表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界狩猟物語  作者: 田島久護
南部地方編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

304/675

激闘!海竜戦

「じゃあ後は宜しく」


 食事を終え僕はシブイさんに現地を任せエルフ族と人間族半分ずつくらいの割合になるように編成した部隊を引き連れて里を出る。華さんとミコトそれにアルミも今回はお留守番だ。流石に巨大な恐竜相手に守りながら戦うのは難しいから仕方ない。


ブリッヂスに近付けば近付くほど振動と鳴き声が酷くなる。やがてそれは森の木を超えて姿を現した。クジラに角と足が付いた化け物はその体を地面に投げ出し振動を起こしているようだ。


「閣下……」

「皆は急いでカイテン軍の兵士を探して合流を。僕はこのままあれを迎撃する」


 エルフ族と人間族の歩兵たちは急いでブリッヂスの町に向かう。変身無しでどこまでやれるかな。


「一人でやるつもりなのか?」

「一応これでもゴールドランクの冒険者だからね。ミズオもテグーさんを探して来たら?」


 ミズオは僕に従う様に半歩下がって声を掛けて来た。正直僕に戦場での指揮経験が無いのもあるけどあれ相手にどんな指揮をしたところで死者は増える一方だろうからカイテン軍を率いているジョウさんもしくはその代理が居れば上手く指揮してくれると思って合流するよう指示を出した。


「俺は二言はしない」

「そりゃ素晴らしい。だけど足手纏いなら構えないんだけど大丈夫?」


 そう言うとミズオは斧を構えながら先陣を切る。ミズオの言い方だとブリッヂス王はここへあの怪物を呼び込んだし彼もそれを知っているようだ。となると何か手立てがあるのかもしれない。


「危ない」


 と思ったけどどうなるかなんて考えずに呼んだのが丸わかりな動きをして海竜の尻尾で叩かれた。何とか受け止めて距離を取る。


「やっぱテグーさん探しておいで? 危ないよ」

「ふざけるな……こいつを退けないとテグー様も」


 少しして息が整うとまた海竜に向かい突っ込んで行く。その覚悟も気合も素晴らしいけどそれだけじゃ勝てない。というかコイツをどうやって呼んだのかが気になる。


「ミズオ、コイツをどうやってここに呼んだんだ?」

「知らん。竜神教(ランシャラ)の連中が何とかすると言っていた」


 最悪だなぁもうそれを聞いただけであれを止めるには倒すしか方法がないのが分かった。海竜に吹っ飛ばされて来たミズオを受け止めながら訪ねたけど溜息しか出ない。まぁ今まで関りが無かったんだから竜神教(ランシャラ)がどんなものか知りようもないし仕方が無いか。


 僕はミズオを近くの木で休ませた後但州国光月花を手に海竜との間合いを素早く詰めてその足に一太刀入れるべく抜刀する。それを野生の勘で体を地面に叩きつけて回避されると大きな口を開けた。僕もそれを勘が働き咄嗟に脇へ飛び退いて海竜の後方へと回る。


海竜はとても器用に体を回転させこちらに口を向けた。そして物凄い勢いで吸い込みを始める。木にしがみ付いていたものの当たりの若い木は吸い込まれていく。あれどうやって消化するんだろうとか暢気に考えていたけどしがみ付いている木が持ちそうもない。


一か八か飛び込んで斬り付けるか……そう考えていた時何かが海竜の横っ腹を叩いて横転していく。


「よう意外に早かったな」


 散歩でもしに来たかのようにジョウさんは長刀片手に現れる。穂先が炎を模ったような凝った作りの長刀をくるくると回しながら僕の横まで来てくれた。


「そんなに暢気で良いんですか?」

「良いも何も倒す他無いしな。お前さんの兵士は?」


「ジョウさんのところに合流するよう指示を。僕は戦場で指揮した経験ないですし」

「そりゃ冒険者だから無かろうよ。ハッキリ邪魔だと言えば良いのに」


 そう言われてつい笑いがこぼれてしまいジョウさんもそれに釣られて笑う。二人で笑っていると海竜が体を起こして立ち上がり僕らを探す様にきょろきょろし始めた。


「さて御客も目が覚めたし丁重に御持て成ししようか」

「心得ました」


 ジョウさんの言葉に頷いた後、僕らは素早く海竜の足元へ移動し得物を振るう。割とバッチリなタイミングだと思ったのにまたしても体を地面に倒して防がれてしまう。しかもその体は脂が多いのか刃が上手く通らない。同じ個所に叩きつければと思ったけどあっさりと体を回転させられてしまう防がれる。


自分の弱点を知りカバーしつつしっかり戦える。これは元々海竜のなのかそれとも竜神教(ランシャラ)の入れ知恵なのか。


「康久、先ずは傷を一つ付けるところから始めようぞ」

「はい!」


 ジョウさんの言葉に返事をした後、海竜はジョウさんの一撃で再度横転僕は一撃が発生した方向へと素早く移動。ジョウさんが二撃目を入れる際に一緒に叩き込む。


「チィッ、この程度かよ」


 二人で渾身の一撃を加えたつもりだけどホントに掠り傷程度しか与えられていない。どんだけ固いんだよコイツ。


「喰らえぃ!」


 ジョウさんは腰に付けていた瓢箪に口を付けて何かを含むと直ぐに噴射した。それは炎になって海竜の体を覆う。油ぎってたからよう燃える。これで何事も無かったかのように動かれたら手に負えなかったけど、のた打ち回りながら川の方へ移動した。


「一旦ブリッヂスへ引くぞ。兵士たちが気になる」


 一緒に急いでブリッヂスへ戻ると乱戦が起きていた。呼んだのだからその隙を窺って来るだろうなぁとは思ったけど本当に来るとは。うちの部隊も蜥蜴族に応戦していてなんとか指揮を受けて戦えているようで何よりだ。


「皆の者南を防ぐのだ! 敵はそこを狙うぞ!」


 テグーさんが町の高台から大声で指示を出す。それを狙って敵は弓を放つも長刀で払い落としていた。マジで敵対する気なんだなテグーさん。偉そうなだけじゃないんだなと感心しつつその高台へと向かう。


「テグーよ助かる」

「私の国だから当然だ。それより海竜は」


「水浴び中だ。ブリッヂス王はどういう手を使ってあれを呼んだのだ?」

「……最早私には父上は分からん。いや元々分からない御人、分かる気にもならん屑だ。あの男は私が必ず殺す。その為にお前たちに協力すると決めた。人間にも協力をお願いしたい」


 殊勝な感じで頭を下げられ慌てて僕も頭を下げる。下から元気な声が聞こえてテグーさんは下を見る。


「人間、お前」

「彼が忠誠を誓うと言ってくれたので。それだけですよ」


 そう答えると破顔一笑して抱き着いて来た。そんなに嬉しいのかミズオが解放されて。ならもうちょっと交渉を上手くしたら良かったのになぁと思っていると喜びが収まったのか離れ握手を求められたので握手をする。


「人間……いや康久殿だったな。ミズオが貴方に忠誠を誓うならまた私も命を預けよう。共にあの男を倒してくれ」

「喜んで。ならばミズオも貴女も死んじゃだめですよ?」


 その言葉に笑顔で頷く。その後ジョウさんとテグーさんの指揮が始まり蜥蜴族を押し返して行く。即興の軍に近いけど蜥蜴族エルフ族人間族が合わさって敵を撃退していく姿は胸に来るものがある。


「どうやら御出座しだな」


 大きな叫び声が後方から去来する。海竜の水浴びは終わったらしい。


「蜥蜴族は下がり始めている。兵を割くか」

「いやいやこの良い流れと勢いを殺すのは惜しいですよ。是非あの大物はこの私めにお任せを」


 僕は恭しくジョウさんとテグーさんにお辞儀をすると高台から飛び降りつつ変身し、海竜のところまで全速力で向かう。あの場の形と勢いを崩させない為にはこれがベストだ。相変わらず死の傷みと恐怖は嫌だけどそれを掛けるに値する場面で今後を考えれば絶対に必要だ。


「良いところなんだ邪魔してくれるなよ海竜!」


 川岸に上がったところで僕を見つけて咆哮する海竜。僕はそれを気合の声を上げて迎え撃つ。それが意外だったのか海竜は一瞬動きが止まった。音に反応したのか?


「グィイイイアアアアア」


 首……と胴が見分けられないけど頭部分を振りつつ涎を振りまき突っ込んで来た。何のスイッチが入ったのか分からないけど冷静で無いならこっちにチャンスだ。僕はその突進を避けて足元へ滑り込み但州国光月花を抜刀しようと試みたけど読まれて潰されそうになりそれをバックステップで避けるも体を回転させて追撃して来た。


何とかそれも避けたけど今度は泳ぐように追って来た。流石にこれは飛び退く暇が無く飛び上がりその角にしがみ付く。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ