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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
ヴァンパイア狂想曲

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ヴァンパイア襲撃戦その1

「ミレーユさん、大変だ!」


 そろそろお開きかな、と思ったところへギルドに兵士が飛び込んできた。ミレーユさんは急いで駆け寄り膝を付いた兵士の肩へ手を置いて、大丈夫? と声を掛けた。兵士によると錯乱した様子の動物やモンスター達が山から町に流れ込んだと肩で息をしながら懸命に伝えてくれた。ミレーユさんの視線を受け僕はボウガンを背負ってギルドを出発する。


「どうやら私たちの行く先に犯人も居た可能性がありますわね」


 遅れず併走するラティの言葉に頷く。パフィーさんたちと鉢合わせしたのはその所為だったのかもしれない。彼女の相棒が匂いを追ってきた。それを僕たちだと勘違いしたなら辻褄は合う。


「だったらやっぱり僕はなんの罪も無い被害者じゃない? 殴られ損だよ」


 ボソっと言っただけなのに肘鉄が脇腹に入る。何故だ。


「敵襲! 敵襲ー!」


 鐘を乱打する音と叫び声に視線を向ける。敵は錯乱しているとは言え、人が多いところに向かっているらしい。だけど正面から来た僕たちを避けて動いているなんて。


「お兄様、引き返しましょう」


 直ぐに踵を返して加速する。


「あっ」

「きゃぁ!」


 僕は絶対やってない。そんな気分だ。宙を舞いながら神仏に祈る為手を合わせる。これは一方的な断罪であり、こちらの言い分も聞いて欲しい。ただ進んだら居た。受け身を取ろうとしたけどこんがらがって転がった。更に何とか離れようと二人でもがいた所為で大変な状況になった。そこにいやらしい感情は何一つ無い。誓うよ?


「おやぁご機嫌だねぇ」

「全然」


 受け身を取りそこない地面に激突し、結局ギルド前まで転がって戻ってきた。僕の顔を覗き込む博士はご機嫌である。


「それより早く起き上がった方が良いぞ? 轢かれてしまう」


 僕はブリッジする感じで反動を付けてすぐさま立ち上がり、辺りを見回す。ギルドに向かって僕たちがこの町に入ってきた入り口の方向から群れが突撃してくる。どうやってあんなの対処すればいいんだ? 大規模戦闘なんて初めてなんだけど。


「構わず撃っちゃって良いと思うよ? 君たちだけがこの場に居るわけじゃないし援護もあるだろうから君はあの群れを一つ一つ処理すれば良い」


 博士らしい冷静な分析に頷き、僕はボウガンを設置し足を掛け弦を引く。そこからは一つ一つ頭を狙って狙撃していく。涎を垂らし頭を振って駆けて来る巨大鼠や鹿、熊や人型だけど八重歯が長く耳が尖って角がある坊主の生き物。正気を取り戻すのは難しそうだし、今ここで手加減をしたらこっちが押しつぶされてしまう。安らかな眠りを願いながらしっかりと潰していく。


「今だ! 放て!」


 他の建物の上からも襲い来る集団に対して矢等で射撃が行われた。ただそれで出来た死骸を踏みつけてこちらへ向かってくる。中央広場で拡散するかと思いきや僕たちの居るギルドへ直進してくる。


「なるほどねぇ。まぁ分かってはいたけど」

「博士たちが狙いですか?」


「あれは囮だよ。本体は」


 僕はボウガンから体を離し、喋る博士を横へ突き飛ばす。眉間まで近付いてきた爪をギリギリでしゃがんで避けつつそのまま拳を突き出す。


「良い動きじゃ」


 一撃入っても微動だにしなかった黒の背広っぽいもののの後ろから聞いた覚えのある声がした。次の瞬間それは放り投げられ現れたのはギルド長だった。今日は長い髪を後ろで束ねているので一瞬身間違えてしまった。白い紐でたすき掛けもしてるし。


「おやおやお早いお出ましで」

「なーに平和が長いのでな。守る側が実践不足なんじゃよ。で、態々出て来た訳じゃけどお邪魔じゃったかの」


「またまたご冗談を。彼の力では未だ制するには遠いでしょうから良いタイミングで来て下さいました」

「で、あろうな。ミレーユが大事に育てすぎた。力も使わねば持ち腐れよの」


 旧知の間柄なのか場違いなほど和んでいる御二人。僕はハッと我に帰りボウガンを構えなおす。


「あら御用は済みまして?」


 前を見ると例の集団は軒並み潰されて道を埋め尽くしている。どうやらラティだけじゃなくパフィーさんや町の兵士の人たちやギルドで見かけた覚えのある人たちも参戦し制圧したようだ。

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