表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界狩猟物語  作者: 田島久護
ギルドに所属しました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/675

依頼の日々

「あら貴方達良く来てくれたわねぇ!」


 ミレーユさんの依頼を探すと言う言葉を胸に頑張って過ごした一週間。開けてギルドに顔を出すと、依頼があると聞きラティは何も聞かずに紙をふんだくって走りながらそれを読み、着いたのはいつものペット捜索などを依頼してくれるマダムカトリーヌの家だった。


「マダムカトリーヌおはようございます!」

「康久は本当に良い挨拶が出来るわね。素晴らしいわ」


 マダムは長い白銀の髪を頭の上で御団子にして纏めている。上品で大人しい色合いのワンピースにシックなストールを肩に掛け、装飾品も必要最低限。品の良いお金持ちってこういう人を言うんだろうな、と思う。更に毎回褒めてくれる。人を前向きにさせてくれる尊敬したい人だ。


「うぅ……マダムおはよう」


 ラティはマダムに抱きつく。マダムの抱いていた猫のカムも抱きしめる。


「あらあらどうしたのラティ。何か悲しい出来事でもあったのかしら」

「いやぁそれがその……ラティはモンスター案件がやりたいらしくて」


「あらまぁそうなの? 危ないからよしたほうが良いわよ? こんなに可愛いんだから食べられちゃうかもしれないわ」


 ラティの髪を優しくなでながら、マダムはガオーとおどけていう。マダムが捜索を依頼してくれる仕事はペットの捜索以外にも、森で怪我していた動物の治療の警護や家畜を襲ってくる動物を罠を使って捉えて森に返す仕事もあったりと幅広い。そのお陰で森にどんな生物がいるのかとか、家畜の知識とかも増えてきてとても有意義だ。


マダムの家は代々医療を研究している家で、息子さんもお孫さんも医者だと聞いた。今はこの国の首都に住んでいて、ここにはマダム一人が住んでいる。地元の経済を回す為にお手伝いさんを地元の人から雇っているけど、マダムが料理を教えたり縫い物を教えたりしているので、お手伝いさんというより生徒みたいだった。


「何か事情があるのね?」

「ええ」


 僕は苦笑いをしながらそれだけ言った。僕も遭ったあの黒鎧達はとてもまともな思考をするような連中じゃない。マダムを巻き込みたくないから答えない。ミレーユさんはひょっとするとマダムと親しくなれば、首都との繋がりを持てると思って紹介してくれたのかもしれないけど。


「私は力になれそうにないかしら」

「……いいえマダム。今で十分よ」


 ラティはそう言ってマダムから離れて僕の少し斜め後ろに下がる。


「そう。なら今は一旦置いておきましょう。で、今日の依頼なんだけど、山にこの絵の薬草を取ってきて欲しいの。……本当はお願いするのが気が引けるんだけど」

「何かあるんですね? 山に」


 僕の問いにマダムは顔を曇らせる。


「昨日この町の医療院に急患が運び込まれてね……その人の傷が塞がらないの。備蓄を用意しておかせたんだけど足りなくて。本当は私が行くべきなんだけど、山は今冬眠前の動物が多くて気が立っているから」

「それは私たちの得意分野ですわ! ねぇお兄様!」


「え……ああうん」


 満面の笑みで僕に尋ねるラティ。僕はそれよりもその医療院に運び込まれた急患の症状がとても気になった。傷が塞がらないって。それにあの黒鎧たちもひょっとするとこの辺りをうろついてる可能性もある。胸騒ぎを覚えずには居られない。


「ではマダム! 私たち行って参ります!」

「お手当ては弾むから。必ず生きて帰ってくるのが一番大事だから忘れないでね!」


 僕たちは急ぎマダムの家を後にし山へと向かう。町を出て直ぐの森を北に進めば、デラウン山脈が聳え立つのが見える。その山中に薬草があるようだ。僕たちは人目が無くなったのを確認し、加速する。


「お兄様」

「何?」


「マダムの前であんな顔してはいけませんわよ? マダムがまた余計な気を揉んでしまいますわ」


 僕はまた苦笑いで誤魔化す。ラティの言う通りだ。マダムは察しの良い人だから、あの話の流れからしてミレーユさんに尋ねてしまうかもしれない。ミレーユさんもおいそれとは答えないだろうけど……。


「兎に角今は一刻も早く薬草を取って戻りましょう。私も何か嫌な予感がして来ましたわ」


 僕たちは森を全力で疾走し、山の崖を駆け上がる。チート能力を貰ってなかったらラティについていけさえしなかっただろうと考えると、ラティはやっぱり凄いんだなぁと実感する。


「有りましたわ!」


 ラティの声に我に返る。そして崖に咲いた一輪の白い花を見つけた。ただ勿論一輪だけじゃなく、また根っこまで持ってきてほしいという依頼なので以外に時間が掛かる。


「帰りましょう!」


 無心で二人で探しては取りを繰り返すこと約三時間ほど。粗方取り尽くしたので、下山する。その後を考えて、都度マダムから預かっていた種を植え水を適度に掛けた。僕たちは来た時より速度を上げて疾走する。山は直ぐ森となり町へ直ぐ付くかと思われた。


「お兄様!」


 ラティの声に反応し足を止め、素早くぐるりと一回転する。


「僕の左後方四十五度!」


 ラティはマダムの家で世話をしている犬と遊ぶ時用に持ち歩いていたブーメランを投げる。接触した音も無く戻ってくる。だけどその後ろに何かある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ