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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
南部地方編

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森に潜む隠者

ジョウさんから直接引継ぎしなくとも何もせずそのまま指令として座れるような体制が出来上がっていた状況に目を瞑り心の中で感激し感謝した。敢えてそれをそのまま言葉にするのは無粋なので言わないけど、師匠と同じくらい尊敬出来る大人に出会えて嬉しくなった。


「今後の施策などについては都度会議を開いて決めて行ったり実施状況を見て変更したりとしていくとして、こちらから提案がありまして」

「提案とは」


 僕は正式に南部司令官の任に着くと同時に各種族から代表者を集めて側近とする考えがあると伝えるとテグーさんは思う様にしてもらって構わないと言ってくれたので一安心だ。その人選についてはテグーさんに一任すると言うと小さく笑った後でミズオを推挙した。


「ですがテグーさんもミズオが居なくては困るのではないですか?」

「それは勿論です。ですが私たちの中からもミズオに続く様な人材を見つけ育てていかなければなりません。そうでなければ蜥蜴族は人間族と肩を並べられる種族にはなれない。ジョウ将軍閣下と共に仕事をしていて痛感しました。人間族は私たちの遥か先を歩んでいると。このままではジョウ将軍閣下や康久指令のような私たちを気に掛けてくれる方々が去った後は悲惨な運命が待ち受けているのは間違いありません」


 僕が不勉強なのだろうけど恐らくこの辺りでも滅んで行った種族が居たんじゃないかと思う。生きて行く為に相手を滅ぼし明日を得なければならない状況もあっただろうし、ブリッヂス王のような野心家であれば勢力拡大の為に進んで滅ぼしただろうし。それを見て更に資料作りからお年寄りから聞かされて知ったらそう思うのも無理はない。


それにしてもテグーさんは以前会った時よりも更に上に立つ人間の気概というか風格と言うか、僕が表立って出るよりも蜥蜴族に関してはテグーさんを全面的に立てた方が安泰だなと思わせるくらいの人になっていて嬉しい。


「まぁ先の話は分からないですけど今現在テグーさんを中心に蜥蜴族は別の未来に向かって歩き始めた訳で、我々はあくまでそれをお手伝いするに過ぎません。ただ後の時代において人間族と蜥蜴族が良い友人で居られるように良い成果を得たいとは思っています」

「それは私もそう思っています。子孫に大切な友人を残す仕事をしていると思えば命の掛けようもあると言うもの」


 テグーさんの言葉に嘘は見当たらない。今冒険者が盛んになり経済が回り突然変異のようなゴールド帯が増えたとは言えこの星の全てが見えた訳では全くない。恐竜は存在し未開の土地は果てしない。


人間族が生き残る為には少しでも多くの友人そして対等であれるよう知恵と力を磨く他無いし、その中で僕が与えられた中で出来る仕事をするまでだ。世界樹を見つけるにも一人では果てしない年月掛かりそうだし。


「エルフの里からも側近を?」

「はいそう考えています。が中々難しいところでして」


 エルフはこれまで世界樹に守られ他の種族に比べて安寧の時を過ごして来た。ハンデとして体の弱さはあるけど知識は豊富で事務処理能力も高い。力仕事などは他に回しそれに特化した仕事をして貰えれば良いと思っている。


その中に人間族からも事務処理能力が高い人間を入れて切磋琢磨してもらう試みを今始めている。今後は蜥蜴族の中にもそう言う人が居るだろうから見つけたら声を掛けて欲しいと告げる。


「やはり康久指令の思慮深さには頭が下がる思いです。蜥蜴族と言えば皮膚が固く瞬発力にとても優れている種族だと思われていますが、全員が全員そうではないのです。そうした者たちはこれまで不得手な仕事をして生きて来ましたが、この御触れが出ればそうした者たちにも光が差しましょう」

「誰でも得手不得手がありますから。何族だからこうだ! みたいなのではなくその人の能力を見たいなと。かく言う僕も人間族ですが遅れてる方でして」


 そう言って後頭部を擦ると笑いが起こり僕も笑ってしまう。今何が流行ってとか全く分からないし、僕がしている行動よりもっと最適なものはあるだろう。勿論それを吸収したいけど出来る時間は限られている訳で。


そうであるなら得意な人にある程度任せるのが良いと思う。勿論チェックは怠ってはダメだけど。


「康久指令は知っていますか? エルフの里の南西に小さな泉があるのですが、そこに一人エルフが隠遁生活を送って居るのを」


 テグーさんの言葉に驚き首を横に振る。そんな人物が居るなんて聞いた覚えが無い。シブイさんやイトルス、それにミコトや華さんにルナやアルミにも視線を向けるけど皆首を横に振る。


「何でも高名なエルフらしく、蜥蜴族の者たちも困ったらその者を訪ねていたらしいです」

「こ、高名なんですか?」


 ちょっとワクワクした気持ちを抑えきれずに前屈みになり尋ねる。それに驚きつつもテグーさんは聞いた話として教えてくれた。そのエルフは狩りに困った人たちには狩りの知恵を与え、水害に困った人には治水の提案をしたり、病に苦しむ人には薬草を探させ煎じて飲むよう伝えたりとしていたらしい。


現にブリッヂスには医者は居らずこの都市の整備はもうずっとされていなかった。その日暮らしみたいな生活をずっと続けていられたのもその人あってこそらしい。


「そのエルフ一体何歳なのかしらね」

「そうね……エルフが長寿とは言え世界樹無しでどれだけ長生きできるのかな」


「文献見せて貰ったんすけど結構自力でも長生きした記録がありましたよエルフの人たち」

「環境に適合すれば世界樹無しでも長寿なのだろうな羨ましい限りだ」


「そう言えば最近見知らぬエルフを見たと言う話を聞いたなアルミ殿」

「ええ華さんには御伝えしたんですが最近エルフの里の食糧庫が荒らされまして……」


 荒らされて食べ物が持ち去られたんだけどその場所には殴り書きで書かれた紙があったそうだ。赤ちゃんが生まれたら部屋の中に居させるだけでなくなるべく木漏れ日に当てると肌が若干強くなると。


その後アルミたちでエルフの書籍を洗っていたところ、大昔世界樹の結界が張られる前には生まれた子は木漏れ日に当てるべく抱えて日中数度散歩していたというのが出てきたようだ。


「良し! 直ぐに尋ねよう!」

「閣下もう昼を大きく過ぎてます」


 勢い良く立ち上がったもののシブイさんにそう言われて再度席に着く。初めて会う人の所に夜分押し掛けるのは失礼だし野盗の類だと思われたら最悪だ。


「ですが注意してください。中々難しい人のようです」

「ど、どんな風に?」


 どうやら行く人皆に知恵を与えたりする訳ではなく気に入るか気に入らないかで判断するらしい。問答とかされるのかと思ったけどそれはより難題になった。特にこれがって対策は無いらしく出たとこ勝負しかないようだ。


僕としてはそれならばとこのメンツで行くと決めた。誰か一人くらい気に入る人がいるだろうと。だけどテグーさん曰く一人で来ないとダメらしい。五月蠅いのが嫌いで近くまででも大人数で来たら居留守を使うと言う話だ。


「面倒臭っ!」

「まぁ隠者ですからそう言うものかと。ですが会う価値はあるのではないかと私は思います。これから先知恵のある者が幾らいても困る話にはならないでしょう。何しろ私たちには知らないものが多すぎますから」


 テグーさんはミズオに地図を持ってこさせて僕に手渡してくれた。見ればミツバチ族の花畑から更に南に行った森の中にその住処があるらしい。草木で覆われてて見辛いけど近付けば声を掛けてくると言う。


「善は急げだ。明日朝から僕はこの人に会ってきます。基本僕はエルフの里とブリッヂスを行き来していく予定で、出来ればそのうち中間地点に上層部の詰め所というかそう言うのを立てたいと思ってますので宜しくお願いします」

「それが良いですね康久指令はどの種族でも独占出来ませんからいらっしゃる場所もそのようにする方が角が立たないと私も思います」


 邪推し過ぎだろうけど”エルフばかり目を掛けないで”と言われた気もする。まぁ現状そう言われても反論しようが無いけどね。となるとこれの建設は早い方が良いかもしれない。治水が終わって安定すればエルフの人たちは僕の家建てちゃいそうだし、そうなると蜥蜴族もやりかねない。


「私は今日から閣下の側近として常時御側に仕えます。テグー様には後任を推挙していますし、何かあれば妹に伝えて頂ければ飛んでまいります」

「ええ康久指令に尽くしてくださいねミズオ。我ら蜥蜴族の忠誠心は誰にも負けぬものと示す良い機会になりましょう」


 うーんテグーさんたちは思いのほかエルフとの差を気にしてるみたいだな。まぁミズオの件もあったしブリッヂス王の件もあるからエルフが貢献している現状を見ると早めに挽回した思いが強いのかもしれない。何か思った以上に指令の仕事は骨が折れそうだ。


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