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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
首都訪問編

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首都周辺の話と出発準備と

僕はそのまま体調不良を訴えて納屋で眠り翌朝。ぐだぐだしてても何も事態は良くならないと考えてお嬢様の警護の依頼を開始すると三人に伝え了承を得て準備を開始する。


僕とミコトはこの辺りの地理にとても詳しい訳では無いので華さんとアーキさんにお願いし、迂回しつつもなるべく最短になるルートを調べて貰う。


一緒に地図を見ていて下さいと言われて四人で見つつ華さんとアーキさん二人の議論を傾聴する。


「やはりイスルから西へ出てから川を渡ってというのが一応最短になるでしょうか」

「まぁ最短何だけど困難も多いルートだよね川は。モンスターもこの時期は活発だしそれを餌にしている恐竜も居る。そのおこぼれを狙っている動物も居るし弱肉強食を絵に描いたような世界が広がってるからなぁ」


「しかしここから南南東へ回るルートも難所がありますよね……」

「そうだねぇ僕らもあっちは原生林があったりして近付かないからそう詳しくは無いけど、クレモナ隊長やカンカンさんは修行しに行ってたのもあって話だけは聞いてる」


 イスル南草原を突っ切っても首都の塀があるだけで入れないし、塀に沿って移動するのも危険だ。人の匂いや灯りに寄ってくる敵対生物が多いので塀を高くしているものの、見張りの隙を突いて壁を破壊しようと試みたりする生物もいる。中にはそれに合わせて反国家勢力も加担したりする場合があるようで、塀の上の警護はかなり厳しく行われていた。


首都の北北北西、イスルの西にある原生林は首都との間に大きめの川が流れていてそれがあるからこそ恐竜も敵も北からは攻めてこない。だけど万が一を考えて壁も厚めに更に門は固く閉じていて結局更にぐるっと回って行かなければならないので遠回りになってしまう。


「こうなると我々が取りうるルートは西から回る以外ありませんね」


 華さんのなぞるルートには町が何個かありそこを経て首都の西門から入る感じだ。アーキさんもそれしかないねと頭の後ろで手を組みながら答える。旅程で言えば一月くらいらしい。今の我が家の財政では宿を抑えめにしたとしても厳しいんじゃないかと思ったけど、どうやらぬいぐるみの売り上げが入って来て何とか出資した分を少し取り返せたらしい。


「もし運搬の依頼があれば受けて行きましょう。折角皆居るんですから」


 ミコトの言葉に僕たちは頷く。出費は抑えたいけど野宿で良い訳が無い。それこそ現地の美味しいものとか食べたいしお土産もちょっと欲しい。観光と言えば土地のものが大事だし……って観光じゃないか護衛だ。


「そうと決まれば早速ギルドへ出向いて旅程等を伝えて明日朝出発にしましょう。ルートと日程が決まったからには情報をなるべく多く仕入れて万全にしたいですし。良いですか?」


 僕はミコトの提案に頷き他の二人も同意しギルドへと向かう。依頼書にサインをして旅程を書き込んで提出。次のセイキという町に届ける貨物の依頼を数個受けてそれもサインする。


「明日出発するんですって? 頑張って行ってらっしゃい、って程でもないか」


 リュウリン女史が書類を確認した後に出て来て僕らのテーブルに着く。そこで各町の情報を教えて貰ったけど、流石首都に近いだけあって安全な上に商売も盛んで賑やからしい。


「何処も同じだよね首都近辺は特に泊まる人も多いし商売になるから安全性に気を配っている」

「獣族もそうなんですか?」


「そりゃそうだよ獣族だからって以前みたいに動物と変わらない生活は送れない。国が出来て近くにあって文化交流を始めたら否応なく変わるしね。特に取引とか始まると損をする訳には行かないから勉強するしそれに合わせるから。この国の首都からも獣族の首都に商売に来たりなんだりで人が多く出入りしているから賑やかだよ? 今度おいでよ!」


 獣族と言うだけで失礼な想像をしてしまったものの、確かにアーキさんの言う通り変わるだろうと思った。僕ら人間だって数百年で変わり過ぎってくらい変化しているんだし。


「良い話だけじゃないわよ? 特にアンタは気を付けなさいね?」


 その言葉に気を引き締めて頷く。例の男が僕を狙っているかもしれないし月読命一派の残党が居ないとも限らない。首都近郊ともなれば人の出入りが激しくてその隙をここ以上に突いてくると思う。ここの町と同じようにはいかないだろうから自分の身は自分で守らないと。


「デラック殿から例の人物について報告も上がっているでしょうから大丈夫だとは思いますが」

「兵士を抱き込むような口の上手い奴なんだから気を抜いちゃダメよ。そう言うところがお嬢様なのよね……」


 最初の頃とは随分違い、華さんとリュウリン女史は喧嘩を始めたもののそこには互いを思いやる感じがしてなんだかほんわかしてみて居られる。暫くしてそれも終わり談笑してからギルドを出てダンデムさんのお店に出向く。


「明日出発なんすね! うちの貨物の依頼も受けてくれて助かります!」


 貨物の依頼は複数、アジスキに無理ないあの馬車に載せられる量を受けている。大きな物や量が多い物は運搬専門の人が居るので僕らは手紙とか小さめの物とかを多く受けた。その中にダンデムさんのお店からセイキの雑貨屋さんへの注文書とかを届ける依頼もあった。


「いえいえ少しでも旅程を豪華にしたいですからね。こんな長旅なのにケチった依頼料ですし町からも国からも出ませんから」


 ミコトは笑顔で毒を吐くとダンデムさんも苦笑い。その後紹介状を渡され何かあったらその雑貨屋に頼ってくださいと言われお礼を言う。


「旦那には世話になってるしこれからもお世話になるし、セイキの雑貨屋は親戚がやってるんで親戚共々ご厚意に預かれればと思っただけです。くれぐれも借りなんて思わないでくださいね」

「勿論です」


 熱い男の友情を感じたのをブチ壊す様に当たり前だと言うミコト様素晴らしい。暫く雑談した次は鍛冶屋へと向かう。リールドさんからもセイキの鍛冶屋への紹介状を貰い、馬車とか何かあった時は頼るよう言われる。こちらは親戚ではなく同じ工房で働いていた仲間の人間族が経営しているようだ。


「まぁ存分に堪能して帰って来てくれよな。首都は首都で発展してて目移りするだろうが、居心地はここが一番だと俺は思うぜ」


 リールドさんの郷土愛に感動しつつ僕らは家路に就く。翌日の朝お嬢様をミコトと華さんに迎えに言って貰いたいと言ったんだけど拒否されてしまい、またあの建物に僕が行く羽目になった。あそこを思い出すだけでも身が竦む。


いつかその意味に気付いて嫌な気持ちになるんじゃないかと思わずには居られなかったけど、さっさと済ませて健康で居れば近付かなくてもいいんだと自分を思い込ませる。

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