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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
南部地方編

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ミツバチ族とスズメバチ族の生態と手品の種明かし

「分かった。明日から皆で引っ越ししよう」

「おー!」


 皆の元気な返事を聞いた後その日はそのまま過ぎて行き翌朝テントの片付けをし、僕らの馬であるアジスキの荷台に積み込んでエルフの里を後にする。エルフの里の皆に少し時間を貰い集まって貰って今回の件を説明した。不安な声もあったけど殆どの兵力はここに駐留させておくし、基本はここだから終わればちゃんと戻ると約束して出発した。


まだこの辺りは平坦な森なので馬での移動もし易いから楽な方だ。恐らくスズメバチ族の方面は山があるから気を付けないといけない。


「良くお越しくださった康久殿とお連れの方々!」


 花畑を迂回してミツバチ族の村に近付くと、出迎えの兵士たちが僕らを見つけると直ぐに飛んで来てずらりと両脇に並んで敬礼した。入口にはミツバ様が居て大歓迎してくれる。僕らはスズメバチ族が来た方向にテントを張る。


「そう言えばミツバ様、ミツバチ族とかスズメバチ族は人間て食べないの?」


 テントが終わりミツバ様たちとの会談に臨む。ルナのとんでもない質問に驚きつつ興味があったので答えを待つ。


「食べません、というより食べられませんね。先ず第一に牙がありません。第二に消化器官がありません。なので領域に入られたら警戒しつつ警告し追い返す、それでも従わないなら攻撃をするだけです」

「てことはミツバチにもお医者さんが居るのね」


「勿論です。人間族やエルフもそうでしょうけど病気は付き物ですし、死んだ者を調べて原因を解明しなければ滅んでしまう。私たちの先祖から段々と積み重ねて今に至ります。スズメバチ族はどちらかと言うと先祖に近いかも知れません」


 この星には人間以外も色んな種族が居て、元々の生物は僕の知っている昆虫だったりするんだろうなと思いつつミツバ様の話を皆でメモに取る。


「この間私たちの同胞を連れ去ろうとしたスズメバチ族の下級族であるコガタ種たちです。少し赤みを帯びた体と空を飛ぶ時体を丸めた形がにているので私たちはそれをさしてコガタと呼んでいます」


 なるほどね小型じゃないのか。確かに体はミツバチより大きかったから納得。黄色と言うよりはちょっと赤みを帯びてた彼らはスズメバチ族の下級族とは……。上の方が気になってくる、というかスズメバチ族って数が多いのかな。


「スズメバチ族はダイオオスズメバチとヒメスズメバチの二人が統治するここより北の森にある国に住んでいます。異種族などとの交流は一切なく主に昆虫族を主食として生活している者たちでとても獰猛です」


 彼らの天敵として蜥蜴族が居たけどエルフたちが出現し間に住み着き世界樹の保護を受けて結界が張られたので天敵が一つ減ったと言う。その為エルフはあまり好きではないようだ。アルミが申し訳ないと言うと、昔のエルフがした話だからとミツバ様は優しく言葉を掛けてくれた。


そんな状況の変化が起きてもクロックベアとハイアントスパイダーなど天敵が健在だった為、スズメバチ族はその目を盗んでミツバチ族の村に近寄って来ていたので被害はあまりでなかったらしい。


「なるほどねぇそれまで四竦みだったものが三竦みになり何かの影響でそれすらもままなくなればスズメバチが増えるのは当たり前よね」

「その通りです。ですが私たちはそんな悠長にはしていられません。このままでは奴らに捕らえられ奴隷兼食料としてのみ生きる存在になってしまいます。康久殿には本当に申し訳ないのですが、それらを調べて是非解決して頂きたいのです」


 ミツバチがスズメバチの領域に近付けば余計に刺激してしまい雪崩れ込んでくる可能性を高めてしまい兼ねないので僕にお願いしたいという話だった。僕は了承しエルフの里と連絡を取る手伝いをお願いし了承された。


ミツバチ族やスズメバチ族は火が苦手なので、僕らが北の入り口で火を焚いているとスズメバチ族は近付き辛くなるようなので辺りの木を伐採して薪を作り居る間は常時くべて欲しいとお願いされた。風向きが山の方に流れていくのでミツバチ族には影響ないと言われ安心する。


「で、具体的にどの辺を私たちは調査すれば良いんでしょうか」


 ミコトが地図を広げるとミツバ様はこの辺りの地図を兵士に持ってこさせて照らし合わせて記を付けてくれた。北東の方の麓がクロックベアの生息地で北西がハイアントスパイダーの生息地のようだ。


「そうねぇ私としては北東が何か臭うわ」

「んじゃ先ずは北東から行きますかね」


「あらそんな簡単に決めて良いの?」

「結局両方行かなきゃならないんだし女性の勘を信じる主義なんでね」


 何故か一同から感嘆の声を上げられて苦笑いしつつ明日の朝出発すると決めて自由時間となった。ミコトたちはミツバチ族の女性陣が花の蜜を集めつつ花畑を広げ、男性陣が畑を耕すのを見学しに行った。


僕はその間に軽く周囲を探索しておこうと村を出る。同じ森とは言え場所が違うと明るさとか雰囲気も全く違う。この辺りは歩行する種族が通らないのか雑草も多く歩きにくい。あまり環境を変えたくは無いけど調査の為に雑草を切り払って歩く。


その間昆虫が色々飛び出て来て驚きつつもあまり奥へ行かない様に探索を続ける。見た感じ確かにクマが居そうな雰囲気は全くない。その所為か小動物が多く見受けられた。それでも彼らではスズメバチ族には対抗できなようで、所々に死骸があった。


ミツバ様が言う様に昆虫以外は食べないらしくただ侵入者として仕留められ放置されている。そこに色々集り土に帰っていく。スズメバチ族としてはその集った虫たちを更に食した昆虫などを餌にしているので循環が捗るように見えた。


 探索から帰り皆とミツバチ族の村での初めての食事を始める。ミツバチ族から口に合うか分からないけどと蜂蜜をおっそわけしてもらい、それをパンに塗って食べたけど飛び上がるほど美味しかった。特にミコトは泣きながら美味しい美味しいと言いつつ貰った蜂蜜の壺を底が見えるまで食べてしまう有様だ。


中毒性があるんじゃないかとすら思ったけど特に無いらしい。華さん曰くカイテンの王族でも限られた人たちが食べているらしい。入手ルートとかは秘密と言われとても気になる。ミツバチ族が僕ら人間族に対してそれほど敵視してなかったのも隠れた交流があったからかもしれないなぁと思った。


 明けて次の日の朝。ミツバチ族の兵士二人が連絡役としてエルフの里へ向けて旅立つ。その間に食事を済ませて待ちつつ準備を進める。そう時間が掛からず書類を抱えて帰って来たのでそれを急いで処理し女性陣はその間に昼食を用意してくれてた。


「じゃあ行ってきます!」


 ミツバチ族の皆に見送られて僕らは北東のクロックベアの生息地へ探索に出発した。移動の際に華さんに隣を歩いてもらい雑草を斬りつつ進む。昨日と違い皆で動いているからなのか昆虫や小動物が出てこない。


「皆、隠れて」


 アルミの言葉に素早く木の陰に身を隠す。ミコトはルナに引っ張られて少し離れたところの岩の陰に隠れた。横の木に隠れるアルミを見ると僕らが行こうとしてた方向を指さす。ゆっくりと木の陰から様子を窺うと何かの集団が居た。それにスズメバチ族も居る。


どうしようかと思って息を殺しつつその相手を見ようとしていると、スズメバチ族の一人の後頭部に何かがぶつかったらしく、その集団と言い争い見たいな感じになった。僕は驚き辺りを見回すとミコトと一緒に隠れていたルナが悪い顔しつつニヤリとしてこちらを見ていた。


アイツどんな力を使ったんだ!? と驚きながらも指を刺されたのでその方向に視線を向けると


「おいおいマジか」


 驚きのあまり声が出てしまい慌てて抑える。スズメバチ族は別に耳が良い訳では無いようで聞こえて居なくて助かった。まさかこんなところで会うとは思わなかった……でもまぁ竜神教(ランシャラ)が居たんだから可笑しくは無いのか。


僕がパッと見ただけで分かるほど分かり易い存在、デラウン近辺でデラウントナカイの密猟などをしていた黒鎧たちがスズメバチ族と一緒に居たのだ。となるとほぼほぼ正解が出たような気がしてちょっと残念ではある。ミステリー的なものを期待したのに。


「何手品の種明かしされた子供みたいな顔してんのよ」

「いやだってさぁ……ていうかあれはそっちの管轄じゃないの!?」


「知らないわよあんな木っ端連中。アンタ自分の一番下の部下が今何してるか知ってんの?」


 ルナがミコトを連れて僕の所に来たので尋ねるととても素敵な答えが返って来た。流石に隅から隅まで全部把握する程の時間が無いってのは上に立つと良く分かる。そこはチートが働かないのが残念だ。


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