ先生もほぼ記録が詳しく残ってませんでしたし」


 そう答えると顔を上げて哀しい表情になる。


「マウロの件は聞いた……痛恨の極みだよアイツは良い奴だったのに。閉鎖的な環境で自分たちこそが至高の存在であるなどと奢った結果世界樹にすら見捨てらるくらいだからやるだろう。お前の出現は俺にとってもエルフの未来にとっても望ましい。その点に関しては礼を言う。だがしかし遅いのではないか!?」


 そこから自分が如何にエルフの里の初期の改革に携わり後の世に託したか、自分が居ると頼り成長が無くなると考え里を離れたかを熱弁される。一通り気が済んだのか終えると深呼吸してお茶を含んだ。


「世界樹が切り倒されエルフの里が解放されたのも知っている。それに関して気を揉んだのも事実だか一人芝居だったらしいな。お前は良くやっている……だが俺が指揮すればもっと早く進んでいたのは間違いないのだ」

「み、皆頑張ってるんであれ以上スピード早いと付いてこれない気が」


 そう言うと紙を取り出し如何に最初緩くしたら後々厳しい作業がし辛いかというのを力説され更に効率が悪い点を列挙されその日はその紙を持たされ追い返された辛い。


エルフの里に戻り皆にその話をするとエルフの長老たちやアルミは急いで資料を探しに出た。夜半過ぎに見つかった資料によると確かにエルフがこの土地に住むと決めた時マウロ先生の他にエルフの大賢者が居たらしい。


「マギ・イザナさん、かぁ」


 ここでマウロ先生の本名も明らかになった。マギ・マウロ、それが先生の本名だった。何時か先生の奥さんや娘さんに再会したらそれを伝えよう。何か意味がある訳じゃないけど、伝えた方が良い気がした。


「相当古い文献ですが間違いないかと。それによりますと彼らは世界樹と交信したとも書かれていました」


 アルミの話を聞き首を傾げる。イザナさんは星の意思と会話してないって聞いたけど違うのかな。


「それにしてもエルフって長生きしすぎじゃない?」

「彼らは例外と言うか私たちにも彼らの長寿は分かりません。正しければ何千年と生きてる可能性がある訳で」


 見た目は青年だったんだけどあれで千歳とかだとしたら魔法や魔術(ミシュッドガルド )が関係しているとしか思えない。ただブラヴィシは使ってるって言葉からすると自分は使ってないと聞こえるし……。


「まぁ明日本人に直接聞いてみるよアルミそれに長老たちも有難う、ゆっくり休んでください」


 僕らは会議所を閉めて解散し眠りに就く。そして翌朝改めて隠者のエルフことマギ・イザナさんを訪ねる。罠は相変わらずあったけどなるべく壊さないように避けつつ家の前まで行くと、イザナさんは腰に手を当てて仁王立ちで待ち構えていて行き辛い……けど目が合ったので行かない訳にもいかず挨拶をしながら近付く。


小言を言われた後謝りつつ中へ入れて貰いお茶を頂きながら昨日調べて貰った話をすると大きく頷いて少し機嫌が良くなったようでホッとした。


「やっとそこに辿り着いたか。まぁお前の偉業振りに比べれば俺のしたものなど取るに足りないので忘れてしまっていても仕方が無い」

「いやいや偉業も何も棚からぼたもち……じゃ通じないか。運が良かっただけで、え!?」


 イザナさんが急に眼を見開いて身を乗り出して来たので驚き椅子に座ったまま後ろに引いた。


「今何と言った?」

「え? えーと運が良かった」


「違うそうではない! その前だ」

「あー、偉業も何も」


「その少しあと」

「棚からぼたもち?」


「お前ぼたもちをしっているのか!?」


 そこに反応したのか……うちの祖母ちゃんが良く作ってくれたもち米を炊いて潰し丸めた後あんこでくるんだ日本の食べ物だ。そのまま説明するとイザナさんが目を見開いたまま大きく頷く。


「つ、作れるのかお前」

「作れるも何ももち米無いしあんこもないから作れませんね今は」


 そう言うと心底残念そうに溜息を吐くので申し訳ない気持ちになった良く分からないけど。


「なるほどな材料があれば何とかなると分かっただけ良好だ。ならば材料を取りに行くとしよう」

「何処にです?」


「カイテンから東に出て海を渡った先にあるナギナミの国があり俺の刀はそこで買った代物だ。御前のは違うようだが何だか作りが似ている……同じ意匠ではないか?」


 イザナさんが刀を抜いてテーブルに置いたので僕も但州国光月花を抜いて並べて置く。但州国光月花のは一品物、イザナさんの刀は量産品て感じだけど何となく似ている気はする。まさかルナにこれを送った人がナギナミの国に居るのかな。


「まぁ行くにしても東の領土を確保せねば渡れまい。お前の御蔭で西は大分静かになった。余程の阿呆でなければ今あそこに入ろうとは思うまい」

「有難い話で拮抗状態が成ったと聞きました」


 そこで少し沈黙が続く。僕は笑顔で御茶を頂きながら家を見回していると、テーブルが揺れたので地震かと思い見るとイザナさんが震源地らしい。僕が首を傾げると舌打ちをされる何でだろう。


「お前ここに何しに来たんだ? まさか茶でもしに来た訳ではあるまい」


 僕が視線を上に向けて首を再度傾げるとテーブルが天井に浮いた後地面に着地する。どうやらイザナさんは怒って居るらしい良く分からない。


「……なるほどお前がそういう奴であるというのは理解した。なら代わりに言ってやる。俺の力を借りに来たのではないのか!?」

「あー!」


 掌に拳をポンとしてガッ〇ンした瞬間鬼の形相で刀を握り斬りかかって来たので但州国光月花を手に取り急ぎ家を出て里へと逃げ帰る。エルフの聖人は短気だったとは意外だ気が長そうなのに何千年も生きてたら、ってそれ聞くの忘れてた。


「あのー」

「何だ!」


「何千年も生きてたって本当です?」

「生きてる、だ馬鹿者!」


 どうやら本当らしい方法を聞きたいけど避けつつ逃げるのが精一杯でその追撃の凄さは舌を巻く他無い。恐らく僕の逃走方向を見越して攻撃を仕掛けて来ているから差が広がらないんだな……とは言え他に行くところも無いし。


「罰を受けよ!」

「それ受けたら死にますよ!」


 エルフの里の入り口を超えて中央広場に出る。皆僕らの勢いに押され沢山いた人は皆逃げる様に去った。但州国光月花で一回受けて鍔迫り合いをする。


「貴様も死なんのだろ?」

「え?」


「ならば俺の怒りを鎮める為にいっぺん死ね!」

「冗談!」


 力で押し弾き剣戟を交わす。技は凄いし長年の鍛錬の賜物で持久力もエルフよりあるみたいだけどやはりそこは種族差が出て来て次第に僕が優勢になる。


「閣下!」


 ミズオが駆け付けて来て割って入ろうとしたので押し退けて但州国光月花でイザナさんの刀を防ぐ。


「貰った!」

「マギ・イザナ様だ! 聖人様だ!」


 態勢が悪い僕を見てイザナさんは刀を引き胴切りしようと構えた瞬間、脇に駆け付けた長老たちが声を上げイザナさんが止まる。一瞬顔が緩んだものの再度顔を引き締めた。あれもしかして喜んでらっしゃる?


「おお! あの聖人様が帰還なされた! 皆の者喜ぶがいい!」


 エルフの里の皆はきょとんとして誰もピンとこない。そりゃ図書館に埋もれてたボロボロの書籍の登場人物がこんな若いから仕方ない。それを女性陣が口にするとまた緩んだ正直だなこのおじいちゃん。


「そ、そうなんですよエルフの未来の為に永い眠りから今目覚めたんですよ! ね?」


 僕がそう振ると満更でも無い顔を一瞬したこれは後一息なのでは? そう思ったので長老に目配せすると更に囃し立て皆その意図を理解してくれたのかノリノリで歓喜の声を上げた。イザナさんは最初今更何だよみたいな感じだったけど最後には両手を空に上げてハリウッドスターみたいな感じで声援に応えた。


「聖人ゲットだぜ……!」

「何ですそれ」


 イザナさんを盛り上げ隊のエルフの里の人たちに後は任せて僕は通常業務に戻る。賑やかな外の声に安心してつい心の声が漏れてしまった。

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