ヴァンパイア襲撃戦その2
「ミレーユさん、ギルドに正式に協力を要請したいのですが」
制圧した集団の中から高そうな白銀の鎧を身に纏い、風に流れたような髪型のイケメンがギルドに現れた。腰に佩いた剣も高そうだし、抱えるフルフェイス型の兜も装飾も高そうだ。
「リュクスさんいらっしゃいませ。勿論お受け致しますわ。基盤となっている町があってこそですもの」
「出来ればこの騒動の主犯に対しても懸賞金を掛けたいと」
「それは止めた方が宜しいと思いますけどねぇ」
「そう思うよ」
ギルド長に吹っ飛ばされた背広の人物が博士の背後に現れたけど、博士はぬるりと動きながら避けギルド長とリュクスさんは素早くその人物に対し拳と剣で攻撃を加える。
「なるほどやはり昼間はいかんな」
黒の背広に白いシャツ、赤いネクタイに青白い肌。鋭い目の周りのクマが濃く、化粧していると思われる顔の中でも一際目立った。化粧していると思ったのは唇に口紅を付けていたからだ。ただこれは血色の悪さを誤魔化すためなのかも知れない。ほっそりした顔と体系でボリュームある髪を空へ向け全て立たせている。
「おやまぁ随分と強気じゃないかドラヴ」
「ンン? そうかな? 確かに計算外なのは数人居たけど問題ないじゃないか?」
両手を広げて天を仰ぎながら言うドラヴと言われた人物。酔いの回ったサラリーマンに見えてしまう。ヴァンパイアって日中はこんな感じなのかな。博士も変だったし。
「御腹見てみると良い」
博士に言われ素直に広げていた手の左手を下ろし御腹を触るドラヴ。そこの部分は焼けたように焦げ付き御腹が出ている。
「再生が追いつかない」
視線が僕に向く。色んな意味で怖いから見ないで欲しい。
「これは一旦引いて認識を改めるよ」
「逃がす訳なかろうて」
ギルド長とリュクスさんが速攻を仕掛けるも、あっという間に体は複数の蝙蝠に化けて四散した。
「今度はもっと慎重にやるさ。怯えて暮らして居たまえよ?」
一匹だけ戻ってきてそう告げて、また去っていった。
「さてさて困ったのぅ」
「あらお困りですか!?」
パフィーさんが嬉しそうにギルド長に近付いていく。ギルド長は微笑みながらパフィーさんの頭を撫でる。
「リュクスよ、確か懸賞金掛けるって言ってたな」
「はい長。正式には町長と議会の承認を受けてから正式な金額は決まりますが、依頼は町の防衛の為にいつも通り出します」
警備の兵と冒険者は持ちつ持たれつで、何か非常事態があった時は積極的に連携していくようだ。冒険者独自のコミュニティとしてギルドは確立されているようだし、良い関係なんだなぁ。
「よし! そうとなれば早速ヴァンパイアハンターを雇うかのぅ」
「わぁい! 博士やりましたよ! 宿の心配がなくなりそうです!」
飛び跳ねて可愛らしく喜ぶパフィーさんに博士はやれやれと言った風だった。
「多少報酬は弾んでやるから頑張るように。冒険者だけでなく兵士たちにも対策のレクチャーを頼んだぞ? リュクスは町会議場を抑えて講習の準備を。おーいお前たち! 彼らの遺骸は山の方へ運んで弔ってやってくれ。町から金が出る! 康久たちも行って小遣いを稼いでおいで。明日にでも話があるからワシの部屋に来るように。ミレーユ! ミレーユ!」
テキパキと指示を出してギルドの奥へ去っていくギルド長。後ろの方ではお金が出ると聞いた皆が喜びの声を上げていた。僕はやれやれと思いながらふいにリュクスさんと目が合ったので一礼する。
「初めまして冒険者。私はこの町の警備長を務めているリュクスだ。今後とも宜しく」
「初めましてリュクスさん。康久と言います。こちらこそ宜しくお願い致します」
リュクスさんが手を差し出してくれたので、しっかりと握り握手した。
「君は東の生まれかい?」
「え、何故ですか?」
「名前がね。東の生まれの人の名前がそういう感じの名前が多いから」
「へー、そうなんですね。生憎記憶が無くて」
本当の話は出来ないので記憶喪失という話にしてみた。これならこの世界の普通を知らなくても誤魔化せるだろう。




