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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
首都訪問編

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首都での変身三つ巴!

「誰か来てくれ!」


 突然僕らの後方から叫び声が上がる。振り返ると何かが潰れて土煙を上げていた。ラフティムお嬢様に視線を送った後その方向へと走り出す。


――ミコトに気を付けろ――

――仮神の抹殺――


 頭の中で突然リピートされた言葉に血の気が引く思いがした。まさかこれも罠とは言わないだろう。偶然を装ってエルフの人を攫った者たちを僕の近くに通らせるなんて。


「チィ……間に合ったか」

「死ね!」


 右は以前見た事のある銀色のプレートアーマーから蝙蝠の羽を生やした者と、もう一人はハリネズミのように刺々した剣が飛び出たようなデザインの緑の鎧を身に付けた者がミコトたちを挟んで対峙している。


「変身!」


 僕はそれを見て迷わず身を焦がし絶命、復活と共に赤い甲殻を纏うとゴフルアックスを手に緑の鎧を纏う者へと突進する。


「良い判断だ野生の勘か?」

「その声を忘れるか!」


 小さく跳躍してゴフルアックスを頭をカチ割る心算で振り下ろすもそいつが差し出した右手はゴフルアックスを挟むように刃を生やして受け止めた。


「まだまだぁ!」

「案外強引じゃないか? えぇ!?」


 地面に着地すると同時に震脚し足腰を安定させて押し込む。一瞬向こうの腰が沈んだのを見逃さずに両手に力を入れる。


「くっ……馬鹿力がっ!」

「何処を見ている!?」


 体を半身にし更に手を素早く離した後ゴフルアックスの腹を押して流し勢いのまま突っ込んでくる僕の顔面を奴の拳が捉えようとした時、左から銀羽鎧が突っ込んで来て剣型鎧にタックルして吹き飛ばした。


「うあっ……」


 但しその影響で鎧に穴が開き黒い煙が出てしまった。これは一体何の煙なんだろうか。


「フン、そんな良く分からない強化した状態でよくもまぁ俺様に突っ込んで来たもんだ」


 飛ばされた先の瓦礫を吹き飛ばして剣型鎧は立ち上がりこちらへ向かって歩いて来た。僕は銀羽鎧を抱きかかえてミコトたちの近くへ移動させてから剣型鎧と向き合う。


「随分と面白い奴だなお前さんは」

「お前もな……!」


 一々名乗らなくても分かる……待ってたぞこの時を……問答無用でぶっ飛ばす! ゴフルアックスの柄を左手に力を込めて握り剣型鎧に斬りかかる。


「同じだ」

「そうかよ!」

 

 僕はさっきよりも腕の振りを小さく素早くし震脚も加えて叩き付ける。同じだと言いながら同じようには受け止めず避けてこちらへ滑る様に移動してきた。


「だぉりゃあ!」


 左手はゴフルアックスと共に振り切らず手を離し開いている右拳で剣鎧の体の中心を捉えて叩き込む。姿勢は不完全だからクリティカルではないだろうけど確実に一撃入れた。


「へぇ……やるじゃないか小僧」

「やったぞ馬鹿野郎!」


 師匠の篭手が無かったら拳を怪我していただろう。師匠には感謝してもしきれない。変身してもそれについてこれる篭手って凄いなぁとしみじみと思う。ガラガラと壁を壊して飛んだ先で瓦礫をまた退けてからゆっくりと立ち上がりこちらへ向かって歩いてくる剣型鎧。


無傷……か。何が足りない? やはり中身の僕自身のパワー不足なのか? ウルド様の加護で得ている力だから弱い筈は無いからやっぱり僕の鍛え方が足りないのかもしれない。


「上等だ……ぶっ殺してやるぜ……!」

「やれるものならやってみろ!」


 取り合えず気分を害させられはしたのでちょっと満足しつつ、改めてコイツをぶっ飛ばそうと気を引き締め直す。少し互いに見合った後素早く距離を詰め相手の顔面を狙う為拳を振り上げて迫る。


「オラオラオラァ!」


 威勢も良く圧も凄いけど何か違う気がする。何よりこの拳の振り方は喧嘩ではあるけど格闘技ではない。本当は自分の得意な得物があるとすぐ分かる。舐めているならそれで良いその間に確実に粉砕してやる!


僕は声も発さず拳の打ち合いに応じる。こっちはこれが本職なので次第に回転も威力も上回り掠っていたものが体に当たりダメージを蓄積し続けていく。


「冗談じゃねぇぞ……!」

「死ねぇ!」


 つい気分が高揚してしまい絶叫してしまう。あまりの嬉しさに顔は絶対に笑顔になっているのが分かるし隙も生まれてしまうのも分かる。案の定剣型鎧は一撃大きく受けて仰け反った返しで剣を突き出してきたので半身になって避けて飛び退く。


「おいおいつれないじゃないか」

「付き合って堪るかよ!」


 急いでゴフルアックスを取りに行きそれを追い掛けて来て振り下ろされた剣を防ぐ。ゴフルアックスはこの時の為にあったかのように思えて仕方が無い。重さも無く強度も高くて相手の剣にしっかり付いていけている。


サスノさんに教えて貰ったのは短い期間だったけど、師匠に似たような感じで教えて貰ったので素早く習得できたのも影響しているんだと思う。有難い。


「なるほどねぇこれがシルバーランクだとしたら詐欺も良いところだ」

「これはお前みたいな奴をぶっ飛ばす為にあるんであって毎度使う訳じゃないからな」


「それは結構。なるほどこの星にこんな歯応えのある奴が居て俺は嬉しいよ」

「この星?」


 この星って今言ったよな……竜騎士団(セフィロト)筆頭なのにこの星……?


「おっと失礼。ちょっとお前さんが調子に乗り過ぎてるから隙が欲しくて引っ掛けたのさ。ほんの少しだけ俺の守護する奴の力も見てくれよなァ!?」


 剣型鎧は剣を左手で地面に突き刺し右掌を何かを掌に載せているかのようにして構える。すると地面が徐々に振動し始めた。


「ミコト! 皆! 早く離れて!」


 僕は危険を感じてそう叫ぶと


「遅いんだよぉ!」


 地面から蔓が生えて来て剣型鎧を乗せて上空へ上がると、こちらへ向けて剣型鎧を放り投げて来た。


「あっ足が!?」


 避けるべく動こうとした時何かが足に絡まるのを感じて視線を向けると蔓が絡まっていた。してやられた……僕は覚悟を決めて受け止めるべくゴフルアックスの腹を突き出し腰を落とす。


「くたばれ小僧!」

「貴様がなぁ!」


 剣を突き出しながら突っ込んで来た剣型鎧に対して脇からまたタイミング良く銀羽鎧が飛び蹴りを食らわせ軌道を逸らした。僕はそれを見逃さず素早く足元の蔓を斬り剣型鎧へ向けてゴフルアックスを振り下ろすべく突っ込む。


「チィ! 忌々しい!」


 銀羽鎧を払い除け地面に刺さった剣を抜くも僕の方が一瞬早い! 貰った! と思った瞬間、地面に穴が開いて剣型鎧は落ちていく。マジかよと思いつつ何とか追い掛けるべく飛び降りようとすると


「止めておけ追ったらアイツの領域だぞ? 勝てるか?」


 その声に視線を向けると忘れもしないあの銀髪眼鏡がそこに居た。


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