表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界狩猟物語  作者: 田島久護
南部地方編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

319/675

シブイさんの来訪と首都の使者

「兎も角銅像の件はおいておくとして真面目に対策は考えないといけない。シブイさんはそれが課題です僕に帰って来て欲しいなら」

「……分かりました早急に対策を講じましょうお任せあれ」


 一瞬考えて間が開いた後掌を寝かせてポンと開いてる手で叩きながらそう言った。ガ〇テンか? ガッ〇ンなのか? ていうかそのガッテ〇に嫌な予感しかしないのは気のせいかな……。


「フフン、お手並み拝見と行きましょう」

「言ってろ。御前こそうちで竜神教(ランシャラ)の祈りを堂々とやるなよ?」


「当たり前でしょ? そこまで分別無い愚か者とお思いですか?」


 お思いですよ少なくともここまでの感じからして絶対やるに違いないという信用しかない。僕を挟んでシブイさんとイトルスが言い合いを続けているのをスルーしつつ、僕は首都からの呼び出しがいつ来るかなと考える。


クロックベア救出作戦を勝手に初めて全滅し僕が駆けつけて兵士たちを逃がした。兵士の多くは知っているだろうしそうなると僕を糾弾する為に呼び出すなんて出来ないだろう。ソウビ様が健在な今信用出来る。


悪い想像をするならソウビ様はある程度把握したうえで放置し上が叩かれても我関せずとしている可能性もある、ていうか高いかもしれない。貴族の腐敗が進んでいるような気もするし一新する機会を窺っているんじゃないかとも思った。


僕の王族への加入も結局は重臣たちが自分たちの身を斬らずにソウビ様に斬らせた形なのに、ひょっとするとそれにすら気付いて居ないんじゃないかと朝の会議の時の状況からも思えて仕方が無い。体のいい厄介払いが出来て済んだと思ったらトンだ大外れだった訳だけど他の重臣はどう出てくるか。


「まぁ何にしても竜神教(ランシャラ)本部に居るより退屈しないと踏んでますからね」

竜神教(ランシャラ)本部は退屈なのか?」


「そうですよ? 今は研究をするのに忙しくて第三騎士団以降はドサ周りを黒鎧としてるだけですからね。つまらないにも程がある」

「憎むべき異教徒の強敵と戦えて嬉しいんじゃないか?」


「意味があれば誰であれやりますけど基本人間はヴラヴィシ様によって現在があるんです。言わば広く見れば同胞なのです異教徒と言えどもね」

「博愛主義なのな竜神教(ランシャラ)は」


「ええそうですよ基本的にね」


 皮肉と嘘と突っ張りとが交じり合い何一つ真実が無い言葉のやり合いに辟易してくる。まぁシブイさんは元々開発だったりが済んだ場所に居るのが嫌な人だから僕に何かする可能性は無いし、イトルスは信用ならないけど色々騒がしい内は働いてくれそうな気がする。


「取り合えず私も首都からの使者が来るまでここに滞在しますよ」

「エルフの里は良いんですか?」


「良いも何も上の確認とサインが無いと進みまないものが多いですからね。肉体労働は専門外ですし」


 なるほどねと思いながらそこから皆で雑談をする。シブイさんもミツバチ族の蜂蜜の話は知っていたようで僕が単体で契約して統括してみてはどうかと進めて来た。ミツバチ族としてはこの辺り一帯の土地の安全と確保、後は花畑を広げたり蜂蜜生成の道具とか防具とかが必要だろうから、そう言うのを注文を受けてこっちで首都で買い付けて渡すのも良いかもしれないと思った。


「そうなると商人が欲しいですね。僕ら大体戦士脳なんで経済には疎いですから」

「お前さんはそうで良いかも知らんけど閣下がそうでは困る。とは言え私も経済専門ではあるが商売の経験はあまりない。幕僚に一人欲しくはありますね」


「これからこの先まで足を延ばすなら商人は欠かせない。シブイさんや華さんにこれって言う人の心当たりはないかな」

「私が知っている方は殆どが父上お抱えですので残念ながら」


「私も同じく。在野に心当たりも今のところありません。エルフの里からも研修で出したいのですが中々首都との交渉は上手く行きませんし」

「出来れば勇者様のお役に立ちたいので学びたいですが難しいかも知れませんね今は」


 商人の目途が付いたらそちらの方面を伸ばして行くとして一旦保留にし、治水計画の状況を聞くと一日一日確実に進んでいると言う。出来れば僕が変身して掘ってしまった方が早いんだろうけどそんなのを毎回していたら僕頼りになって何も考えなくてよくなり学びも無くなってしまう。


多くの人の成長を妨げてしまうので適当な理由を付けてそれだけは断っている。登用に関しても中々進まず現状上の方は長老たちとシブイさんのみでやりくりしているけど有事の際の対応が心配とも言われた。


「同盟はあくまで同盟ですからね。干渉し過ぎると属国となるし不満が生まれるんじゃないですか? 個人的には康久様の領地にしてしまえば良いと思いますけどね」

「簡単に言うな。今回の動きを見ても美味しそうなら功労者を檻に閉じ込めて我先に飛び掛かる連中だぞ? 領地にした瞬間召し上げられるのが関の山だからこそ閣下はそのままにしておかれているのだ」


 シブイさんが代弁してくれたので頷く。王族の扱いなんてされてないのは薄々気付いていたけどここまで露骨にやって来た以上こちらもしたたかに立ち回らなければならない。敵は身内に居てそれが一番厄介という面倒だけど人間らしい展開になってきた。


エルフの人たちの自尊心が緩やかになるよう僕を挟んで人間族と交流し始めたところだ。ここで変な真似をされてまた過去に逆戻りなんて冗談じゃない。何としてもそれだけは防がないといけない。そう考えるとジョウさんの蜥蜴族も心配だしこちらが落ち着くならそちらに気を配りたいところだ。


「裏の支配者って感じですね」

「エルフが経済観念を備えて人間族とも対等に付き合い交渉して行けるようになれば僕は要らないと思うけどね。その為のお手伝いをしてるって感じかな。国の命令もあるし」


「お行儀が良いですねぇ。そんなノンビリしているとそのうち寝首を掻かれますよ?」

「お前さんにか? あの奥方たちを差し置いて寝首を掻けるとも思えんが」


 話を振られた奥方たちことミコトに華さんアルミにルナはニッコリしながら其々の得物に手を掛けるとイトルスは流れる様に土下座をして降伏する。とても綺麗な土下座でどうやって身に付けたのかめっちゃ気になる。


「閣下はそう簡単に腹を見せないが考えてらっしゃるのを読み取り動くのが幕僚の仕事。お前さんも付くと決めたなら存分に働いてもらうからな」

「ええ勿論ですとも。長く居れば良いというものではないと教えて差し上げられるくらいの働きをして見せましょう」


 何にしてももう少し身内に頼りになる人間を増やしたいのはある。基本僕が前線に出て戦うし、恐らくこの先未開の地に足を踏み入れるのが多くなるだろう。探索というよりも開拓や交渉をしながら人間族が歩いても大丈夫な範囲を広げる仕事がメインになるかもしれない。


僕の目的である星の意思と連絡が取れそうな世界樹を見つける為にもそれは欠かせない。ただ身内にになった人々を後は勝手にどうぞというのは酷いなと思うので立ち上がれるくらいまでは支えたいと考えている。


僕が居なくても動けてルールに則り皆で暮らせるような環境を作る。その為の人材確保も重要だ。


「康久殿、使者が参りました」


 ミツバチ族の兵士がテントに来て知らせてくれたので出迎えに行く。するとそこには兵士では無く綺麗な衣料を身に纏い長いハットを被った人物が居た。


「康久様お待たせいたしました。ソウビ王からの伝言を直接御伝えさせて頂きます」


 恭しく礼をしてその人物は伝言を伝えてくれた。簡単に纏めると今回の騒ぎは一人の重臣とその取り巻きの貴族による独断で行われたものであり、ソウビ様と他の重臣は軍備を整え日程を調整していたのでとても憤慨し一族郎党平民へ降格したと言う。


また端的な報告に収め詳細は後々ソウビ様に上がっておりこちらへの指令も意図したものが伝わって居なかったとして連絡を今後は独自の使いによるやり取りで行うようだ。評価に関しても今後ソウビ様が意見を確実に入れる様にするとも伝えて来た。


「まぁ当然でしょうな。一応部下のやる気だったりを尊重し自身が不在でも機能する組織を作るべく我慢していた部分がありましたからね。ジョウ将軍などは驚いておられましたよ辛抱強くなったと。登用自体も自分の足で歩き探しながらも最終的な部分は任せたりもしてましたが今後は無いでしょうね」


 それを聞いて怖くなる。今までかなり我慢に我慢を重ねていたのをただ優しいとだけ受け取ってやりたいようにやってたと思うと背筋が凍る気分だ。あの人を怒らせるくらいなら個人的には逃げたいレベルの危険人物だと僕は思ってたけど、重臣ともなると違うのかもしれないな。


元々冒険者だったのもあって何処かで自分は負けないと言う部分を持ち続けていたのかもなと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ