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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
南部地方編

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新たな指令

ある程度南も落ち着けば其々で交渉してもらうし僕が色々してカイテンにだけ有利には成らない様な同盟を組ませてその責任を取って辞任及び王族を返上っていうシナリオは作った。これは僕を皆が英雄扱いしてくれてるからこそ出来る話だ。国も平等な同盟を組んだ英雄に腹を斬れなんて言えば同盟自体が無くなって戦争になり兼ねない。


個人的にはそこもケアすべくハイアントスパイダーとミツバチ族に同盟に近い関係を繋いだし、蜂蜜さえあればある程度クロックベアも動かせると言うのも知っていざという時の為の作戦も作ってある。完璧では無いにしろ二手三手先に対応出来る手段を用意するのが精一杯だ。


「何か悪い顔をして無いか?」

「とんでもございません」


 悪い顔と言うかウンザリした顔を一瞬したかもしれない。でもまぁ人間族だけじゃ生きられないのは首都の出入りを見れば分かるし、工芸品なんかでもエルフの里から出て来たものも最近増えてるので特に大きな騒ぎにはならないだろう重臣は歯がゆい思いをするかもしれないけど。小さな貸しを何時までも恩着せがましくやるならそれなりの報いを受ければいいだけだ。


正直ソウビ王が寿命で亡くなられた後はどうなるか分からない。クロックベアの件を見ても絶対の忠誠を誓う者たちが集っている訳では無いのは明らかだ。ジョウ将軍が首都を離れた途端にあれだから中々難しい舵取りをしているんだろう。


「実は今回の働きに対して報いるものは無いかと考えていたのだが」

「いえいえそれには及びません。王族に取り立てて頂きましたのでそれに対する正当さを仕事でアピールできる機会があればと思ってました」


 簡単に言えば都合で王族にしたんだろうけどその分見合う仕事はして見せただけだ。文句は言わせないし南をシナリオ通りに進める為に必要だっただけの話。褒美なんて片隅にも無かった。強いて言えばミツバチ族とハイアントスパイダーと友好が持てただけでラッキーだ。


「そうはいかん。王族の地位と小さな家を与えただけでは問題になる。それ程の成果があったと国民は見ている。前回のそれも国民たちは正当だとは思っていない節があるしな」


 そう言われて苦笑いする。実は書類に紛れていた嘆願書なるものを見てしまったので何とも言えない。シブイさんは慌ててひったくろうとしたけど武人の僕は取られる筈も無く。見れば首都からエルフの里に来ていた兵士の大隊長からの嘆願書で、是非とも国を思い粉骨砕身前線に立ち戦う閣下の下でこそ働きたいという旨が達筆な字で長く書かれていた。


とは言え以前言ったように指揮能力なんてゼロなので皆を率いて戦うなんてなったら命を危険に晒しかねないので大隊長には別れ際に厚く握手を交わし是非機会があればと伝えて別れた。今回も首都に入るところから兵士の人たちが両脇に居たけど特にエルフの里の復興に来てくれていた人たちやブリッヂスに来ていた兵士は敬礼が凄くて目立っていたのを思い出す。


「過ぎた褒賞は辞退致したく思います」

「それは困る。康久が辞退したりすれば周りが困る。これは前回の比では無い。認められない」


 ……ソウビ王の顔をジッと見てみると何か企んでる気がして来た。何処か芝居じみた感じがするのは気のせいでは無いと思う。


「ではその褒賞は何に成りましょうか」

「南地域の総指令に任命する」


 あー……なるほどそう来たんですね。ジョウ将軍はこれから内部の立て直しにソウビ王と組んで仕事をしなきゃならないしソウコウ様は内政に忙しい、と。マジか厄介な問題が増えただけじゃないのかこれ? 目立つ度に罰ゲームを増やされて行くんだけど褒賞って何さ。


「あの、それは褒賞ではないのでは?」

「何故だ? 総指令だぞ? お前の好きなようにやれる。何なら国を作っても構わないと言う許可もやる。ソウコウも了承している」


 最悪だ何だこれは。了承済みの謀反をやれというのか。話の流れからしてこんなんで国を作ればカイテンが潰れるのは必定。ていうか僕だって人材不足で皆が来ても国が持たないから結局両方潰れるんだけど!


「ソウビ王、人材が居ません」

「現地登用で」


 出たよ無理難題。人材が湯水のように湧いてくる訳が無いのに何を言ってるんだ? ……いや待てよ? 人事権を僕が完全に掌握できるなら今すぐ全員招集してカイテン国の上位に持ってくるのも可能だ。


「どうだ?」

「……助けてくれますよね?」


「勿論」


 勿論と言う言葉を絶対に忘れないし皆にも目配せして覚えておくようにお願いすると、理解してくれたのか頷いてくれたので僕も頷く。


「ならばソウビ王の命令としてお受けいたします但し総司令と言うところだけを」

「ダメだな許可をくれてやるから国を興せるようにしておけ」


 王様じゃなかったら殴り掛かってるところだ。南側の開拓とカイビャクへ繋がるルートを模索出来るようになっただけで十分なのに国を興して抱えろとはあまりにも釣り合いが取れない。だけど興せるように、なので興す必要は無いと解釈した。


「取り合えずお前にはうちから大事な戦力を回す。居住の問題を解決したら即知らせを寄越すようにな。以上が私からの通達だ。質問は?」

「ありません。久し振りにお会い出来て、前回よりも覇気が増した御姿を見れて嬉しかったです。是非長生きしてくださいね」


 僕は席を立ちソウビ王の近くで傅く。


「お前もな。益々強くなるのを見ると若い頃の自分を思い出す。まだそう年を取った訳でも無いのにな……。私もそちらへ偶に顔を出すから元気でやるんだぞ」


 言葉を頂き立ち上がり再度一礼してその場を後にする。首都も改革がスタートしたばかりでソウビ王の仕事も山積みのようだしそれもあってジョウ将軍を呼び戻す決断に至ったのだろう。となれば臣下としては一刻も早くソウビ王を楽にする為に戻ってジョウ将軍に伝えなければならない。


「何もう帰るの?」

「急いだ方が良いかなぁと思って」


「出来れば今の首都の状態を見ておきたいのですが」

「そうですよやはりここが起点ですし私たちの商売とかも考えると視察したいです」


 それを聞いて確かにと思い得物とアジスキを預け帰る前に町を見て回る。僕は顔を見辛くしてマントをで身を隠した。バレて騒ぎになると迷惑になるし。相変わらず首都は賑やかで人でごった返していた。


暫く森の中に居たからなのか若干人酔いがする。獣族やエルフなど人種の坩堝になり始めていた。これから蜥蜴族とかミツバチ族も行き来したら凄いだろうなぁ。商品も貨幣で取引しているのが何だか懐かしく感じてしまう。


ミコトと二人でやりくりしていたのがつい昨日のように思い出される。って何か爺臭い感じになってしまった。女性陣は元気に楽しくあれこれ話しながら見て回って居るから気分転換になって何よりだ。そう思いつつ持ち歩いているメモに値段とか考え等をメモしていく。


夕暮れの少し前に皆で城に戻ってアジスキと得物を返却してもらい首都を出る。あまり遅くなると心配されてしまうから急いで帰らないといけない。首都を出て暫くしてから顔を出しマントを外す。爽やかな風を受けながら夕暮れが近付く空を見つつ馬車はエルフの里へと進む。


川岸の村に近付くとそれを見つけた兵士が他の兵士に連絡すべく駆け出したのを見て別に大層なもんでも無いのにと思いつつ苦笑いした。川岸の村の丁度中間にある橋を渡る頃には皆で両端に立ち敬礼をしてくれたのでそれに答えながら速度を落として通る。


「閣下、お帰りなさい」


 渡り終えると今度はエルフの里の兵士たちが僕を出迎えてくれシブイさんは馬車の荷台に飛び乗って来た。


「ただいま、そちらの守備は?」

「何も問題ありませんよ一日程度では。私としては首都の話をお伺いしたくてお待ちしていましたよ。さぞ大変な役を仰せつかったのでしょうね」


 まるで分かっていたかのように言うシブイさんに溜息を吐いた後今日会った話を伝えると大きく頷きながら


「でしょうともでしょうとも。私としてもそうなるだろうなと思っていたんですから予想通りです。で、閣下はこの後どう動く御積もりですか?」

「分かってるだろうけどジョウ将軍へのソウビ王からの正式通達後に急ぎ前線であるブリッヂスに顔を出した後、エルフの里でミツバチ族やハイアントスパイダーに蜥蜴族の長を招集して会合を開く、かなぁ」


 その言葉にシブイさんはまた大きく頷く。もうちょっと予想外! 驚いた! って感じにならないものかなと思いつつ肩を竦める。

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