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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
イスル編

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増える居候

「それは御風呂以外は常時付けておくように。また会おう」


 クレモナ隊長の言葉にゲンナリしながら不可侵領域付近を後にする。御風呂が許されるだけでも有難いと思ってしまった僕は飼いならされ過ぎじゃないかと思う。確かにあの高みに一歩でも近付かないとゴールド帯に行けないし、ラティを助けにいけないのだから文句は筋違いだ。


でも辛いんだよなぁこれ……内臓を護る為に常時お腹に力を入れてるし更にその影響で全体的に力が入りっぱなしだし。クレモナ隊長に会わないとオッケーが出ないんだから大分先になりそうでゲンナリする。


「どーもどーも」


 ギルドに報告書を提出し家路に就くと見知った人が玄関の階段前で荷物を背負って立っていた。


「アーキさんどうしたんですか?」

「クレモナ隊長から監視を頼まれて来たんだ!」


 楽しそうに語るアーキさんに女子二人はキャッキャと盛り上がりそのまま家の中へ。僕は置き去りにされた荷物を納屋に収めた後家に入る。どうやらクレモナ隊長からあの装備は我々は寝間着のようなものだけど人間には厳しいしついつい外す可能性もあるから絶対外させるなお風呂以外と厳命を受けたらしい。


僕に対してとても厳しいなぁと思ったけど、それも含めて不可侵領域付近の調査と再生依頼はこれまで誰も継続して受けられず受け手に困っていたようだ。僕は人間族としては見込みがあると思われて継続して依頼を受けられるようになったらしい。


「康久は運が良いよ。ゴールド帯の隊長やカンカンさんにいきなり稽古を付けて貰えて気に入られるなんて今まで人間族でそう言う人いなかったし」


 アーキさんはそう言ってくれたけど過大評価じゃないかと思うよ。変身しなきゃ全くダメで変身込みで今の場所に居るんだから。


「まぁ当然ですね。康久さんは体が丈夫なだけが取り柄なので。他はへっぽこですから」

「ミコト様酷い」


 僕はソファに寝そべりながら三人が楽しそうに笑いながら会話をしているのを眺めるだけだ。それから室内を少し移動させる話になり僕は納屋に寝床を移す。アーキさんに居候だから自分がと言われたけど遠慮しないでと断り納屋を整理して布団を敷いて寝る。


正直このゴム腹巻を付けてまともに寝れる気もしないし何度も呻き声を上げて皆を起こすのも気が引けるっていうのもあってそうしたのもある。


「これは急いでお給金を貯めないといけないですね」

「そうだね……僕もここに来た以上は依頼を受けて家賃を入れないと」


「それでしたら皆で頑張って家を大きなところを借りましょうよ。私は大人数の方が楽しくて嬉しいですから」


 夕食の会話でそんな話が出て頑張っていきましょうと言う話になった。僕としてはそれどころじゃないんで笑顔で頷くだけに留める。食事をしても全く気が抜けない。


「いぎがえ”る”~」


 御風呂に入る時だけはゴム腹巻を脱げるので開放感が凄い。気付いたら湯船に沈んでいて慌てて浮き上がる。これ何時か楽になるんだろうかと呟いた時アーキさんが言うにはそのうち全く気にならなくなるらしい。そうなると良いなぁと願いながら御風呂から上がるのが名残惜しいものの出てからゴム腹巻を付けて納屋で寝る。


完全に寝入るとゴムの圧で目が覚め起きてを繰り返し朝になる。それから暫くはこの状態が続く。ちなみにイスルモモンガ変種親子の元の生息地を探し且つ何が起こったのかを調査しようとしたんだけど、クレモナ隊長からは許可が下りなかった。理由は簡単


「お前が弱すぎるから」


 だそうで最早ぐうの音も出ないけど僕が何とかすれば良いなら楽で良いし責任は僕にあるなら他の誰にもプレッシャーを与えずに済むのでオッケーだ。明けてから華さんの稽古に加えてアーキさんとの組手も早朝に組み込まれ鍛えこまれる。


御昼にはギルドへ顔を出しアーキさんのイスルでの活動が出来るよう申請を出し即許可が下りる。リュウリン女史とも顔見知りなので余計話が早かった。


「アンタより強いんだから当たり前でしょ? 文句があるならこの子と戦って見ればいいわ」


 態々聞こえる様に言うリュウリン女史と首を傾げるアーキさん。武術会で実力を少しだけ見れたけどあの動きを簡単に捉えられるようになるにはまだ遠いと感じるほど凄い。こないだ森で捕まえられたけどあれだって僕と知ってからかっただけだ。本気を出せば首と胴がさよならしてたに違いない。


早速僕らはフォーマンセルで依頼を受ける。人数が増えればそれだけ依頼の内容もハードになっていく。不可侵領域付近や原生林まで行かなくとも、強い獣やモンスターは居る。依頼はそのイスル南を南南東に行った場所に現れたゴブリンの集団を退治する依頼だ。


ゴブリンは元々森などに潜んで集団で行動し荷馬車を襲う。男性より女性を執拗に狙い繁殖している為、ゴブリンと言っても色々な種類が今は居るらしい。


「見っけた。この先の草むらに五匹居る」


 アーキさんの声に頷く。恐らくそれ以上に彼らは潜んでいるだろう。情報では二十匹となっていた。馬車の音を察知したのか場の空気が変わる。更にこちらが風上に居たので女性の匂いに気付いたのかガサガサし始めた。


僕は槍を片手に馬車を降りて先導する。彼らのターゲットになったので襲ってくるのは間違いない。なら一匹でも早く潰してクリアを目指さないと彼らの連係プレーと人さらいの手際の良さはギルドからも情報を得ていた。


「一つ」


 一人抜け駆けしたゴブリンの胴を貫き放り捨てる。彼らは素早く鶴翼の陣を敷くように動くも僕はそれより早く動いて塊に突撃し穂先で切り伏せていく。一気に五体処理した時


「キャア!」


 ミコトの悲鳴が耳に届きすぐさま振り返るとゴブリンが一匹ミコトに飛びつこうとしたので槍を全力で放り投げて仕留める。放り投げて直ぐに向き直り散らばるゴブリンを一つずつ拳で上空へ吹っ飛ばしていき、華さんやアーキさんと力を合わせて何とか二十匹倒し切った。


遺骸は直ぐに土を深く掘って穴に埋める。こうすれば彼らの行方は分からない。ギルドには討伐の証拠として彼らの得物のみを渡す。体の部位を持ってこいなんて言われたらゲンナリしたけど得物で良かったと内心ホッとしていた。


「いやぁそれにしても凄かったね康久は」

「本当ですね。あの距離から馬車へ槍を投擲して命中させるなんて」


「そうかなぁあんまり距離なかったし凄くないっすよ」


 そう言うと二人は顔を見合わせた後笑った。何が面白いのか分からなかったけどミコトに何事も無かったからそれで良しとしておく。


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