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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
ギルドに所属しました

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字(あざな)

 周りに居たお友達も席から立ち上がりこちらに殴りかかってきた。僕はラティの前に出てお友達から守ろうとしたけど、しゃなりしゃなりと優雅に更に前に出てこられて


「お兄様見ていてくださいまし……! 貴方の愛妹はか弱き身でありながらあれらを……」


 そう振り返って身を縮こまらせながら切ない表情で何故か言っている。胡散臭すぎるぞ竜人。


「何をごちゃごちゃ!」


 ラティの肩を掴んだ刹那、お友達のモヒカンさんは宙を舞う。


「およしになって下さいまし。汚物に触れられるほど気安くなくてよ?」


 キラキラと光が舞い天を仰ぐ手から更に光が漏れ落ちてそうなビジュアルのポーズで決めてらっしゃる。今昼間なのに酔ってらっしゃる。


「このクソアマ!」


 バタバタと音を立てて突っ込んでくるお友達のスキンヘッドやドレッドヘアー、果てはイケメンぽい人まで構うことなく放り投げ続けた。


「このっ!」


 何故か僕にも殴りかかってきた。だけどそれも遅く見えて避けた後、足を引っ掛けて明後日の方向に突っ込んでいってもらった。向き直ると更に突っ込んできたので腹に一撃膝を入れて沈める。何だか体が良く動く。どこで習ったかぼんやりしてるけど、この世界に来て別のところで教えてもらった気がする。


「お兄様やりますわね!」


 その言葉につい乗せられて僕もヒートアップしていく。


「おいおい君たち。君たちはこのギルドの人間を全員倒して行く心算かね?」


 そう背後から声を掛けられて気付くと周りには倒れた人しか居なくなっていた。


「あ、し、失礼しました! つい身を守ろうとしてやりすぎました!」


 僕は振り向き頭を下げる。ちらっと見えたのは茶色のローブに赤の半纏に草履、白髪を肩より長く伸ばし白髭を蓄えた八十歳位の耳の尖ったお爺さんだった。


「ええよええよ頭を上げなさい。ワシ見てたからね最初から。こいつらも新参者の実力がよーく分かって良かったじゃろ。ミレーユも居らんしここはこれで仕舞いじゃ。これ以降これで因縁を付けて来るならギルドとしても懲罰委員に掛けるからの」


 御爺さんに言われ頭を上げ、御爺さんは僕の後ろを見ながら言った。その視線を追うと、何人かは立ち上がり罰の悪そうな顔をして立ち去っていった。


「さて、君らは三階に来てくれるかの?」

「はい!」


 物腰柔らかく優しい顔をしているけど、この御爺さんの雰囲気は可笑しい。僕が殴りかかろうと思っただけでも先手を制して来そうな感じがしてる。


「御主中々勘が鋭いようじゃの」

「お兄様流石ですわ」


 怖い御爺さんと怖い自称妹がほほほと笑いながら並んで三階へ向けて歩いていく怖い。


「お兄様」

「早くおいでなさい」


「はっ!」


 僕は二人の声に背筋を伸ばし、腹から声を出して返答し直ぐに二人を追う。


「ま、入りなさいよ」


 三階に上がるのがやけに長く感じたけど、やっと付いた先の部屋の入り口には”デラウンギルド長の部屋”と書いてあって冷や汗が出る。


「失礼致しますわ御爺様」

「し、失礼致します!」


 僕が背筋を伸ばし大声で言うのを御爺さんもラティも目を丸くして見た後笑いながら高そうなソファに向かい合って座る。一頻り笑い終わった後、ラティは自分の隣を軽く叩いて僕を呼ぶ。急いで向かい一礼した。


「? あぁ、座りなさい」

「有難うございます!」


 生きた心地がしないんだけどなんでこんな張り詰めてるんだ。


「”儚き(ドラゴンズドリーム)”」

「”一撃(エンジェルオブデス)”」


 御爺さんとラティが同時に言葉を発した後、また笑いが巻き起こる。何で笑ってんのか理解出来ない怖い。


「いやいやまさかな」

「そうでしょうね。私もまさかこんな砂漠の町のギルドの長が伝説の拳を持つ男だなんて思いませんもの」


 含み笑いをしながら用意されたお茶に口をつける二人。これがプレッシャーなのかっ……!


「何はともあれようこそデラウンへ」

「有難うございます」


「で、目的は何かね?」

「例の黒い鎧」


 そう言うとまた静寂が流れる。


「あれは国と話してこちらに任せるとなっていたが」

「私がここにいるというのはそういう事態だからですわ。手違いでお兄様に襲われて傷を負いましたけど、奴らはこの辺りをウロウロしているだけではなくやりたい放題です。言いたくはありませんけど、国が奴らの後ろに居ると見る者も多く居りましてよ?」


 また静寂。どうやらうちの妹は凄い人らしい。


「……なるほど。確かに治安は宜しくない。それが奴らの思惑として安定しては困るからという可能性があるという話しか」

「自作自演ですわね要するに。それを知りたいが故に私はこれからギルドの依頼をこなして名声を得て行きます。それというのもお兄様がこのままでは出入り出来ない場所もありますから」


 何か急に僕が話しに出てきた。びっくりして咽てしまい、ラティに背中をさすって貰う。


「あい分かった。特別扱いはせんが、思うようにやって構わんよ。ただあまり騒ぎを起こさんようにな」

「有難うございます。それだけで十分ですわ」

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