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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
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お兄様と妹

「お兄様? 誰が?」

「貴方ですわよお兄様」


 少女は覗き込む僕に構わず頭突きをする勢いで起き上がり、案の定頭突きを食らわした。めちゃくちゃ痛くて声も出せず蹲り転げる。


「あら失礼」


 全く感情の篭もってない謝罪を受け入れられる訳も無く、痛みが若干治まった後睨みながら起き上がる。するとどこから取り出したのか倒れていた時とは全く違う、ピンクのシャツとスカートの上に革の片当てや胸当てを着てベッドの上に立っていた。


「こんなもんで良いかしらね。人間というのは見た目が大切でしょうから」


 バレリーナのようにくるくると回って確認しつつ意見を求められる。その前にそれをどこから出してきたのか問いたいんだけども。


「さ、お兄様お金稼ぎましょう? 世の中お金が物を言いますわ。特にこんな時代でこんな星ですから、何事もそれが最初に必要」


 どこから突っ込んでいいのか分からない。怪我してたのにピンピンだし元気だし、ピンク一色だった髪の毛には所々緑が混じってるし目も左目がカラフルだし。


「……お兄様、元から間抜けた顔がより一層引き立ってますわよ?」

「余計なお世話だし、それに誰がお兄様だ!」


「お兄様はお兄様ですわ。別の星では便宜を図ってあげましたわよ?」

「そんなのは記憶に無い」


「有ろうと無かろうと、恩を売ったのは事実ですし、お兄様は私に傷を負わせたんです。その分は働いて頂かないと」

「知らんもんは知らんし。怪我を負わせたのはあの黒竜だろ?」


「あのですねお兄様。私の目と喉と肩。この負傷場所に覚えは?」


 えぇ……。覚えも何も、あるとしたら一つしかないわけで。


「あの時の竜?」

「そうですわよ。黒鎧を捕まえに来たのにお兄様に逃がされるわ攻撃されて再起不能にされ村人達に殺されかけるわ散々でしたわ」


 やれやれと言った感じのポージングをしつつ溜め息を吐いて首を振る少女。


「あの鎧を捕まえに来たの? なんで?」

「奴はお構いなしなんですのよ。人も竜も動物も。金になれば何でも良い。悪そのものを体現している存在と言っても過言ではありませんわ。で、私達竜族の巣に入り込んで荒らして回ってたので制裁を加えるべく探していたんです」


 なるほどね金の亡者って訳か。装備とか豪華だけど粗暴で間抜けっぽかったし、野盗が金持ちになった感じがしたわ。


「なんでお兄様、あの黒鎧を捕まえる為に今はお金を稼ぎながらこの星に慣れてくださいな。でないとまた取り逃がしますし」


 心を閉ざしたこの星と対話するには、そういう悪っぽいのを叩いていけば何とかなるかもしれないな。


「……良いけど僕は君に借りがあるどころか貸しがあるくらいなんだ。言うことを大人しく聞いていくとは思わないでくれよな。それとお兄様じゃない」

「ええええ宜しいですわよ? 言う事を聞かせるのも腕の見せ所ですし、お兄様はお兄様ですもの。こちらも譲れぬところは譲れませんのでご了承くださいな。それはそれとして早速稼ぎに参りましょう? お兄様のその格好では浮き過ぎてて敬遠されてしまいますもの」


 自信満々に言う少女。お前に言われたくは無いって言いたかったけど、どう考えても口が達者そうなので黙っておく。沈黙は金、雄弁は銀とじいさんもいってた。


「さ、行きましょう。あ、そうそう改めて自己紹介を。私はラティと申します。でも面倒ですから愛妹と呼んでいただいても」

「ラティさん行きましょう」


 一々突っ込んでたらキリも無いし勝てる気もしないので切り上げて外に出る。お兄様ーとか言いつつ付いて来るけど無視してそそくさと一階へ降りる。腕を絡ませて来たので振り払おうと抵抗するも、元々竜というのは本当らしく全く動じないので色々無駄だと悟ってそのままにした。


「おぅおぅ良いご身分だなぁ!? えぇ!?」


 案の定絡まれる。一階はカウンターとテーブルが複数あり、前の町よりも人が混雑していた。そこで体も大きくあちこちに傷がある、THE歴戦の勇士! みたいな人が僕らをいち早く見つけて嘗め回すように見てきた。不快だ。


「あらまぁ下品ですわね」

「下品だとよ!」


 下卑た感じのおっさんと色々面倒なのが続いてイライラしてしまい、つい背中に背負っていたボウガンを空いている右手で下ろしてつき付ける。


「あ、失礼。ついつい」

「何がついついだ! 喧嘩売ってんのかコラ!?」


 何処の世界でも居るんだなぁこういう人。喧嘩売ってきたのに買われると凄むって何のギャグなのかね。


「よいしょ」

「あっ」


 可愛らしい掛け声と共にラティは僕のボウガンの弦を引いて離した。当然弾は飛ぶし相手も飛ぶ。


「て、てめぇら……!」

「あら残念生きてたのね」 

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