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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
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夜の森で

「お兄様伏せて!」


 僕はボウガンを背中から下ろしつつ伏せながら素早く横へ動き、引き金を引きながらブーメランが通過した後、それを追うように来た物体に向けて弾を放つ。キン、という金属音と共にそれは跳ね上がる。どうやらチェーンの先にクナイみたいなものが付いていたようだ。


僕はそのチェーンの方向へすぐさま引き金を引きながら標準を合わせて放した。間を置かず直ぐに後方へバックステップで下がりラティと合流する。


「目はお任せを」


 ラティは僕の肩に手を置く。流石に夜目まではチートで付けてくれてない様で、相手が見えない。さっきのチェーンはさっき僕が居た場所へ一旦刺さった後、蛇が隠れるように引いていった。


息を潜めるように僕たちは近くの茂みに身を隠す。音は全くしないけどまだ気配がする。森を中心に活動してたのかな。音はしないけど動いている感じがしていたので、僕は段々慣れて来た目で相手のヒントを捜す。


「中々手練れのようですわね」


中腰で片膝を付き茂みから構える僕の耳元でラティが囁く。こういう事態だから仕方ないにしても、耳元で囁かれるって駄目だ。なんかゾクゾクして困る。


「来る」


 ラティの息遣いやら何やらが色々気になって気が散り始めたところで、ラティの声に反応し頭を切り替える。凄く小さい音だけど、草木の揺れる音じゃない音がこちらへ回り込もうと動き始めている。動物じゃない、人間の動きだ。


「お兄様失礼」


 僕の両腕の肘の辺りを持ち、顎を僕の右肩に乗せるラティ。ラティの方が目が利くからこれが正解何だろうけど、困るなぁ集中が途切れる。


「ッ!」


 ラティが僕の手に触れて弦を放させると、それに命中したようで小さな悲鳴が聞こえた。僕はその音に向けて弦を引いては放すを繰り返す。金属音が連続で聞こえる。どうやら例のチェーンで弾を弾いている様だ。


「お兄様、敵を捉えませんと」


 僕は頷く。相手が沈黙するまで撃つつもりだったけど、僕は立ち上がりながら弦を引きつつ間合いを詰める為に動き始めた。座りながらしっかりした体勢で弦を放すのではなく、片手で引いて放つのでは威力が大分違う。これなら相手も致命傷までは行かないだろう。


「このっ!」


 ラティは手袋をはめながら近付いた時に地面に遭った鎖を掴み引っ張った。僕はボウガンを仕舞い素手で迎撃するべく腰を少し落として構える。


「くそっ!」


 想像と違う声の高さに驚き、飛び出てきた人物を抱き止めてしまう。そしてそのまま倒れこんでしまった。


「何をしてますのお兄様! 逃がしては駄目!」


 ラティの声にハッとなりその人物を抱え込む。


「はっ離せ! このスケベ!」

「え!? す、すいません!?」


 聞きなれない単語を言われたので動揺したけど、妹に殴られるのは嫌なので離さない。すると今度は獣の唸り声がした。


「このっ」

「ま、待て! 私のレイモンドに危害を加えるな!」

 

 寝転がって捕まえている僕と、そのレイモンドと呼ばれる毛が無い犬が目が合う。牙を剥いて唸り声を上げていた。


「何を寝ぼけてるんですの? 貴方達が先に仕掛けてきたのに」

「お前たちは何者だ?」


 それを聞いてラティは鼻で笑う。捕まえている人物は良く見ると顔を布で覆っていて目しか見えない。格好はラティみたいに片当てと胸当ての他は布の服だ。


「私はこないだ傷の治らない患者が出たと聞いて遥々メザンの町から来たのだ!」

「知りませんわよそんなの。それよりこの犬、叩いてミンチにしましょうねー」


 怖いことをさらっと言うラティ。しかもやりかねないから怖い。


「お前たちは町の者じゃないのか!?」

「そうですけどそれが何か?」


「このまま放って置けばこの町は死人の町になるかもしれないんだぞ!?」


 死人の町に治らない傷……このキーワードで連想されるものって。


「冗談ではなくて?」

「それを調べに着たんだ! 早くこの人離してよ! 私にしがみ付いてる人!」


 しがみ付いてる人って……僕は言われて拘束してるだけなのに! 


「私たちを攻撃しないって誓えます?」

「……君は攻撃しない。それだけは誓う」


「宜しい」

「え、宜しくないよ。僕もいるのになんで」


「お兄様、離して?」


 腕を組んで仁王立ちし僕を見下ろすラティ。嫌な予感しかしない。しがみ付いている人の陰に顔を隠そうとするも、髪の毛を踏まれる。


「は、や、く」

「はい……」


 ゆっくり両手を広げ、更に足も解き地面に大の字になって仰向けになる。


「煮るなり焼くなり好きにするがいいさ! 僕は何もしてないぞ!」


 森に響く僕の覚悟。それを無視してラティは僕の髪を手で掴み謎の人物は僕の腕を掴んで僕を立たせる。二人とにっこり微笑みあった次の瞬間。高速の平手が左右から飛んできてブラックアウトする酷い。

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